インターネット上にウェブサイトを開設していない病院や個人経営の店舗は、まだ多く散見される。サイト自体は開設済みでも、ほとんど内容がなかったり、2000年代前半からずっと放置しているとしか思えない古いレイアウトのままだったりする。
費用を投じて外注すれば見栄えのいいサイトに刷新できるはずなので、広告効果がないと判断しているのだろう。
 多くの人がスマートフォンスマホ)を所有し、いつでも検索や最新ニュースのチェックなどができるインターネットの時代。ネット上に情報がない場合は、例えば現地に建物が建っていても、ネット派にとっては存在しないも同じだ。観光地の土産専門店や飲食店ならまだしも、病院や学校は、オンラインサービスを利用して利用可能なキャッシュレス決済手段などの基本的な情報の公開を義務化するべきだと考える。スマホを使いこなしている人なら、道路沿いや駅構内の看板を見て知っても、いったん病院名で検索し、設備や診療方針を納得してから出向く、という流れになっているはずだ。
 国は生産性向上のため、令和元年(2019年)5月公布、12月施行のデジタル手続法に基づき、「デジタルファースト」「ワンスオンリー」「コネクテッド・ワンストップ」を基本原則とした、行政手続のオンライン化を掲げている。
官公庁で書面への押印を見直す動きも進み、民間企業にも慣習の是正を求めた。
 
 また、今春から続く世界的なパンデミック、新型コロナウイルス感染症に関連し、一部の企業はアプリやウェブサイトから店舗ごとの現在の待ち時間や混雑状況、今後の混雑情報予測などを提供している。しかし、SNSの口コミによると、混雑情報アプリを参考に、たまたま年金支給日に店舗に行ったところ、高齢者が多く買い物に来ていて店内は混雑しており、アプリの判定とは全く異なっていたという書き込みを見かけた。年金支給日には銀行の窓口や一部の店舗が混み合うという話は有名だが、アプリにAI予測の変動要因として反映していなかったようだ。
 混雑情報は、基本的にスマホの位置情報をもとに集計・推測したデータに基づいたものであり、スマホを持っていない人・持っていても位置情報やモバイルデータ通信機能をオフにしている人は、正しく把握できないという欠点がある。
 6月19日に試用版(プレビュー版)がリリースされた、画期的な最新技術をもとに、最大限にプライバシーに配慮しつつ、新型コロナウイルス感染者の陽性反応者と濃厚接触があった場合に通知する接触確認アプリ「通称COCOA」も同じ、スマホを持っていない人の存在が反映されないという問題を抱えている。
技術上、日本に居住する全員がスマホを保有し、このアプリをインストールした上で常に持ち歩く状況にならない限り、理想とする検知精度は期待できないからだ。
 リアル世界も、まるでインターネットのようになった。スマホを持たざる人は、実際にはその空間に存在していても、データ上は、リアル世界にいないも同然。この問題は、最新スマホの所有を義務化すると解決する。実際、マイナンバーカードの読み取りにはNFC搭載スマホが必要であり、任意作成のマイナンバーカードの全員保持に向け、スマホを持たない/古いスマホを使い続けるという選択肢は塞がれつつある。
【参考記事】マイナポータルAPを利用できるNFCスマートフォン、iPhoneは計12機種対応
https://www.bcnretail.com/market/detail/20200610_177204.html
 それでも一歩踏み込めない国の方針は、今後も長らく「オンライン上に存在しない店や病院」や「行動分析データに現れない人」を残す結果になるだろう。
デジタルファースト時代は、もう何年も前から始まっている。そしていよいよ世代や好き嫌いを問わず、デジタルファーストに取り組まざるを得なくなった。リアルタイムで日々鬱々とする新型コロナ禍が「福」となるよう、急激な変化の波を乗り越えよう。(BCN・嵯峨野 芙美)
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