【悪質タックル選手会見】日大・内田前監督、傷害罪で懲役刑の可能性は?

 5月6日の日本大学対関西学院大学のアメリカンフットボール定期戦で、プレーと関係のないところで関学大のQB(クォーターバック)にタックルを行った日大の宮川泰介選手が22日、謝罪会見を行った。宮川選手は悪質なタックルをした理由について、内田正人前監督と井上奨コーチから「1プレー目で相手のQBを潰せ」「潰したら(試合に)使ってやる」などと指示を受けていたことを公表した。

 会見を受け同日、日大広報部はコメントを発表し、「会見全体において、監督が違反プレーを指示したという発言はありませんでしたが、コーチから『1プレー目で(相手の)QBをつぶせ』という言葉があったということは事実です。ただ、これは本学フットボール部においてゲーム前によく使う言葉で、『最初のプレーから思い切って当たれ』という意味です」として、改めて内田前監督による指示を否定した。

 本件については、すでに関学大の被害を受けた選手(全治3週間)の父親が警察に被害届を提出しているが、内田前監督ら日大アメフト部の指導者が起訴される可能性はあるのだろうか。弁護士法人ALG&Associates執行役員・弁護士の山岸純氏に解説してもらった。

●スポーツにおける暴行等の教唆、見極めは困難

 法律の世界では、医者がメスを使って患者の腹を切る行為も、ボクシング選手が相手選手を殴る行為も、傷害罪(刑法204条)や暴行罪(刑法208条)の「構成要件」に該当すると考えられています。

 実は、犯罪が成立したかどうかを考えるには、まず(1)「刑法」などの法律に記載されている要件(これを「構成要件」といいます。たとえば殺人罪であれば、「人」が「人」を「殺す」という要件)に当てはまるかどうかを検討し、次に(2)「違法性を阻却する事由(たとえば、正当防衛など)」がないかどうかを検討し、最後に(3)「責任を阻却する事由(たとえば、心神喪失など)」がないかどうかを検討し、これらをクリアしてはじめて犯罪が成立するわけです。

 アメフト選手が「アメリカンフットボール」という競技のなかでタックルすることは、自分の体を相手にぶつけて有形力を行使するわけですから、「暴行罪」の構成要件に該当します。

 しかしながら、それらの行為が競技(練習を含む)のなかにおいて、かつ、ルールに基づいて行われる限り、刑法35条が規定する「正当な業務による行為」として、違法性が阻却されることになります。この結果、暴行罪が成立しないことになるわけです。

 しかしながら、「正当な業務による行為」と評価されるためには、あくまで「競技(練習を含む)のなかにおいて、かつ、ルールに基づい」た行為であることが前提であることから、たとえばアメフトのルールに基づかない「鉄拳で相手を殴る」ことは、たとえ競技中であっても、違法性は阻却されません。

 このような前提の下、今回の件を検討するに、「相手のQBを、1プレー目で潰せ」との指示が、「ルールに基づいた行為(ディフェンス・ルールを超えない行為)」の指示であれば、なんの問題もありません。しかしながら、反則と評価されるようなラフプレイなどを指示したと評価される場合には、「暴行・傷害を教唆した」ととらえられる可能性もあるでしょう。

 要するに、競技の一環として行われた行為なら適法ですが、競技にのっとったものではない行為なら違法となるわけです。

 とはいえ、カーリングや水泳と異なり、アメフト、アイスホッケー、ボクシングなど、“暴力”っぽい行為がある程度、許されているようなスポーツにおいて、暴行・傷害を教唆した・していないを見極めるのは、かなり難しい議論となることでしょう。野球において、わざと打者にボールを当てたのか、そうではないのか、を見極めることが難しいことと同じです。

 なお、もし内田監督が起訴され、有罪となるのであれば、相手選手がケガをしているなら傷害罪として15年以下の懲役または50万円以下の罰金、ケガをしていないなら暴行罪として2年以下の懲役または30万円以下の罰金などが科される可能性があります。もっとも、内田監督側が非を認めて謝罪するなら示談も進むでしょうから起訴はないでしょう。非を認めずとも、不起訴となるような事件です。
(文=編集部、協力=山岸純/弁護士法人ALG&Associates執行役員・弁護士)

あわせて読みたい

ビジネスジャーナルの記事をもっと見る 2018年5月24日のライフスタイル記事
この記事にコメントする

\ みんなに教えてあげよう! /

トピックス

> 今日の主要ニュース > 国内の主要ニュース > 海外の主要ニュース > 芸能の主要ニュース > スポーツの主要ニュース > トレンドの主要ニュース > おもしろの主要ニュース > コラムの主要ニュース > インタビューの主要ニュース

ライフスタイルニュースアクセスランキング

ライフスタイルランキングをもっと見る

コメントランキング

コメントランキングをもっと見る

コラムの人気のキーワード一覧

新着キーワード一覧

このカテゴリーについて

生活雑貨、グルメ、DIY、生活に役立つ裏技術を紹介。