「年間13.3リットル」――。これが何を意味する数字かわかりますか?

 これは、日本人が1人当たり1年間の植物油平均摂取量です。

肉の脂やバターなど動物性のものを除いた植物油だけの量です。家庭でよく使うサラダ油やキャノーラ油の量にしては多過ぎるように思われる方がいるのも当然で、私たちの食生活に潜む、目に付きにくい「隠れ油」を足すと、これだけの量になります。大さじ3杯(36.6グラム)の植物油を毎日摂り続けている計算です。

「隠れ油」とは、マヨネーズやドレッシング、マーガリンの原料に使われる油、外食のトンカツやフライドポテトなどの揚げ油、カップ麺、チョコレート、ポテトチップス、カレールーなど、加工食品の原材料の油などで、知らぬ間に大量に消費しているのです。

 日本植物油協会調べでは、日本で消費される植物油を多い順に並べると、以下のようになっています。

1位:菜種(キャノーラ)油 44%
2位:パーム油(パーム核油含む) 28%
3位:大豆油 17%

 この3大油で全体の約9割(89%)を占めます。
ちばみにサラダ油とは、菜種油と大豆油を主成分とした混合油です。オリーブオイルやごま油などはポピュラーなので、もっと使っているように思いますが、それらを合わせても残りの1割でしかありません。それほど目につかないところで3大油が使われているのです。

 油というと、カロリーの高さが問題視されがちですが、本連載で再三報告してきたとおり、植物油には健康を害する成分が多く含まれており、カロリーの高さより安全性に問題があります。そんな危険な油を、私たちは大量に体内に入れ続けているのです。揚げ物やカップ麺、スナック菓子などを好む若い層は、13リットル以上に摂取しているでしょう。


●植物油の危険性

 では、植物油を大量に摂取すると、人体にどのような影響があるのでしょうか。3大油に潜む代表的な危険性を挙げてみましょう。

 菜種(キャノーラ)油は、甲状腺肥大や心臓病を引き起こす因子が多いとされた菜種を品種改良したキャノーラ種を原料にした油ですが、その安全性は不透明で「もはや食料に適さない」と専門家から警告されています。

 パーム油は、家庭では馴染みが低いですが、加工食品に大量に使われています。大腸がんや糖尿病の発症リスクなどが報告されています。

 大豆油は、生産過程の高温処理で発生する神経毒のヒドロキシノネナールが、認知症の原因と報告されています。


 植物油の厄介なところは、急性症状が現れにくいため、いろいろな病気の原因と報告されているにもかかわらず、注目されにくいことです。しかし、毎日摂り続け体内に蓄積されることにより、アトピーや花粉症などのアレルギー、糖尿病や高脂血症などの成人病、がん、うつ、認知症など、増え続ける多くの現代病を引き起こしているのです。

 本連載を通じて、ヘルシーと思われがちな植物油の裏の顔を具体的に紹介してきましたが、2月20日に、それらをまとめ大幅に加筆した『「隠れ油」という大問題 −病気になる油、治す油-』が出版されました。新刊の巻頭には、人気食品に含まれる植物油を可視化した隠れ油図鑑を掲載し、身の回りに潜む隠れ油に焦点を当てるとともに、隠れ油の探し方のヒントとなるようにしました。また、人間が油から逃れられないDNAに組み込まれたカラクリや、戦後に急激に普及した日本の油食の裏事情なども解説しています。最後には、本連載のタイトルともなっている、正しい油の摂取法で健康を取り戻す「少油生活」の具体的な実践法も記載しました。


 昨日までの油が今日のあなたです。今日からの油が明日のあなたをつくります。

 あなたが今、直面している症状や体調不良の原因は、知らぬ間に毎日摂り続けている植物油なのかもしれません。この本で油の正しい情報を得て、健康に役立てていただけることを願ってやみなせん。
(文=林裕之/植物油研究家、林葉子/知食料理研究家)