アップルからAIアシスタントのSiriを内蔵するスマートスピーカー「HomePod」が、8月23日にいよいよ国内で発売された。HomePodは2018年2月に北米、英国、オーストラリアで先行発売されたアップル初のスマートスピーカー。
今回、Siriの日本語対応など万全を期して登場した新製品をレビューする。

●円筒形のやさしいデザインに妥協のないサウンド設計
 アップル純正のオーディオ製品と言えば完全ワイヤレスイヤホン「AirPods」が人気だが、据え置き型のスピーカー製品は本当に久しぶりだ。アップル製品のファンの中には本機が日本にやってくることを待ちわびていたという方も少なくないと思う。
 本体は高さ約17.2cmの円筒形。エッジに柔らかい丸みを持たせて、表面の素材にはファブリックを使っている。一目見ただけではエレクトロニクス機器であることがわからないようなやさしいデザインに仕上げている。

 本体に凹凸や穴はなく、天面がタッチセンサー方式のコントローラーになっている。電源ケーブルは本体固定式。ケーブルが設けられている方が一応背面ということになるが、筐体の内部には360度につながりの良い音を広げられるよう、ベルト状に7基の中高域用トゥイーターユニットを配置して、さらに上部には上に向けて低域用のウーファーを搭載している。
 音声コマンドをピックアップするためのマイクユニットは6基のアレイシステムを筐体内部に、360度方向に均等間隔で配置して正確な音声認識を実現する。カラーバリエーションにはホワイトとスペースグレイの2色がある。
●HomePodの設定方法と使い心地
 HomePodができることは、iPhoneiPadでおなじみのAIアシスタント「Siri」とアップルの定額制音楽配信サービス「Apple Music」を連携させた、ボイスコントロールによる音楽リスニングがメインになる。
このほかにもSiriに最新の天気やニュースなどWeb情報を聞いたり、ユーザーのApple IDに紐づいたカレンダー、リマインダーの情報確認、メッセージの送受信、ハンズフリー通話などがある。
 アップルのスマートホームのプラットフォームである「HomeKit」に対応するスマート家電、IoT機器をHomePodから音声で操作することも可能だ。なお1台のHomePodにペアリングできるiOSデバイスは1台までとなっている。
 スピーカーの初期設定にはiOS 12.4以降を搭載するiOSデバイス(iPhone/iPad/iPod touch)のほか、設置する環境にWi-Fiネットワークが必要だ。iOSデバイスをアンロックした状態でHomePodに近づけると画面にHomePodのアニメーションが表示される。iPhoneなどでAirPodsを使ったことがある方にはお馴染みのペアリング方法と一緒だ。

 あとはガイダンスに従うだけで難なく設定が完了する。iPhoneユーザーにとっては、おそらく最も簡単に設定ができて、操作性も含めて親しみやすいスマートスピーカーであると言えそうだ。
 セットアップ後にSiriに話しかけてみる。AIアシスタントのウェイクワードはiPhoneでもおなじみの「Hey Siri」だ。Siriが反応するとスピーカー天面のLEDライトが点灯する。少し離れた場所から話しかけてしまい、天面のLEDが見えない時にも「はい」と音声で応答を返してくれるので、コマンド入力の待機状態であることがわかる。

 夜中に家族が寝静まった後など声を出しづらい時間帯には、天面のタッチセンサーを長押ししてSiriを起動することもできる。タッチセンサーでは音楽再生の簡易なコントロールやボリュームのアップダウンも可能だ。
 静かな室内であれば見通し距離が10mほど離れた場所から、Hey Siriと小さな声で呼びかけても反応してくれた。音声コマンドの認識は正確でレスポンスも機敏だ。1週間ほど使ってみた限りでは、勝手にSiriが起動するような誤作動もない。
 Siriに話しかけた音声コマンドの内容は暗号化処理がかけられてからアップルのサーバーに送られるため、ユーザーがどんなことにHomePodを使っているかなどプライバシーは守られるように設計されているというから安心だ。

 Siriは日本語の合成音声に若干のたどたどしさがあったり、Apple Musicで検索した日本人ミュージシャンの漢字の読み仮名をたまに間違えることもあったが、実用に問題はないと感じた。
 HomePodはリビングルームなど家族が集まるスペースに置いて使われることが想定されているデバイスなので、ペアリング登録されているiOSデバイスのユーザー意外に、誰でもHey Siriと話しかけて使うことができる。個人を識別する機能は非搭載。カレンダーやメッセージについては話しかけたユーザーの声紋を認識して「私の情報」だけを引き出せる機能が欲しい。
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 また、Hey Siriと発話して起動する必要がある。一定の会話のインターバルを置いて連続会話ができる機能もあるとさらに便利になりそうだ。
将来機能アップデートにより音声操作に関連する使い勝手がますます向上することを期待したい。●音質はトップクラス! 場所に応じてベストサウンドを生成
 スピーカーとしての音質は「スマートスピーカー」と呼ばれるジャンルの製品の中でもトップクラスの出来映えであると感じた。HomePodは室内の置いた場所に合わせて音の鳴り方を自動的に最適化してくれる「空間認識」や、再生中の楽曲に合わせて低音のバランスを自動調節する「スタジオレベルダイナミックプロセッシング」という、それぞれの機能によってスピーカーが賢くベストなリスニングコンディションを保ってくれる。
 従来のオーディオ機器のように、ユーザーが操作メニューを開いて自分で音場設定を行う手間を意識する必要がなく、アップル独自の「A8」チップや高性能マイクアレイ、低音EQマイク、加速度センサーなど最先端のプロセッサーとセンシングデバイスを内蔵する「自分で考えられるスピーカー」のサウンドは、本機を置いた部屋のどの場所に立っても均一に心地よいリスニング感が得られることが最大の特徴だ。
 中高域はクリアでヌケが良く、女性ボーカルやクラシックピアノは音の輪郭が鮮明で余韻の抜け味がとても爽やかだ。メロディに力強さもある。中低域との分離が鮮明で、音場感がとても立体的なところもライバルであるグーグルやアマゾンの純正スマートスピーカーの音とひと味ちがう。
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 そして最大の強みが弾力感あふれるしなやかな低音再生だ。コンパクトな筐体から想像も付かないほど、厚みと強いインパクトのある低音が出せる。その分、スピーカーの置き場所は硬くしっかりとした素材のオーディオラックや家具の上などを確保した方が音楽再生的にも本領が発揮されると思う。
 余裕があればオーディオ用として販売されているスピーカースタンドや調音ボードなどのアクセサリーを導入するとさらに引き締まった「いい音」が楽しめると思う。
 なお、2台のHomePodを揃えると、左右チャンネルの分離さらに鮮明で立体的な音場感が楽しめるステレオ再生ができるようになる。別々の部屋に置いた2台のスピーカーに同じ音源を飛ばしてマルチルームリスニングに使ったり、それぞれに異なる音源を再生することも可能だ。初期設定を済ませた後は、これらのスピーカーの各種機能の操作はiOS標準の「ホーム」アプリで行えるようになる。
●Apple機器との連携に最適化 一部、注意点も
 アップルの「HomeKit」に対応するスマート家電の操作性については、筆者宅にフィリップスのスマート照明「Hue」があったので簡単に試してみた。スマート家電機器との接続設定なども「ホーム」アプリで行う。HomeKitに対応するスマートデバイスはまだ少なめと言われているが、例えばLGエレクトロニクスとソニーが2019年モデルとして発売するスマートテレビについてはソフトウェアのアップデートによりHomeKitに対応する。音声操作で電源やチャンネルの切り替え操作などができるようになりそうだ。各家電メーカーの対応も徐々に進んでいくことが期待できると思う。
 MacBookとiTunesの組み合わせはAirPlay経由でHomePodに接続できる。iTunesでApple Music以外にもCDから取り込んだり、iTunesストアで購入した楽曲を一元管理しているという方も多いと思うが、HomePodを使っていい音で楽しめるので安心して欲しい。
 Apple Music以外の音楽系アプリサービスについては、AirPlayに対応していればSpotifyAmazon Music、TuneInラジオにYouTubeの音声などがiOSデバイスからワイヤレスでHomePodに飛ばして聴ける。Siriによる音声操作は今のところ非対応だが、今後パートナーシップが拡大していくことをぜひ期待したい。
 AndroidスマホやBluetoothオーディオ機能を搭載するオーディオプレーヤー機器は基本的にHomePodとのBluetooth接続ができないので注意したい。プレーヤー機器をケーブルで有線接続するための外部音声入力端子もHomePodには設けられていない。
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 HomePodはそのデザインや音へのこだわりが既存のスマートスピーカーの中でも図抜けていると感じた。特にその良質なサウンドはiPhoneをはじめとするiOSデバイスのユーザーに注目してもらいたい。これからオーディオメーカーのワイヤレススピーカーを購入することを考えていたという方にも、ぜひ選択肢の一つとして本機を比較検討してみてほしい。(フリーライター・山本敦)
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