トランプの差別・過激発言に狂喜乱舞する米国民の深い闇 まさに米国民の本音だった!

 アメリカ大統領選挙の混迷が、世界的な注目を集めている。現在は民主党・共和党ともに指名候補を決める段階だが、民主党では前国務長官のヒラリー・クリントン氏、共和党では不動産王のドナルド・トランプ氏が本命視されている。

 特に台風の目といわれているのが、トランプ氏だ。予備選挙・党員集会のヤマ場である3月1日の「スーパーチューズデー」において、トランプ氏の圧勝が伝えられたことは周知の通りである。

 CNNなどのリベラル系メディアは、必死にトランプ氏を叩き、いわゆるネガティブ・キャンペーンを繰り広げている。しかし、それが有権者に響かないどころか、逆にトランプ氏の人気を高める結果につながっているのは皮肉だ。

 CNNは、実に報道の約7割をトランプ氏批判に割いており、連日のように“トランプ叩き”を展開している。そして、日本のメディアはそれを引用するかたちで、トランプ氏の過去の問題発言や過激発言などを取り上げている。

 しかし、この「問題発言」というのは、「誰にとっての“問題”であるか」ということを考える必要がある。確かに、トランプ氏の発言は過激でストレートなものが多い。しかし、実際にはアメリカ国民がそれらを「問題」だと認識していないため、本当の意味での「問題発言」にはならず、メディアのネガキャンも効かない。その裏付けとして、トランプ氏の支持率は共和党トップである。

 例えば、トランプ氏は昨年12月に「イスラム教徒の入国を禁止する」と発言して、世界的に物議を醸した。各メディアは、これを「大きな問題発言」として取り上げたが、意外にも、世論はさほど反応していない。逆に、トランプ氏の支持率を高めることにつながり、だからこそ、今の人気があるわけである。

 なぜ、そのような現象が起きているのだろうか。それは、アメリカの有権者の中でイスラム教徒は0.7%程度といわれており、残り99.3%の票にはまったく響かないからである。

 また、2001年9月11日の同時多発テロ以降、アメリカ人の間では、イスラム教徒に対する「潜在的な嫌悪感」「表面化しない偏見」など、鬱屈した感情が溜まっている。トランプ氏の発言は、そうした国民感情を扇動するかたちになったため、意外なほどの人気者になっているわけだ。

●トランプ発言が浮き彫りにする、アメリカ社会の闇

 また、トランプ氏は「不法移民を強制送還する」「メキシコ国境に壁をつくる」とも宣言しており、ヒスパニック(中南米系)層からは反感を買っているといわれてきた。

 しかし、実は今、ヒスパニック層の有権者から一番人気を得ているのはトランプ氏である。つまり、トランプ氏は、確かに“不法移民”からの人気はないが、正規の手続きを経た“合法移民”からは支持を得ているのである。

 なぜなら、不法な移民が存在することによって、正当な移民たちまでもが差別的に扱われるという現状が、アメリカ社会にはあるからだ。そのため、合法移民にとって、トランプ氏の移民政策は自分たちの権利を守るための重要な政策といえる。

 また、トランプ氏のさまざまな発言は、「ポリティカル・コレクトネス」に対するアメリカ社会の闇を表面化させたともいえる。ポリティカル・コレクトネスとは、その名の通り、「差別や偏見を排除するために、政治的に中立な表現・用語を使用しよう」というものである。

 例えば、「チェアマン(議長)」という言葉は、「男性を示唆する=女性差別となり得る」ということで、「チェアパーソン」と言い換えられている。また、「スチュワーデス」が「キャビンアテンダント」や「フライトアテンダント」と呼び名を変えたことも、この文脈に沿ったものだ。

 差別や偏見はもちろん、いわゆるヘイト表現を禁じる。これは人道的な一方で、アメリカ社会に「言いたいことを言えない」状況をつくり出しており、アメリカ人はそんな状況に「NO」を突き付けていた。

 そして、それを議論の俎上に載せたのが、ほかならぬトランプ氏である。トランプ氏の発言は、ある意味でアメリカ人の本音であり、彼はいわば国民の代弁者の役割を果たしている。だからこそ、トランプ氏に対して、多くのアメリカ人が拍手喝采を送っているのである。

●米大統領選で5000億円が動くワケ

 また、米大統領選は民主党・共和党併せて約5000億円の資金が必要といわれる。これは広告費のようなものだが、今はこの多額のコストが割に合わなくなってきている。

 メディアが優位性を持ち、世論を誘導することができたからこそ、候補者は宣伝費として大金を支払う価値があり、いわゆるコストパフォーマンスが良かった。しかし、前述したように、CNNがいくらネガキャンを繰り広げても、トランプ氏の支持率は上がる一方だ。世論誘導ができず、有権者を動かすことができないとなれば、このコストは無駄になりかねない。

 逆に言えば、だからこそ、アメリカの多くのメディアがヒステリックにトランプ氏を叩く、という構図になっているわけだ。

 そして、今回の米大統領選の特徴のひとつが、民主党・共和党ともに、いわゆる主流派の苦戦が目立つことだ。例えば、本来なら共和党の主流派として、元フロリダ州知事のジェブ・ブッシュ氏が台頭すると思われていたが、彼は人気を獲得することができず、早々に撤退に追い込まれた。

 そして、その代わりといえるのが上院議員のマルコ・ルビオ氏だが、そのルビオ氏も、同じく上院議員のテッド・クルーズ氏の後塵を拝している。

 ロビー活動で動く米大統領選では、候補者は撤退の際にほかの候補者を支援するかたちで降りる。つまり、自分に集まっていた資金と票を、勝てそうな候補者にシフトすることで、自らの支援者やロビイストたちを守るわけだ。

 今回、ブッシュ氏が抱えていた資金と票はルビオ氏に流れたとされるが、それでも著しい効果を上げることはできなかった。

●トランプ氏を支持する「プア・ホワイト」

 また、共和党においては、「スーパーPAC(特別政治活動委員会)」と呼ばれる巨大な政治資金管理団体が、選挙戦の行方を左右するといわれる。これは、無制限に政治資金を集めることができる団体で、スーパーPACを通じて多くの政治資金を集めた候補が有利になるといわれる。

 しかし、前述のように、スーパーPACを通じてブッシュ氏からルビオ氏に資金が流れたが、それが奏功しているとは言いがたいのが現状だ。

 そして、現在2位につけているのがクルーズ氏だ。キリスト教福音派の支持を集めるクルーズ氏は、共和党の保守本流とは一線を画する保守強硬派といわれ、健闘している。

 しかし、そのクルーズ氏もトランプ氏の独走を許している。トランプ氏を支持しているのは、主に「プア・ホワイト」といわれる低学歴・低収入の白人や、いわゆる一般大衆であり、浮動票がトランプ氏を共和党のトップに押し上げているといわれる。

 また、民主党においても大異変が起きている。詳しくは次稿に譲るが、いずれにせよ、主流派が苦戦し、多額のコストをかけても世論誘導ができなくなりつつある現状は、これまでの米大統領選のスキームを根底から覆すものであるといえるだろう。
(文=渡邉哲也/経済評論家)

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