今クールの連続テレビドラマ『モンテ・クリスト伯 ―華麗なる復讐―』(フジテレビ系)第1話が19日、放送された。
目黒すみれ(山本美月)と婚約したばかりの漁師・柴門暖(ディーン・フジオカ)が乗る遠洋漁船は、遭難から2週間が経過していた。
入間刑事は暖に、バラジはラデル共和国のテロ組織ククメットのメンバーであり、バラジから預かった手紙を見せるよう言い、「Dear Teikichi」で始まる英語で書かれた手紙を一読。その手紙の内容は多くの人命を危険に晒す可能性があり、持っているだけで暖にも危害が及ぶ危険があると説得し、その手紙を預かる。加えて、手紙のことは絶対に口外しないよう命令する。
入間刑事は、バラジが指定した手紙の受取先であるTIファンドマネジメントに出向き、同社代表で入間刑事の父親の貞吉に手紙を見せ、ククメットから貞吉に資金提供を依頼する内容が書かれていると迫ると、貞吉はククメットとつながっていることを告白。入間刑事は、ラデル共和国は拘束中の日本人と、手紙の受取人として指定されている人物の身柄交換を要求してきていると説明。貞吉は逮捕される覚悟はできていると宣言し、手首を差し出すが、父親が犯罪者であることがバレると警察官としてのキャリアが終わってしまう入間刑事は、後日、再び貞吉の元を訪れてその手紙を燃やす。
そして暖はすみれとの結婚式当日、会場で警察に逮捕され、取り調べで入間刑事から例の手紙を渡され、それがバラジから渡された手紙と同一のものか質問される。英語の読めない暖は肯定するが、実はその手紙には「Dear Dan Saimon」と書かれており、暖は入間刑事によってククメットへの資金提供者に仕立て上げられてしまう。そのまま身柄交換でラデル共和国の刑務所に送られた暖は拷問を受け、独房のなかで息絶えそうになるが、その時、なんと独房の地面の一部が盛り上がり、高齢の人間が姿を現すところまでが、第1話で放送された。
エンディング間際では、暖と同じ守尾漁業に勤め、暖のせいで船長になれない神楽清(新井浩文)、暖の友人だが密かにすみれに思いを寄せ、暖に嫉妬する南条幸男(大倉忠義)、暖の幼馴染で地上げ屋の寺門類(渋川清彦)、そして入間刑事の策略によって暖が“嵌められた”ことが匂わされる。
●息つく暇もないもない展開
第1話を見た感想としては、あまりに突拍子もない展開に唖然とさせられると共に、一見すると暖の仲間にみえる人物たちが、実は心の奥では暖への嫉妬を抱えているという複雑な人間模様に引き込まれて、非常に見応えがある傑作だと感じた。
番組冒頭、刑務所の独房で瀕死状態の暖が映し出されたかと思えば、突然に場面は平穏な日本の港町に切り替わり、海岸で暖がすみれへのプロポーズに成功し、『愛は勝つ』が流れるなかで仲間たちが2人を祝福する。その映像を見ながら、意気消沈するすみれ――。2人の結婚式で流される予定のものだったが、遭難中の暖を心配するすみれは、自身が働く喫茶店で一足早くそれを見てしまう。
すると今度は暖が乗った漁船が帰還し、暖、すみれ、恵の3人は結婚式を控え、幸せなひと時を過ごす一方、神楽、南条、寺門の人生は少しずつ悪い方向に傾き始め、加えて入間刑事が現れることで、何かが起こりそうな雰囲気が漂い始める。
そしてついに暖とすみれの結婚式当日、例の映像が流れるなかでトイレに立つ暖。用を足していると警察に逮捕される暖。ウェディングドレスに身を包み、祝福のなかにいるすみれ。刑事たちに必死で抵抗しながら連行される暖。不測の事態に笑顔を失うすみれ。パトカーに乗せられバックウィンドウからすみれを見つめる暖。純白のドレス姿のまま、満開の桜の中、パトカーを走って追うすみれ――。
暖は警察で取り調べを受けた後、ラデル共和国の刑務所へ送られ拷問を受ける一方、すみれと恵は必死で冤罪を訴え街頭で署名活動を続け、一気にラストへ至る。
次から次へと展開が切り替わり、見ているほうは息つく暇もない。一つひとつの映像が映画のように丁寧につくり込まれており、さらに登場人物たちの背景や心の動きなどがしっかりと描写されおり、すべてに無駄がない。見終わった後、すぐに第2話が気になって、予告を入念にチェックしてしまった。
ここ最近のフジテレビの連続テレビドラマといえば、常に視聴率低迷がニュースになるほどの低迷ぶりであったが、同作以外の今クールのプライムタイム放送の連ドラ『コンフィデンスマンJP』『シグナル 長期未解決事件捜査班』も視聴率はいまひとつのものの、インターネット上での評価はかなり高く、フジ復活の兆しを指摘する声も多い。『モンテ・クリスト伯』もネット上では好意的な声が多いようだ。
今クール連ドラで傑作揃いとなったフジ、いよいよ復活の狼煙を上げ始めたのか――。3作品の視聴率の推移に注目したい。
(文=米倉奈津子/ライター)