【解体について勉強しよう!】

 皆さんこんにちは! 茨城県でヨガのインストラクターの傍ら、新米猟師をしているNozomiです!

解体について。その種類やリスク管理※注意! 今回も捕獲したイ...の画像はこちら >>
 

 さて前回は、私の初めての解体について綴らせて頂きましたね。今回は、解体のスタイルや方法について深く掘り下げてお伝えしていきたいと思います。

私の拙い文章を通して少しでも“狩猟”に興味のある方、すでに“狩猟”に携わっている方、そして何より“いのち”と向き合っている方のお役に立てれば幸いです。

 さて皆さん! 前回はへっぽこな私たちの解体をお伝えさせて頂きましたが、解体のやり方にもいくつか種類があるのをご存知ですか!? 私は自分が解体をしてみるまでは全く知りませんでした(*ノωノ)

 解体のやり方や種類は猟師さんによって千差万別です。いまはインターネットや解体の本、そしてジビエ学校(!?)というものがあるらしいので、ある程度の情報や技術は共有されていますが、50年ほど前私の師匠が猟師になった頃はそんなものはありません。インターネットで調べたり、動画で勉強したり、ジビエの解体に特化した本もなかったそうです。先輩が新人に懇切丁寧に教える、なんて事もあり得なかったそうです。新人猟師は雑務をしながら、その“目”を使って先輩猟師の技術を盗むしかなかったそうです。

解体のスタイルは主に以下の2つに分けられます。

■吊るしでの解体

解体について。その種類やリスク管理※注意! 今回も捕獲したイノシシの解体写真がありますので苦手な方は注意してください。
木に吊るした状態での解体。第3回で書いたように、報奨金をもらう為に捕った日付をスプレーでイノシシに書いて写真を撮ります。

 ロープを使って木に吊るしながら作業を行います。私の師匠はこのスタイルです。大きな木から獲物を吊るして解体を行いますが大物を吊るすのはたいへんそうでしたね……。

以前見学した解体施設ではウィンチを使いボタン一つで獲物を操作していました! 文明すごい!(感動!)

解体について。その種類やリスク管理※注意! 今回も捕獲したイノシシの解体写真がありますので苦手な方は注意してください。
天井にレールを敷いて電動ホイスト(ウィンチ)で吊るすやり方。ホイストだけなら2万円ぐらいで買えます。

 吊るしでの解体のメリットですが、

♦肉が他に触れないので衛生的であること
♦必要な場所から刃を入れられるので効率的
♦食道から肛門まで内蔵を一気に落とせること
♦家畜の解体施設と同じ方法なので、流通しているお肉とほぼ同じ解体が出来ること

 特にいちいち獲物を持ち上げて方向を変えたりしなくて良いので、吊るす場所さえ用意できれば、女性にとてもオススメの方法です。私は次に説明する寝かせでの解体もやってみましたが、100キロ近い獲物を寝かせて解体した時は方向を変えるだけでも滝汗の作業です(;^_^A

 吊るしでのデメリットですが、場所や設備が必要であること、人力で吊るす場合、サイズが大きいと吊るす事が難しい事でしょうか……! 50キロ~100キロの獲物を吊るすのは大変な作業です。しかし、定滑車と動滑車を使い女性の力でも獲物が吊るせるような工夫を凝らせばその問題は解消できます。

■寝かせでの解体

解体について。その種類やリスク管理※注意! 今回も捕獲したイノシシの解体写真がありますので苦手な方は注意してください。
解体台は自作する猟師さんも多いですね。
いずれにしても慣れてないと一苦労です。

 テーブルに獲物を置いてのシンプルな解体スタイルです。茨城県の実施している無料解体セミナーに参加した時はこのスタイルの解体でした。普通のテーブルでも解体はできますが、木枠を組んで専用の解体台を作って解体されている方もたくさんいましたね!

解体について。その種類やリスク管理※注意! 今回も捕獲したイノシシの解体写真がありますので苦手な方は注意してください。
解体に使う刃物は、自分がやりやすい物であれば何でも大丈夫です。ナイフ1本でる人もいれば、骨を切るのに電動ノコギリを使う人もいます!

 寝かせでの解体のメリットを上げると

♦特別な道具や場所が必要なく、小さな個体なら手軽に作業できること
♦地面に広げたビニールシートや軽トラの荷台等、どこでも解体することが出来ること

 寝かせでの解体のデメリットというか、注意点ですが、台の衛生管理が必須になってきます(消毒・洗浄など)。ただ、剥いた皮の上で作業すれば最低限の衛生管理は出来ると聞きました。

 いやぁそれにしても大物を何度もひっくり返して作業は本当に大変でしたね……。一人だ

 とあっち行ってこっち行ってを繰り返し向きを変えるだけで腰がもげそうになりました(;´∀`)

 解体のスタイルは本当に人によって様々です。2つのスタイルを獲物によって使い分けている猟師さんももちろん居ますよ。ロープや滑車を持ち歩き、現地で吊るし解体を行う人もいるそうです。吊るすための専用のフックもあるので、要チェックですね!

 ただし、内蔵抜きを含め、現地での解体は残滓の処理に要注意です。適切な処理を行わずに放置をすると鳥獣保護法第十八条「鳥獣の放置等の禁止」や、廃棄物処理法第十六条「投棄禁止」に抵触する場合があります。

市区町村によっては「原則持ち帰り」を指定している所もあるのでお住まいの自治体に確認してくださいね。

 さて! 獲物の皮を剥ぐ皮剥ぎについてですが、四国や九州沖縄地方など、地域によってはイノシシの皮を剥がずに(!?)、毛を処理して皮ごと食用にする所もあるそうです。皮は剥ぐものとばかり思っていた私にはビック仰天! 暑い地方だから毛皮は要らなかったのでしょうね( ゚Д゚)私はイノシシの皮を頂食した事はありませんが、確かに鳥皮なんてめちゃくちゃ美味しいのでイノシシの皮も美味しそうです!

 以下に毛の処理方法をまとめてみました!

【毛剃り】刃物でイノシシの毛を剃り落とす方法。最も一般的。
【毛焼き】ガスバーナーなどで毛を炙っ焼き切る方法。

 毛焼きには、毛を焼いた後、水につけて焼けた薄皮をふやかし、金たわし等でこすり、もう一皮剥く方法もあるそうです。

マダニなどの寄生虫も確実に処理する事が出来るそうなので衛生的で良いですね!

【湯剥き】70度~80度のお湯をかけて抜けやすくなった毛を毟る方法。

 毛根まで抜けるので表面が綺麗に仕上がります。熱湯をかけて消毒出来るのでこちらも寄生虫に対して有効的です。湯剥きによって剥かれた個体を動画で拝見しましたが、ちょっとびっくりするくらいツルツルです。きっとあそこまでツルツルにするには、相応の技術と、根気が必要になってくるはずです。

 解体の技術にしろ、皮剥ぎの技術にしろ、全国の猟師さん達はそれぞれの地域の特性に合わせてみんな一生懸命に技術を磨き、それを後世に繋げてきたのでしょう。インターネットや動画サイトもない中、何百年と昔から繋がれてきたこの技術と想いを、私も受け継ぎ、そして後世に伝える為のお手伝いをしていきたいです。

【終わりに】

 今回は、解体のスタイルや方法について深く掘り下げて綴らせて頂きました。次回は私が害獣から守っている畑について、そして憎き野菜ドロボーや有害鳥獣についてお話させて頂こうと思います。この連載を通して私の、私たちの想いが、少しでも誰かに繋がり、そして何かのお役に立てれば幸いです。