矢内東紀(以下:矢内) 「和田秀樹先生が、ある書籍のなかで、お母様から、“アンタはコミュニケーション障害だから、弁護士か医者にならないと、生きていけないから”と言われて、医者になった、みたいなことが書かれてましたけど」
和田秀樹(以下:和田) 「そうそう。そのうえでさ。やっぱり僕、内科とも精神科とも喧嘩して、老年精神医学って道に入るわけですよ。で、老年精神医学をやってると、もうみんな、なれの果てというかさ、そういう人をたくさん診るんですよ。元大臣とか、元会社の社長とかが、ボケちゃっててさ。それで、そういう人たちを見ていると、一時的に偉くなっても、結局、下のことを可愛がってないヤツって、誰も見舞いに来ないよね。
矢内 「ああ、いい話だなあ、それ」
和田 「だから、そういうのを見てるとさ。たとえば、小泉進次郎でも、橋下徹でも、いまの安倍晋三総理でもさ、僕は、老人をいっぱい見てて、思ったんだけど。人生のピークって、後ほどいいわけよ。早く死ぬ気がない人は。だから、結局、若いうちに偉くなろうとして、運よく偉くなれたとするじゃない? じゃあ、橋下なら橋下が50くらいで総理大臣になったとしてもさ、そうやって若いうちに偉くなればなるほど、晩年、カスになるわけじゃない? カスというか、もう、抜け殻みたいになるわけだ。まあ、中曽根康弘元首相とか、ナベツネ(渡辺恒雄読売新聞社主)みたいに、ずーっと地位にしがみついて、エライ人のまま死ねる人はいるかもしれないけど、普通はそうはいかないわけでさ」
矢内 「中田先生が、そのへんを『13歳からの世界征服』(百万年書房)という本で書いてますけど。
和田 「おっしゃる通り。だから、若くして出世しようとすればするほど、セコいことをしなくちゃいけなくなっちゃうでしょ。だから、いま、たとえば、(安倍総理のことを)忖度してるわけのわからない公務員だとか、何も言えなくて安倍さんにペコペコしてる自民党のヤツとかさ、そういうヤツを見てると、この人たちって、年取った時、どうする気なんだろうと思っちゃうんですよ」
矢内 「中田先生がイスラム国渡航事件の時に、かばったのが、和田秀樹先生と池内恵先生だけだったって、僕のなかで、すごく重くあってですね。僕も、かばったというか、一緒に逃亡したんですけれども」
和田 「僕が知る限り、中田氏はさ、イスラム青年会議の日本代表だったしさ。要するに、昔のイスラムの過激派ってね、たとえば、連合赤軍とかは、PFLP(パレスチナ人民解放戦線)とは仲がいいけど、ほかの国のイスラムの偉いヤツらには、誰にも相手にされてないわけだよ。でも、中田さんは、イスラム国とも仲がいいかわりに、ほかの国の王子とかとも仲がいいわけだからさ。
矢内 「(中田先生は)イスラム国についても、すごく、客観的な視点で書かれているというか。“イスラム国なんか嫌いだ”というふうに公言されたうえで、その、客観的な記述というのを心がけている。やっぱり、学者だなというふうに思いますね」
和田 「いや、たいしたものだよね。だから、まあ、世間は勝手なことを言うけどさ。たまたまね、中田は高校の同級生じゃん」
矢内 「ええ。小学生時代から塾で一緒の」
和田 「それで、大学の同級生に、岡本って、開成を一番で出て、東大の医学部を一番で出たという、すごい賢いヤツがいるのよ。
矢内 「いやあ、いいことおっしゃる。
和田 「いや、だからさ、結局、損か得かより、あとで考えたほうがいいっていうか」
矢内 「というか、考えられないですよ。中田先生が言ってたのは、考えていたら、もうできないというか。それこそ、たとえば、人が線路に落ちた時に、体がパッと動くこととか。つまり、動かないほうが自分の生存率って上がるんだけど、でも動いちゃう人間というのが一定数いて。それこそが、ADHDとか」
和田 「そうだね。たぶん、そうなんだよ」