リニア新幹線、「絶対にペイしない」(JR東海社長)のに税金3兆円投入を安倍首相が決断…異例優遇の事情

 5月26日、27日の両日、三重県志摩市で先進国首脳会議「伊勢志摩サミット」が開催された。サミット議長を務め終えた安倍晋三首相は、海上自衛隊のヘリコプター、航空自衛隊のC1輸送機、陸上自衛隊のヘリを乗り継いで広島市の平和記念館に到着。そこで米国のバラク・オバマ大統領を出迎えた。オバマ大統領は原爆資料館を視察し、原爆慰霊碑に献花。核廃絶に向けた演説を行い、坪井直広島県原爆被害者団体協議会理事長らと短い対話をした。ちなみに、原爆ドームは対岸から眺めただけだった。

 晴れの舞台での大役を果した安倍首相を真っ先に出迎えたのは、東海旅客鉄道(JR東海)の葛西敬之名誉会長だった。5月27日付「首相動静」(時事ドットコム)によると、「午後7時17分、のぞみ60号でJR広島駅発。9時31分、JR名古屋駅着。JR東海の葛西敬之名誉会長、柘植康英社長出迎え」とある。

 伊勢志摩サミットを前にした5月10日付「首相動静」(同)も興味深い。首相官邸で、午後3時53分から斎木昭隆事務次官 (当時)ら外務省の幹部らを集めて会議。伊勢志摩サミットとオバマ大統領の広島訪問の受け入れ体制について報告を受けた。目にとまったのは次のくだりである。

「午後6時26分、官邸発。同31分、東京・赤坂の日本料理店『浅田』着。葛西敬之JR東海名誉会長らと会食。北村(滋)内閣情報官同席。午後8時26分、同所発」

 安倍首相と葛西氏は、日本版CIA長官である内閣情報官の同席のもと、何を話し合ったのか。北村氏は警察庁外事情報部長から内閣情報官に転じた。情報収集活動を統括するポストにある。分秒刻みでスケジュールが決まっている首相の日程としては、2時間の会食は長い。安倍首相と、首相のブレーンである葛西氏との蜜月ぶりを「首相動静」が改めて浮き彫りにした。

●リニア中央新幹線などに、官民合わせて30兆円の資金を投下

 国会が閉会した6月1日の記者会見で、安倍首相はリニア中央新幹線の名古屋から大阪間の延伸を従来の2045年から8年間前倒し、財政面で支援すると表明した。

 これを受けて自民党は6月3日、参議院選挙に向けた公約を発表した。日本銀行のマイナス金利を活用して、官民合わせて5年で30兆円の資金をリニア中央新幹線の大阪への延伸前倒しや整備新幹線に充てるとする内容だった。

 参院選に勝利した安倍政権は、8月初旬に発表する経済対策にリニア中央新幹線の建設の前倒しを盛り込む。国が低金利で貸し付ける「財政投融資」の仕組みを使い、JR東海に融資する。具体的内容は8月末までに国土交通省やJR東海が協議して決めるが、融資規模は3兆円、返済期間は40年を軸に調整している。

 JR東海のリニア計画では、27年に東京(品川)-名古屋間を開業、大阪までの延伸区間は45年に完成する。すでに東京(品川)-名古屋間では、14年10月に国の認可を得て、建設工事が始まっている。同区間の286キロを40分で結ぶ。総工事費は東京-名古屋間で5兆5000億円、東京-大阪までの全線で9兆円を見込む。

 JR東海は、長期債務残高を5兆円以内にとどめるため、東京-名古屋を開通しても8年間は大阪延伸に着工せず、経営体力が回復した後の35年に着工する計画だった。政府の支援によって最速で37年の開業を目指すことになる。

 安倍政権はリニア建設を国策として位置付けているが、民間企業のJR東海が主導してきた事業に対する国の関与の拡大は問題を残した。財務省や総務省は、リニア中央新幹線は民間の事業との見方から、慎重論が強かった。

 しかも、これだけ公的資金を投入して、回収できるのだろうか。JR東海の山田佳臣社長(現・会長)は、13年9月の記者会見で「リニアは絶対にペイしない」という趣旨の発言をしている。

 それにもかかわらず、安倍首相はリニア新幹線を国策に格上げした。葛西氏がリニア新幹線計画を主導しているからだろうか。JR東海は安倍首相の人脈をフルに使い、3兆円をほぼ無利子といっても過言ではない超低利で引き出したのである。

●NHK会長は、JR東海の人事の一環

 葛西氏は、古森重隆富士フイルムホールディングス会長とともに、安倍首相をバックアップしてきた経済界の中心人物だ。第一次安倍政権時代には、「四季の会」のメンバーである葛西氏は国家公安委員や教育再生会議議長、古森氏はNHKの経営委員会委員長に就いた。

 第二次安倍政権の樹立に貢献した葛西氏は、安倍氏のブレーンとして絶大な権力を握る。

 さらに6月28日、NHKの最高意思決定機関である経営委員会の委員長に、九州旅客鉄道(JR九州)の石原進相談役が決まった。石原氏は憲法改正を悲願とする安倍政権を支持する「日本会議福岡」の名誉顧問、原子力発電所の必要性を訴える「原子力国民会議」の共同代表を務めていたが、“不偏不党”をタテマエとするNHKの最高意思決定機関の委員長に相応しくないと思ったのだろうか。石原氏は両組織の役職を辞任した。

 葛西氏が経営者として、その晩年に力を注いできたのがリニア中央新幹線。JR東海が「単独でやる」と啖呵を切ったリニア新幹線に、国はゼロ金利に近い超優遇策で3兆円を気前よく貸し付ける。

 リニア中央新幹線は巨額の赤字を出すのではないかという懸念がある。万里の長城、ピラミッド、戦艦大和は世界の三大無用の長物とされている。リニア中央新幹線が、この仲間入りをすることがないよう祈ってやまない。
(文=編集部)

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