ユニクロ、ヒートテック依存商法の限界…悲願の「強いファッション性」を断念か

 本連載前回記事では、サンリオのキャラクター、ハローキティのブランド個性があいまいになり、ひいてはブランド価値が落ちているという状況をみてきた。続いて今回はユニクロについてみていきたい。

 ユニクロというブランドは、ファッション衣料品というよりは、どこかトヨタ自動車を連想させる。機能性、品質管理、カイゼンといった言葉を思い出させる製造業的イメージがあるブランドなのだ。これは、けなしているのではなく、褒めているつもりだ。

「製造業的イメージを持つアパレル商品」というのは、世界にたったひとつだろう。ユニクロは、誰もが買える「普及価格」で品質の良い自動車や電機製品を世界に提供した、かつての日本企業を思い出せるアパレルブランドだ。

 そういった意味で今、ユニクロが日本の電機メーカーが経てきたのと似た道をたどっているように見えるのは、当然のことなのかもしれない。

 たとえば、ヒートテックが登場したときは画期的であったが、機能的製品なのだからマネはできる。競合他社が模倣品を出す。ユニクロは、それよりもっと機能的に優れた製品をつくろうと、絶え間ないカイゼンをする。だが、品質はすでに消費者には見分けのつかないレベルとなっている。

 ソニーやパナソニックのオーディオ・ビジュアル(AV)製品に関する2000年頃の調査では、その品質の良さは世界の消費者には違いがわからないレベルになっていることが明らかにされた。それでも、日本のメーカーはカイゼンを続けたが、デザイン性に長けた英ダイソンや、安価な新興国メーカーの製品に負けた。

 ユニクロがインディテックスやH&Mの売り上げを抜くには、ファッション性が必要だといわれる。だが、それはどうだろうか。ユニクロは、ジル・サンダーやクリストフ・ルメールといった著名デザイナーがデザインした服を販売したが、PR的な話題づくりは提供できても、それがユニクロにファッショナブルなイメージを与えたわけではない。

 ユニクロはファッション性を取り入れようと、さまざまな努力をしているが、これまでのところ成功していないのだ。

●徹底的に機能性を追及するほうがよい?

「ブランドパーソナリティ」という用語がある。ブランドアイデンティティ、ブランドパーソナリティなど、似たような意味を持つカタカナ用語を微妙な違いで使いわけるのは、筆者はあまり好きではないが、この場合においては、ブランドパーソナリティ(=性格)という言葉を使うと、言いたいことがわかりやすく説明できるので、あえて使ってみる。

 製造業のパーソナリティを持つブランドが、ファッション産業のパーソナリティも併せ持つということは可能なのか。二重人格とまではいかなくても、かなり矛盾した性格を持つブランドということになる。

 ユニクロがファッショナブルであろうと幾度か試みたのは、そうでないとインディテックスの売り上げを抜けないと考えていたからだ。しかし、どうも最近はその路線はあきらめたようでもある。代わりに柳井正会長兼社長は、3Dプリンティングを含めたITを駆使したマスカスタマイゼ―ションのようなことを考えているといわれる。

 いずれにしても、ユニクロブランドはファッション路線をあきらめて徹底的に機能性を追求すればよい。だが、ヒートテックという機能性だけで世界市場を魅了するのは難しいようだ。「寒さ対策の機能性に人気があるのは、冷え性という概念があるモンゴル系だけなのではないか」「白人系は基本的に体温が高いので、暖かい下着をありがたがる傾向は少ないのではないか」「温かい下着をつけてもスリムな外観を保ちたいという気持ちを持っている消費者は、欧米には少ないのではないか」といった意見もある。

 確かに、そういった傾向はあると思う。特に、欧州に比べると暖房費節約の意識が低く、移動は自動車が中心の北米では、日常着に寒さ対策はあまり考えないかもしれない。だが、温暖化が進むなか、消費者の意識は変わるし、啓蒙活動によって変えることはできる。問題は、ユニクロがそのためにどれだけ時間とお金を投資できるかだろう。

 ヒートテックという機能性が欧米にはすぐに受け入れられないとして、「世界に通用する機能性とは何か」といえば、やはり環境だろう。たとえば、焼却しても二酸化炭素がほとんど出ないとか、土に埋めたら土にかえるとか、そもそも筆者などが思いつかないような点で革新的にエコロジカルな洋服をつくり続ければいい。それがユニクロというブランドのパーソナリティであり、アイデンティティだと思う。

●安さはブランド構築の邪魔になる

 ただ、勝手なことをいわせてもらえば、定番製品の色やデザインを、工業製品の美しさのようなスマートなものにはしてほしいと思う。今のユニクロがフィーチャーフォン(ガラケー)だとするならば、iPhoneのようなデザインにして、洗練された機能性を表現したスマートフォンの“ユニクロS”をつくってほしい。

 ついでにいえば、ユニクロSは価格も高くする。欧米の旗艦店はニューヨーク5番街などの一等地にあるが、こういった地では価格が安いことがかえって商品を理解してもらうには邪魔になることがある。いくらヒートテックの機能性を説明しても、値段が安いとニューヨークの消費者には真面目に考慮してもらえないのだ。

 消費者市場においては、強烈な個性がなければ無数の商品の中で埋もれてしまう。「二兎を追う者は一兎をも得ず」のことわざ通りだ。自分のブランドの個性を選択しなければいけない。あれもこれも追うことは、それがたとえ短期的に売り上げを伸ばすことであっても、ぐっとこらえて我慢しなくてはいけないのではないか。
(文=ルディー和子/マーケティング評論家、立命館大学教授)

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