
がんのメカニズムがわかったら、次は予防が可能かどうか、である。米ハーバード大学の論文によれば、がんの原因はタバコが30%、食事や肥満が30%、5%が運動不足とされ、この3つに気をつければ3分の2は防げるはずだという。
確かに、タバコや肥満、運動不足ががんのリスクを高めることは理解できる。日々の食事については、昨今、野菜の農薬に含まれる発がん性物質が問題視されているが‥‥。
「まったく気にする必要はありません。農薬でがんになったという論文はありませんし、根拠は怪しい。第一、日本で出回っている無農薬の野菜や果物は1%もない。それを毎日口にすること自体、現実的でありません。そんなことを心配するより、ふだん吸い込んでいる排気ガスのほうがよっぽど危険な物質を多量に含んでいる。そうした現実の中で、ごく一部だけ神聖な領域を作ったところで無意味です」
さらに、食品添加物も恐れる必要はないという。
「食品添加物が問題視され始めた昭和30年代後半。当時はまだ遺伝子研究の分野も未熟だった時代で、細胞の遺伝子が変異したらすぐに『発がん物質だから、食べたらがんになる』と言われました。しかし肝臓には強力な解毒作用があり、人体に影響するまでにはいくつものハードルがあることがわかりました。人間の体はそんなに弱くはないということです」
誤った情報といえば、「魚の焦げを食べるとがんになる」説もあるが、
「動物性たんぱく質が焦げると発がん物質を発生しますが、ごく微量なもの。極端な話、1トンくらい食べないとがんにはなりません。20年前は確かにそう言われたこともありましたが、今は国立がんセンターの情報からも削られています」