
韓国ソウルの飲食店の激戦区といえば、梨泰院(イテウォン)だ。同地での成功を目指す若者たちの群青劇を描いた韓国ドラマ「梨泰院クラス」は、「Netflix」で配信されて日本でも大ヒットした。
その「梨泰院クラス」に出演していた韓国の俳優ホン・ソクチョンは、俳優業の傍ら実際に梨泰院でレストラン経営も行なっていた。最盛期には7店舗も運営していたが、コロナ不況の煽りを受け全て閉店を余儀なくされた。今年5月、梨泰院ではクラブなどでクラスターが発生し、梨泰院には“危険な繁華街”というイメージがついてしまったという。
ホン・ソクチョンの廃業に象徴されるように、いま韓国では飲食店をはじめとした自営業者の廃業が相次いでいる。韓国統計庁などによれば、6月末時点の自営業者の数は547万3000人で、今年上半期だけで13万8000人も減少。これほどの減少は09年の世界金融危機以来11年ぶりだという。
こうした自営業者の廃業の連鎖は、韓国経済の崩壊がいよいよ始まったことを意味していると、経済ジャーナリストは分析する。
「韓国経済を語るときに財閥企業ばかりが注目されがちですが、実は全勤労者のうち約25%を自営業者が占めており、この比率は世界でダントツ1位(日本は10.6%)。韓国に自営業者が多い理由としては、失業手当や老齢年金の受給額が低かったりと、社会のセーフティネットが脆弱であり、また長引く青年失業(青年の4人に1人が無職という状況)によって、老若男女問わず起業を余儀なくされるケースが多いためです。そんな中、近年は韓国の文在寅政権が最低賃金を強引に引き上げるなど無理な経済政策を推し進めたため、人件費のコストが膨らんで自営業者の廃業が相次いでおり、そこにきて今回のコロナ不況。韓国では前代未聞の“大失業時代”が始まっているのです」