利用開始前から大混乱…マイナンバー、国民が「取り返しのつかない」損害被るおそれ

 社会保障・税番号制度(マイナンバー)に関する話題が連日ニュースを賑わしている。

 11月中に配布完了を目指していたマイナンバーの通知カードの初回配達が遅れ、およそ1割が12月になるという。高市早苗総務相は24日の閣議後会見で、「年内にお手元に届けば、特に影響はないと思っている。すぐに具体的なデメリットが生じることはない」と述べ、来年1月のマイナンバー利用開始については影響がないとの考えを示した。

 だが、通知カードについては、手渡しすべきなのにポストに投函した郵便局員の不正配達や誤配など、問題が多発している。

 そもそもマイナンバーの受領を拒否すると、どうなるのか。

 内閣官房、厚生労働省、国税庁などの各省庁のHPでは、罰則はないが法定調書の作成などに際して、個人番号の記載は法律(国税通則法、所得税法等)に定められた義務であり、提供を求めると記している。

 東京都内・某区役所職員は、「転入者に対しては、マイナンバーカードの交付を強く勧めるように上から通達があった」と明かす。

 これに対し、全国中小業者団体連絡会(全中連)が10月27、28の両日に行った省庁交渉では、各省庁が「共通番号の記載がなくても提出書類を受け取り、不利益を与えない」ことを明言した。

 つまり、マイナンバー施行にあたり、法定調書への共通番号記載を法律で義務付けられてはいるが、記載しなくても個人にも事業者にも罰則・不利益はない。

●マイナンバーに保険証機能付加は愚策か

 だが、これでは反対の声が根強いマイナンバーの普及は進まない。そこで政府はマイナンバーカードに健康保険証(被保険者証)機能を持たせることを決めた。

 この健康保険証機能付与についてはマイナンバー制度に関するロードマップにも記載されている。また内閣府大臣官房番号制度担当室長の向井治紀審議官も昨年7月30日の「マイナンバー対応実践セミナー」において「個人番号カードに健康保険証を早急に取り込んでいく政府の方針は決まっている」と述べており、早くから既定路線だったようだ。

 だが、日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会は共同で、マイナンバーとは異なる医療等IDの導入が必要だとして反対の声を上げている。実際、英、独、仏をはじめとしたヨーロッパ諸国では、危険性が高いとして医療用に別のIDを導入している。

 マイナンバーと健康保険証が一体化することで、医療機関でカードを提示すれば、健康保険の情報を確認できるため、今後保険証が不要となるだろうとみられている。プライバシーに配慮し、病歴などの情報は残さないとしているが、万一情報が流出した場合には回復できないほどの損害が生じる可能性は否定できない。

 マイナンバーは慎重に保管し、他人に知られないようにすることが求められている。業務にあたってマイナンバーの提供を受けた事業者は、厳重に管理する義務があり、漏洩した場合には重い罰則が科される。

 それにもかかわらず、病院など多くの場面で提示を求められる保険証の機能を付加するのは矛盾しているのではないか。また、批判を浴びて白紙撤回されたとはいえ税金還付のために買い物の際にレジでマイナンバーカードを提示する案を策定するなど、制度の普及を優先するあまり、理念の通っていない案ばかり提示されている。

 麻生太郎財務大臣は、銀行預金口座への登録義務化について「3年くらいしたところで検討させていただこうかと思っている」と述べており、制度が普及したところでマイナンバーの適用範囲がなし崩し的に拡大されるのは避けられないだろう。

 マイナンバー制度自体については、メリットもデメリットもあるため安易に是非を述べるつもりはないが、枠組みが確立されていない状況で拙速に進めているとの印象が拭えない。「とりあえず導入し、後から適用枠を広げる。不都合があれば修正すればいい」という政府の思惑が透けて見える。
(文=平沼健/ジャーナリスト)

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