コロナ禍についての評論を当ウェブで配信してきた元芸人の作家・松野大介氏。この2年半のコロナ煽り報道を総括する小説『インフォデミック コロナ情報氾濫』を今月刊行した。

今回は〝政治の対策と、メディアの報道は変わるのか?〟の論考だ。







 《東京都、新たに3621人の感染発表 13日連続で前週同曜日上回る 前週同曜日から1208人増加 2日連続3000人超 東京都は警戒レベル引き上げ》



 東京都では6月半ばより新規感染者増加のニュースが目立ってきた。



 《東京都・コロナ感染者数の平均が5週間ぶりに増加 関係者「ぶり返しつつある」》



 第6波までの例からこの先も増加すると予測されるが、世論が大きく変わったことは、上のネットニュース版のコメント欄から伺える。



「とりあえず、医療体制って改善されたんでしたっけ?それと、今までの感染原因などの分析とそれをどう対応すべきだったかなどのフィードバックなど。」



「もういい加減に感染者数よりも症状を見ないと行けないと思う。つまりほぼ症状がないとか普通の風邪レベルの方は除いて、重症化している人を対象に対策を考えていくべきでしょう。」



「マスコミも感染者数だけを報道するのではなく、医療体制の整備状況やワクチン、治療薬の状況などその後の対策の進み具合も報道して欲しいです。」



「そりゃ増えたり減ったりはするでしょう。今までもそうだったし。

というかいい加減そろそろ5類に引き下げてもらえませんかね。色々と緩和しているのに矛盾してませんか?」 



 だが、政治の対策もメディア(主にテレビ)の報道も変わることはないかもしれない。なぜなら、変えてしまったら、今までの政策・報道が「間違えが多かった」「煽ってました」と認めなければならなくなる。



《政治とメディアにやってほしいが、決してやらないこと》をわかりやすく例にします。





【保健所や医療への予算投入】



 保健所は94年の847から、2020年には469に。四半世紀で378が減らさされた。

4割超も減らしたのは政治だ。 



 しかしニュースではその件は触れず、コロナ禍当初から「保健所に問い合わせ殺到で混乱!」と報じた。(コロナに限らず、日本のメディアと政治は〝政治に不都合な事実は報じない〟という連携が見られる)



 保健所を増やすことが1つの対策だが、いまさら増やしたら、減らした時期の政治の責任が問われる。



 また、コロナ患者を受け入れたために赤字になったり潰れる危機にある病院と、医療充実に予算を予算を投入すれば、自粛する必要性が低くなる。



 だが、お金を渋りたいから大幅にはやらない。マスコミもそこはあまり突っ込まない。





【飲食店の自粛】



 感染経路が飲食店ではなく、家庭内のほうが高いのは以前からデータが示している。



 また、酒を出す、出さないも感染とは関係性が低いのは明白。



 だから飲食店と、酒屋はじめ飲食に関した業者が倒産しないよう、なんとかのひとつ覚えで「時短・禁酒」は考慮したほうがいいが、これも言い出しっぺの小池都知事と、都知事のマネをした政府や全国の知事が「対策が間違っていた」と批判されたくないので、もしかしたら禁酒法は続き、マスコミは酒を飲む人が感染を広げていると報じ続けるかもしれない。



 ちなみに今月、奈良県知事についてのニュース記事が話題になっている。



「『医療ひっ迫だから飲食店を時短にする?ロジックが分からない』『まん延防止』を絶対要請しなかった知事が貫いた独自理論」



  医療がひっ迫するのは予算をつけない国や医療業界の事情なのに、医療を守るために特定の業種の労働を感染対策の名の元に規制するのは理解できない。だが、こういう正論を、誰も公に口に出来ない不思議な現象が起きてきた。







【指定感染症の引き下げ】



 2年前から、2類相当からインフルエンザと同じ5類への引き下げは、時々言われた。



「引き下げるとコロナの医療費が払えない」というマイナスな例をマスコミは一時期報じていたが、そういう方には優遇を作るなど考慮があってもいいし、引き下げれば重症患者が病院たらい回しで亡くなる人がいなくなるというプラス面もある。



 何よりウイルスが弱体化しているなら、隔離は必要ないだろう。



《無症状なのに、隔離で死にかける例》がある。



 私の知人(60代男性)は今年3月にフランスに1週間行っていた。



 出国時の検査では陰性。

しかし日本の空港で陽性になり、ホテルで隔離。一切の外出は許されず、食事は廊下に置かれた。



 鼻水など軽い症状はすぐ治った(私も電話で様子を聞いていた)が、1週間後の検査も陽性。それから1日ごとの検査も陽性が続き、部屋からいっさい出られず運動不足で、そのため寝られず血圧が200を超え、ついに240に達したという。隔離のスタッフに聞いても、リモートドクターに相談しても「仕方ない」「陽性者は診られない」と言われ、放ったらかし。



「これで血管が破れて脳梗塞かなんかで死んでもコロナ死にされるから『コロナ死じゃない』と知り合いに遺言を言い触らしてる」と言われた(2週間でやっと陰性になり、無事でした)。



 ウイルスが弱体化しても、軽症者をこういう目に遭わせていいのか。



 だが政治やメディアからは時折「見直しを」の声が出ては、医師会が反対したりして消える。



 私は政治、医師会、メディアの連携があると思っている。





【感染者の報じ方】



 陽性反応が出た無症状者も「感染者」と呼ぶ。これ自体はどの感染症も同じで、他国も同様と思うが、新型コロナは無症状、軽症が約8割いるのに、テレビはことさら感染者の人数ばかりを煽ってきた。  



 しかも、いまだに「前週同曜日上回る」「○曜日で最多」と曜日で刻んで報じてる。



 感染者が少ないと「濃厚接触✕✕県○○人!」と、濃厚接触の基準を明確に説明しないままに報じたりする。今さらやめられないメディアは、今回もどうやら繰り返しそうだ。





【まとめ~日本人はどうする?】



 私の予測が外れて、政治とメディアが今までと違う政策・報道をすれば、コロナ禍による倒産、失業者の自殺(女性が多い)、子供の自殺は減る可能性がある。



 私はコロナを軽んじてはいない。



 昨夏、延長を続けていた自粛の期間に陽性者が増え、自粛に絶えられず開ける飲食店が増えたり五輪が開催されたのに収束に向かった。この事実を重く捉え、科学的に対策を考えるべきだ。



 今まで通りなら、私たち日本人は「やれやれ、また自粛か‥‥」とうんざりしつつも出来る範囲で働き、出来る範囲でレジャーを楽しみ、出来る範囲で我慢し、どこかで誰かが人知れず失業していく‥‥。





文:松野大介