中国や韓国などのアジア圏を中心に爆発的に広まったライブコマース。「普通の主婦が数億円の売り上げをあげる」といった驚きのエピソードがいくつも報告されており、新たなECのスタイルとして日本でも注目を集めている。
12月6日には、今回で4回目を数える「LIVE COMMERCE SHOW 2019」が開催され、市場の現在地、そして5Gが本格化する2020年に向けた将来像が示された。

 「お金になる」というエピソードが先行しているが、ライブコマースの本質的な魅力は、配信者と視聴者のコミュニケーションによって生まれる“共感”にこそある。売買はあくまで、相互の信用の上で成り立つ副次的なものにすぎない。こうした思いから今回のカンファレンスでは、商品の売買を念頭に置くライブコマースだけでなく、幅広いライブ配信に焦点が当てられた。
 カンファレンスを主催するのは、市場の発展のために2018年に設立されたライブコマース推進委員会。発起人の一人である長尾純平会長も「ライブコマースはあくまでコミュニケーションのツール」と、イベント冒頭で改めて本質的な価値に言及。
こうした主張は委員会発足当初から一貫したものだ。
 カンファレンスは多数の講演によって構成されていたが、登壇者の所属は多岐にわたる。韓国最大規模のオムニチャネルメディアを展開するGLANCETV、マーケティング手段として注目する電通ダイレクトマーケティング、配信事業者であるJストリーム、プラットフォーマーであるBASEなど、それぞれの立場からライブ配信がもたらす未来を論じた。
 とりわけキーワードとして頻出したのが“5G”だ。D2C dotの山下紘史取締役はインテルが発表している「5Gによる世界のメディア収益の増加」に関するデータを紹介。5Gによる収益は20年にはわずかにすぎないが、24年に約半分に達し、28年までに合計で7650億ドルの収益向上が予測されるという。

 「特に成長が期待されるのが、投入型メディアと拡張型モバイル広告。これまで1対nにすぎなかったコミュニケーションがn対nのインタラクティブかつ双方向の体験になっていく。5Gにどんなチャンスがあるかではなく、5Gによるビジネスがチャンスを生むはずだ」(山下取締役)
 社会の隅々まで5Gが浸透するには2~3年程度はかかると見積もられているが、その間に新たなビジネスは続々と生まれていく。すでに今年5月に5Gが本格化した韓国では、徐々に市場が構築され始めているそうだ。
 「LIVE COMMERCE SHOW 2019」の登壇者が語った内容には、成功体験だけでなく多くの失敗談も含まれていた。共通しているのは「継続して挑戦する」ということだ。
誕生間もない“ライブ配信”と未知の領域である“5G”。その掛け合わせにまだ正解はないが、その伸びしろに可能性を見出す企業と個人はこれからも増えていくはずだ。(BCN・大蔵大輔)
【関連記事】
三越伊勢丹、お歳暮初のライブコマースを実施し過去最高のEC売上を達成
店頭実演をネットで生中継、ビックカメラが新スタイルのライブコマース 現場で見た効果
Amazonも参戦! 日本でも広がるライブコマース市場の現在地
参入企業増で盛り上がる市場、「Live Commerce Show 2018」が早くも2回目の開催
ライブコマースは日本で普及するか “モノを売る”のはあくまで手段?