2021年3月に発表された「マンガ大賞」。ノミネートは2008年より始まり、今年で14回目を迎えました。
本稿では、そんな多くの話題作がノミネートされてきた「マンガ大賞」の大賞受賞作のなかで、“アニメ化された作品”をピックアップしてご紹介します。

■2009年受賞「ちはやふる」

2008年から「BE・LOVE」(講談社)にて連載中の、末次由紀先生よる“百人一首競技かるた”を題材とした作品。一見、かるたと聞くと地味に感じますが、物語は文化系らしからぬスポ根のような熱い戦いが繰り広げられます。競技以外にも、キャラクターの成長や友情、恋愛が丁寧に描かれており、読者の胸を高鳴らせます。
元々、掲載誌のターゲットは20~30代女性が中心でしたが、読者層は小中高生、さらに男性読者も含むほど拡大。また、競技かるた大会の観客数や、かるた教室に通い始める人が増えるなど、かるたブームにも貢献しました。

アニメは2011年に始まり、2021年現在まで第3期まで放送されました。監督は浅香守生さん、制作はマッドハウス。声優を担当したのは、瀬戸麻沙美さん、宮野真守さん、細谷佳正さんら。
2016年には、広瀬すずさん、野村周平さん、新田真剣佑さんらが出演した実写映画も公開されました。

■2011年受賞「3月のライオン」

2007年より「ヤングアニマル」(白泉社)より連載を開始した“将棋”マンガ。作者は多数メディア化も果たした『ハチミツとクローバー』の羽海野チカ先生です。

棋士・先崎学さんが監修を行っている本格的な将棋マンガですが、知識がまったくなくても惹き込まれていくドラマ性があります。17歳の若手プロ棋士である主人公・桐山零をはじめ、零に優しく寄り添う3姉妹、個性豊かな棋士たちの心理描写が緻密に表現されています。

アニメは2016年から2018年にわたり、第2クールまで放送されました。零役を演じたのは、河西健吾さん。そのほか、茅野愛衣さん、花澤香菜さん、久野美咲さん、岡本信彦さんらが出演しています。
監督は新房昭之さん、制作はシャフト。主題歌はBUMP OF CHICKEN、YUKI、UNISON SQUARE GARDEN、米津玄師など人気アーティストが担当しているのも注目です。

また、2017年には主演・神木隆之介さんによる実写映画も公開。零が対戦する棋士には、染谷将太さん、高橋一生さん、中村倫也さん、佐々木蔵之介さんら豪華キャストが揃い話題になりました。

■2012年受賞「銀の匙 Silver Spoon」

本作は『鋼の錬金術師』『アルスラーン戦記』などで知られる荒川弘先生による農業高校を舞台としたマンガ。2011年~2019年に「週刊少年サンデー」(小学館)にて連載、アニメ化とともに実写映画化もされました。

父親への反発から、目的も将来の夢も持たず農業高校へと進学した八軒勇吾。
そこで彼が出会うのは、将来のビジョンを掲げ入学した個性的な仲間たち。八軒は慣れない農業にとまどい、悩みながらも彼らとともに「育てること」「食べること」「生きること」を体験していきます。
ギャグ要素を交えた学園青春ものでありながら、農産業の“現実”を知り、“命をいただく”ことをあらためて考えさせられる作品です。

アニメは2013年~2014年に第2期まで放送。監督は伊藤智彦さん(第1期)、出合小都美さん(第2期)、制作はA-1 Picturesが担当しました。
主人公・八軒は、アニメ版では木村良平さん、2014年公開の映画版ではSexy Zoneの中島健人さんが演じました。

■2016年受賞「ゴールデンカムイ」

本作は野田サトル先生による、明治末期の北海道を舞台にした冒険活劇。
2014年から「週刊ヤングジャンプ」(集英社)にて連載を開始し既刊25巻、累計発行部数は1500万部を突破しました(2021年3月時点)。

物語は、元陸軍兵で“不死身の男”と呼ばれる杉元佐一、アイヌの少女・アシリパらが、金塊を巡りさまざまな勢力と戦っていく様子が描かれます。
金塊の在り処の鍵となるのは、網走監獄から脱獄した囚人たち。さぞ極悪非道な人物……と思いきや、その残虐性に相対するヤバい性癖を持った輩ばかり。快楽殺人者、カニバリズム、獣姦……彼らのストーリーは、読者に鮮烈な印象を焼き付け、二度と忘れることはできません。

変態たちとの生死をかけた緊迫のバトルアクションも盛り上がりますが、綿密に取材されたアイヌ文化も見どころのひとつ。北海道の雄大な自然のなかでの狩猟、解体、調理シーンも含む食事は、おいしそうでありながら“自然界の摂理”を実感します。

2018年よりアニメ放送が開始、2020年には第3シリーズが制作されました。声優は小林親弘さん、白石晴香さん、伊藤健太郎さん、津田健次郎さん、細谷佳正さんらが出演。監督は難波日登志さん、制作をジェノススタジオが務めています。

■2018年受賞「BEASTARS」

2016年~2020年に「週刊少年チャンピオン」(秋田書店)にて連載された、板垣巴留先生による“動物”擬人化作品です。

物語の舞台は、肉食獣と草食獣が共存する世界。しかし、主人公のハイイロオオカミの少年・レゴシの通う学園内では「食殺事件」が起こります。さらに、彼は肉食獣であるにも関わらず、草食獣のウサギの女の子に恋をしてしまいます。

絵はデフォルメが薄味でリアルに近い容姿の動物たちが喋るため、独特な雰囲気を感じます。ですが、描かれていく彼らの悩みや葛藤、もがく姿など、私たちと変わらない群像劇に共鳴していってしまいます。
さらに「食うか、食われるか」という動物界最大の“掟”を根底に進むストーリーは、生々しい“生”を帯びています。


2019年に監督・松見真一さん、制作・オレンジによりアニメ化。キャストは小林親弘さん、小野友樹さん、千本木彩花さんら。2021年1月~3月には第2期も放送されました。

■2019年受賞「彼方のアストラ」

本作は2016~2017年にWEBサイト「少年ジャンプ+」に掲載された、篠原健太先生によるSFストーリー。

近未来、惑星へキャンプに出かけた高校生が、事故により宇宙空間で遭難。宇宙船のエネルギーや食料はいつまで持つのか、事故を故意的に起こした犯人は誰なのか……。学園コメディ『SKET DANCE』で知られる篠原先生が描く、サバイバルやミステリーも含んだ本格SFということで、驚いた読者も多かったようです。

コミックス全5巻と短い物語ですが、伏線が多数散りばめられており、結末に向けて繋がっていく真実に、読後は爽快感にあふれます。もちろんギャグもしっかり詰まっています。

アニメは監督を安藤正臣さん、制作はLercheが手掛け、2019年に放送されました。
声優は細谷佳正さん、水瀬いのりさん、島崎信長さん、黒沢ともよさん、早見沙織さん、内山昂輝さんらが名を連ねています。

◇◇◇

このほかにも、2020年大賞の『ブルーピリオド』(著:山口つばさ)も2021年にアニメ化が決定。
総監督を舛成孝二さん、監督を浅野勝也さん、シリーズ構成・脚本を吉田玲子さん、キャラクターデザインを下谷智之さん、そしてアニメーション制作をSeven Arcsが担当します。

今期放送の春アニメでもノミネート作品が多数あります。
2011年 9位『ましろのおと』(著:羅川真里茂)
2015年 8位『僕のヒーローアカデミア(第5期)』(著:堀越耕平)
2018年 5位『不滅のあなたへ』(著:大今良時)
そして、2021年大賞は『葬送のフリーレン』(原作:山田鐘人、作画:アベツカサ)に決定。発表後の反響は大きく、SNSでは読者の喜びの声もあふれました。コミックスは第4巻が発売となったばかりで(2021年3月現在)、今後の物語の展開にも期待が高まります。

以上、「マンガ大賞」受賞の作品をご紹介しました。
ぜひ、気になる作品がありましたら、チェックしてみてください。
編集部おすすめ