『ホビット 決戦のゆくえ』が、12月13日(土)に全国公開となる。アカデミー賞受賞のピーター・ジャクソン監督が贈る『ホビット』シリーズの完結編だ。
『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズへと繋がる主人公・ビルボ達の冒険は、いよいよクライマックスを迎える。
『ホビット』は、小さくて臆病なホビット族のビルボ・バギンズを主人公に、竜に奪われた王国を取り戻す壮大な冒険が描かれる。このたび、ビルボ役の吹き替えを務める森川智之さんに、ビルボへの想い、そして第3章『決戦のゆくえ』の見どころをうかがった。
[取材・構成:沖本茂義]

『ホビット 決戦のゆくえ』
http://www.hobbitmovie.jp

―アニメ!アニメ!(以下、AA)
はじめに、『ホビット』のビルボ役を引き受けられたときの感想は?

―森川智之さん(以下、森川)
『ホビット』と聞いて、「大作だな」というのが率直な感想でした。『ロード・オブ・ザ・リング』の前日譚であり、世界中にファンがたくさんいる作品ですので。
ビルボ役のオファーがあったときは、正直意外でした。
普段はどちらかというと“カッコいい路線”の役を演じることが多くて。「え? ビルボなの!?」と(笑)。

―AA
たしかに森川さんは二枚目な役どころのイメージがあるので、今回のビルボは新鮮に感じました。

―森川 
ビルボ役の俳優はマーティン・フリーマンですが、実は以前にも『SHERLOCK』(イギリスBBC製作のTVドラマ)のワトソン役で声を当てていたんです。でも、今回は上手くボイスマッチするか懸念がありました。ビルボはファンタジー世界のキャラクターで、なおかつ臆病な性格で、これまでの役とは少し毛色が違うので。
オーディションで選ばれたときは、純粋にうれしかったです。

―AA
そのビルボを演じるにあたって、心がけたことは?

―森川
『ロード・オブ・ザ・リング』の冒頭でビルボが出てきますが、「あのビルボにどうやって近づけていこうか」と。それが出発点でした。
具体的には、「ホビット族」としてみんなが思い描いているイメージを大切にする。それと“青年らしさ”ですね。少年から青年になりかけの未成熟な部分を、冒険のなかで成長させていこうと思いました。


―AA
1章、2章と、仲間との冒険を経てビルボは着実に成長してきました。今回『決戦のゆくえ』で再びビルボを演じられて、キャラクターに対する理解に変化はありましたか?

―森川 
「強い子に育ったな」と感じました。何よりも“臆病さ”がなくなっていますよね。困難に直面しても、恐怖心を払いのけて仲間のために奮闘する。完結編のテーマである「絆」や「友情」といったものをビルボが体現してくれています。そこは皆さんに観てもらいたいです。


―AA
先日のイベントでは、トーリンとの関係性も見どころだとおっしゃっていました。

―森川 
はじめの頃ビルボは、仲間から「臆病者」呼ばわりされて、下っ端的な扱いを受けてきました。でも、物語が進むにつれて仲間との信頼関係を着実に築いている。今回の完結編では、仲間との絆がより深く描かれています。本当の意味で「仲間」になったんだなと感じました。もう、泣けるほど感動なシーンもあったりします。
まぁ、これはネタバレなので言えないですけどね(笑)。

―AA
ぜひ本編を観てくださいと(笑)。

―AA
ところでアフレコ現場はどんな雰囲気でしたか?

―森川
実は完全に別録りだったんですよ。それぞれ1chで収録したものをミックスして、最終的に5.1cサラウンドとして仕上げて立体感を出すためです。
単独の収録というと、芝居の掛け合いが上手くいかない懸念もありますが、今回の『ホビット』のキャスティングに関しては、何の心配もありませんでした。なにせ羽佐間(道夫)さんを筆頭に大ベテランばかりなので(笑)。


―AA
たしかに。豪華吹き替えキャストも注目ポイントですよね。

―森川
13人の仲間と同様に、声優仲間でも信頼が築けているので、芝居も上手く噛むというか。そこはすごいなと思いしたね。

―AA
森川さんは洋画の吹き替えを数多く経験されてきましたが、アニメとの違いはどのように感じられますか?

―森川
吹き替えの場合、すでに主演の役者さんが役作りをしていますので、吹き替える僕らが勝手な解釈で演技してはいけないんです。そこは大切なポイントですよね。たとえば「このときマーティンはどう感じていたのか」「距離感はどれぐらいか」など、色々とおさえないといけない。
それに対して、アニメの場合は、よりクリエイティブな感覚があって、スタッフ、キャストみんなでゼロからつくり上げていくイメージです。

―AA
魅力的なキャラクターがたくさん登場する作品ですが、お気に入りのキャラなどは?

―森川
やっぱりドワーフのメンバーですね。第1章の食事のシーンは「これぞおとぎの世界だ」と呼べる名場面で、たまらなくワクワクしました。2章の樽下りのシーンでは、ボンブールが素晴らしいですよね。乱戦の中でひとりだけ弾き飛ばされ、そのままゴロゴロ転がって敵をなぎ払った挙句、立ち上がってボーンと手と足を出して戦う。あのシーンは最高です(笑)。
それに恋愛的なエピソードもあって、「こんなイケメンがたくさんいたんだ」とビックリでした(笑)。それぞれのキャラクターが活き活きとしているのは、『ホビット』の魅力ひとつですよね。

―AA
大迫力の映像も『ホビット』の魅力です。今回も大群衆の戦闘シーンもあって、かなり期待できそうです。

―森川
アフレコではモノクロの映像だったのですが、財宝をめぐるはなれ山での戦闘シーンはもの凄いですよ。大きいスクリーンで3Dで観たらすごいだろうなー、とワクワクしながら演じていました。

―AA
完結編をご覧になられて、どんなところに惹かれました?

―森川
ビルボと仲間たちが固い絆で結ばれていくのですが、途中、ビルボがトーリンに対して逆らう場面があるんです。今まではトーリンにつき従うのみだったんですが、仲間のためを想って、自らの意思で動き出す。目立ったアクションがあるわけではないですが、ビルボの良いセリフが聞けて。

―AA
臆病者と呼ばれたビルボがここまで成長してきたんだなと。

―森川
ええ、そこはぜひ見てほしいですね。

―AA
改めて振り返って、『ホビット』シリーズのどういったところに魅力を感じますか?

―森川
ひとりの人間が成長して、やがて大人になっていく。その過程をしっかり描いて、見せてくれるのはいいですね。主人公のビルボにとても共感できます。
それに、ビルボたちを観ていると、これまで忘れかけていた“大切な何か”が思い出される。ビルボのような壮大な冒険を経験するのは難しいですが、それでも人間、生きていたら大なり小なり“冒険”はあるはずなので。

―AA
最後に読者の方にメッセージをお願いします。

―森川
『決戦のゆくえ』がいよいよ公開されます。13年間に渡って描かれてきた『ロード・オブ・ザ・リング』に繋がるストーリーの完結編です。シリーズで謎だった部分にひとつひとつピースが埋まっていきますので、ぜひ劇場に足を運んで観てほしいです。

―AA
お楽しみにということで。本日はありがとうございました。

『ホビット 決戦のゆくえ』
12月13日(土)新宿ピカデリー、丸の内ピカデリー他全国ロードショー
http://www.hobbitmovie.jp

『ホビット 決戦のゆくえ』
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