今年になってもトクリュウ(匿名・流動型犯罪グループ)の関与が疑われる事件が相次いでいる。その源流にもなった犯罪組織が、22~23年にかけて広域強盗事件を引き起こした「ルフィグループ」だ。

東京や千葉など8都府県で強盗が相次ぎ、このうち東京都狛江市の事件では、住人の高齢女性(当時90)が亡くなった。一連の事件では、「ルフィ」と名乗る指示役たちが海外から実行役に指示を送っていた。



 大規模な特殊詐欺と広域強盗で列島を震撼させた「ルフィグループ」最高幹部らへの独占取材で重大事件の全貌に迫る壮大なルポルタージュ『檻の中のルフィ 闇バイトを生んだ者たち』(講談社)が話題だ。主な登場人物は、「ボス」と呼ばれて崇拝された渡邉優樹被告(以下、被告と受刑者表記は略)を頂点に藤田聖也、小島智信、「ルフィ」を名乗った今村磨人の幹部4人と、かけ子の山田李沙。彼らの人物像と闇組織の真相に迫っている。著者である栗田シメイ氏にインタビューを敢行。第2回を公開する(全3回)



特殊詐欺・広域強盗「ルフィ」グループのボス渡邉被告。なぜ“闇...の画像はこちら >>



■ルフィグループのボスたちの素性とは



 ボスである渡邉、そして藤田、今村にはどんな印象を持ったのだろう。



「渡邉というボスがいて、彼を右腕、左腕として支える藤田、小島がいるわけです。渡邉には直接会っていませんが、豪快な性格で人心掌握に長けている印象があります。藤田は裁判を傍聴しましたが、一見すると話が理路整然としているように聞こえてしまう話術がある。嘘をついているのに真実に聞こえてしまう人もいるだろうと思います。一方で、目的のためには残虐な手段も厭わない。

藤田が主導していた『接触部隊』は裏切り者に拷問をくわえ、グループを律するための抑止力となっていました。今村は他の幹部3人とは少し毛色が違う。自身が愛読していた漫画の主人公である「ルフィ」と名乗るような安易さがある半面、人を裏切ることを厭わないという側面があった。彼は他のメンバーやJPドラゴン(フィリピンを拠点にしている日本人犯罪組織)にうまく利用されていたのですが、本人はそれに気づいていなかった。渡邉や藤田は今村のような人物をノセるのがうまいんです。闇バイトに応募してくる組織の末端も、仕事ができて常に冷静に物事に対処する藤田に憧れを抱いたり、渡邉を父親のように慕っていたりしました」





特殊詐欺・広域強盗「ルフィ」グループのボス渡邉被告。なぜ“闇バイトの応募者“から父親のように慕われていたのか?【栗田シメイ氏インタビュー:第2回】
渡邉優樹



 ルフィグループが、認知されているだけでも60億という巨額の詐欺に成功したのは、渡邉が作り出した巧みな組織運営の賜物だという。しかし、組織が拡大していた時期、幹部たちはその収益で豪遊していた。主な金の使い道は、酒、女、高級車、ブランド品である。渡邉がハマったのはカジノだ。小島と藤田に仕事を任せるようになってからは、カジノで大半の時間を過ごしていたほどであったという。





特殊詐欺・広域強盗「ルフィ」グループのボス渡邉被告。なぜ“闇バイトの応募者“から父親のように慕われていたのか?【栗田シメイ氏インタビュー:第2回】
小島智信



「ルフィグループに限らず、特殊詐欺組織が拠点に選ぶ国には、いくつかの共通点がある。南国であること、夜遊びができる場所があること、そして3つ目は東アジア人が多い地域だということです。

彼らは詐欺を仕事だと思っているので、『仕事をしたからこれだけの金を使うんだ』という感覚でした。ただ、フィリピンではカネの使い道は限られている。カジノで遊ぶ、現地で愛人を作る、キャバクラに行く、高級車を買うぐらいのもの。私はメンバーに『飽きないのか?』と聞いたことがありますが、どうも飽きないようです」





特殊詐欺・広域強盗「ルフィ」グループのボス渡邉被告。なぜ“闇バイトの応募者“から父親のように慕われていたのか?【栗田シメイ氏インタビュー:第2回】
今村磨人





特殊詐欺・広域強盗「ルフィ」グループのボス渡邉被告。なぜ“闇バイトの応募者“から父親のように慕われていたのか?【栗田シメイ氏インタビュー:第2回】
栗田シメイ氏(撮影:高山浩数)



■「警察官や金融庁の職員などの“お堅い職業”に日本人は弱い」



 メンバーたちには、詐欺罪で捕まっても刑は軽いと侮っていた節もありそうだ。



「最近は厳罰化されてきていますが、詐欺の罪状である窃盗罪では3年ぐらいで刑期を終えるケースがほとんどです。この事件の当事者たちも、すでに出所している人間がいます。被害者への弁済を行っている者もいる」





 老後の資金を失うなど、被害者たちは悲惨な状態に陥っている。加害者は被害者に対して申し訳なかったという気持ちを抱くことはないのだろうか。



「特に詐欺に関しては、悪いと思う感覚は麻痺していったそうです。1日に何百件も遠隔で電話をかけていると、それがルーティンになって何も感じなくなってくる。受け子(被害者からキャッシュカードを受け取る役割)に比べて、かけ子は捕まるリスクも比較的少ない。電話をかけているだけでお金がどんどん入ってくるという構図が、罪の意識を感じにくくさせている。

闇バイトが増えている理由には、当事者たちが罪の意識を感じにくいということもあると思います」



 特殊詐欺の被害総額が急増しており、昨年は前年比の2倍となる1414億円となった。中でも増えているのが、ニセ警察官を名乗る手法だ。





特殊詐欺・広域強盗「ルフィ」グループのボス渡邉被告。なぜ“闇バイトの応募者“から父親のように慕われていたのか?【栗田シメイ氏インタビュー:第2回】
「かけ子」だった山田李沙



「実際のかけ子である山田が話すところでは、『警察官や金融庁の職員など、お堅い職業の人間を日本人は信頼しやすい』と言っていました。これがフィリピンだと、そもそも現地の警察官を信用していないので、詐取の構図として成り立たない。『縦割りの会社で真面目に仕事を続けてきた人や、自分は絶対に騙されないと思っている人間ほどカモだ』とも言っていました」





取材・構成:大西展子/撮影:高山浩数





特殊詐欺・広域強盗「ルフィ」グループのボス渡邉被告。なぜ“闇バイトの応募者“から父親のように慕われていたのか?【栗田シメイ氏インタビュー:第2回】
(撮影:高山浩数)



栗田シメイ



ノンフィクションライター



1987年、兵庫県生まれ。広告代理店勤務、ノンフィクション作家への師事、週刊誌記者などを経て現職。スポーツや政治、経済、事件、海外情勢などを幅広く取材する。著書に『コロナ禍を生き抜く タクシー業界サバイバル』(扶桑社)、『ルポ 秀和幡ヶ谷レジデンス』(毎日新聞出版)。新刊『檻の中のルフィ 闇バイトを生んだ者たち』(講談社)が好評発売中。

編集部おすすめ