この1年で平均単価が66%も上昇したPCパーツがある。グラフィックボードだ。
昨年2月に2万8500円だった平均単価(税別)は、この2月に4万7400円まで大幅に上昇した。全国の家電量販やパソコンショップなどのPOSデータを集計するBCNランキングで明らかになった。
 販売前年比も好調で、2月の販売台数で125.2%、販売金額で198.5%と倍増ペースで売れている。昨年秋ごろから暗号通貨相場が動意づき、2月下旬に1ビットコインが600万円に迫る水準まで上昇。1年で5.2倍に高騰し「マイニング」ブームが再燃していることも、活況を後押ししている。
 グラフィックボードはこの1年を通じて好調で、昨年は台数・金額とも堅調に推移。
販売台数前年比で、ほぼ2桁増のペースを維持してきた。部材調達に困難をきたした3月と、増税による駆け込み需要の反動減に見舞われた9月は、販売金額がわずかに前年を割れたものの、10月以降は倍増ペースが続いている。
 平均単価は9月まで3万円弱の水準で推移していたが、10月に4万円台まで一気に急騰。この2月には5万円をうかがう水準までさらに上昇した。10月はNVIDIAのGPU(Graphics Processing Unit)、GeForce RTX 3070搭載製品が発売されたうえ、ビットコインも終値で150万円を突破したこともあり、需要が活性化し平均単価も押し上げた。
 グラフィックボードは、搭載するGPU別ではNVIDIA製とAMD製で市場の大半を占める。
なかでもNVIDIA製が9割以上を占めている。現在、特に人気なのはGeForce RTX 3070搭載のグラフィックボード。2月の販売台数シェアは23.1%にも及び、販売台数ランキングで弾トツの売れ行きを示している。加えて、GeForce GTX 1660 SUPER、GeForce GTX 1650などと9位までがNVIDIAのGPU搭載ボードが占める。AMDは、10位にやっとRADEON RX 550搭載モデルが登場する、という構図だ。
 単価の構成は幅広い。
GeForce RTX 3070搭載モデルは、ハイスペックなRTX 30シリーズのエントリーモデルの位置づけながら平均単価7万5700円。市場全体よりもかなり高価だ。一方、GeForce GT 710は、販売台数ランキング5位で3800円と非常に安価だ。かと思えば、RTX 30シリーズのハイエンドモデルGeForce RTX 3090搭載ボードは21万9500円と非常に高価な製品だがランキング7位とよく売れている。
 グラフィックボードのメーカーシェアでは、MSIが強い。2月時点で、24.8%を占めトップだ。
2018年の秋からトップシェアを走り続けている。トップを追うのは2社でほぼ横並び。2位が玄人志向ブランドのCFD販売で21.5%、3位がASUSで21.1%だ。
 4位がZOTACで11.8%。同社は昨年から頭角を現し、一時2位までシェアを上げる場面もあったが、現在では上位3社に水をあけられている。5位はPalit Microsystemsで7.8%。
18年初めごろは2割前後のシェアで2位を走る場面もあったが、このところ5位に甘んじている状態だ。
 グラフィックボード市場は、昨年来の巣ごもり需要でPCゲーム向け製品を中心に好調だったところに、マイニングブームも加わって、今のところ品薄状態を招くほどの活況を呈している。好調はしばらく続きそうだ。(BCN・道越一郎)
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