「若者のLINE離れ」は起きていなかった…むしろ利用率上昇

 ダウンロードしたものの、数回使っただけで休眠状態だったり、アンインストールしてしまったりしたアプリがある人も多いはずだ。テレビCMなどでは「数百万ダウンロード突破!」と威勢のいい言葉をよく聞くが、実際にどんなアプリがどの性年代にどのくらい使われ続けているのか。

 本連載では、ダウンロード数だけでは見えない「アプリの利用率」をモニターの利用動向から調べるサービス「App Ape」を提供しているフラーに、四半期ごとに人気アプリの実態について聞いている。

 今回も、同社のコンサルティング本部長の岡田雄伸氏に2018年第1四半期(1~3月)を中心にアプリの動向を聞いた。

●10代男女がハマる「Tik Tok」の魅力とは

――本連載では3カ月ごとにその時期を象徴するアプリを岡田さんに紹介してもらっていますが、今回(18年1~3月)は何になるのでしょうか?

岡田雄伸氏(以下、岡田) 該当の四半期で“ぶっちぎり”というものはなかったのですが、傾向としてはライブ配信の動画視聴アプリが伸びています。注目は「Tik Tok(ティックトック)」です。ほかにも「17Live(イチナナライブ)」や「SHOWROOM」などがあります。「SHOWROOM」は以前から安定してユーザーが多く、一方「Tik Tok」は急に伸ばしています。

――「SHOWROOM」は利用者がライブ動画を投稿し、それに視聴者が応援のかたちで「投げ銭」をできるサービスですよね。「17Live」も仕組みは似ています。一方、「Tik Tok」の特徴はなんでしょうか?

岡田 「Tik Tok」は、ほかの2つとはだいぶ異なりますね。特徴はリップシンクです。リップシンクとは、既存の歌に合わせて“口パク”などのパフォーマンスをするコンテンツのこと。もともと、リップシンクアプリ「musical.ly」があり、「Tik Tok」を運営するBytedance社がmusical.ly社を買収しました。そのため、これらのサービスの基本的な仕組みは似ています。

――「Tik Tok」で利用者が動画をつくる際にはまず音楽を選ぶことからも、「音楽ありきで、口パクやダンスなどのパフォーマンスをするアプリ」なんですね。(※音楽なしで動画作成も可)。しかし、リップシンクの動画を見るとノリが若いですね。ツイッターで「Tik Tok」と検索すると、中高生のリップシンク動画がたくさん出てきます。

岡田 「Tik Tok」「17Live」「SHOWROOM」のアプリの所有者の性年代別の比率を「App Ape」で比較してみましょう(※図)。数値は出せないのですが、「Tik Tok」とそれ以外のアプリでは、明らかにグラフの形が違いますよね。「Tik Tok」は10代の所有者が一番多く、それに20代が続いています。また、10~20代では男女ともに人気がありますね。

――「17Live」「SHOWROOM」は男女で利用動向に差が出ており、どの世代も女性より男性の所有者が多い。それは年代が上がるほど顕著ですね。「17Live」「SHOWROOM」で動画を投稿する演者は若い女性が多いですが、それを見ているファン層は男性が多く、その年代もかなり幅広いのですね。

●「若者のLINE離れ」は間違い?

――この「アプリ四季報」では、初回に10代男性を中心に局地的にはやっている売り切りゲームアプリ「マインクラフト」のお話がありました。「Tik Tok」の例を見ても、若者は上の世代が利用している既存サービスに乗っかりたくないのでしょうか。

岡田 それもあるかもしれません。ただ、「App Ape」で見ると実態とは異なるケースもあるんですよ。当社のオウンドメディアでも触れているのですが、今年1月の「YOMIURI ONLINE」に「なぜ? LINEからも逃げ出し始めた若者たち」という記事が掲載されました。

――意外ですね。

岡田 はい。なので、「App Ape」で17年1月と18年1月を比較してみたのですが、10~20代ではLINEの所持者数、アクティブユーザーともに増えており、若者はLINE離れをしていなかったんです。月間利用率を見ても若者の利用率は上がっており、むしろ利用頻度は高まっています。ちなみに、30代以上を含む利用者全体の母数も増えており、利用率も同様にほかの年代でも上がっています。

「YOMIURI ONLINE」の記事では、「減少している」という根拠がLINEユーザーのそれぞれの世代の割合を16年と17年のアンケート調査から比較したもので、その結果「17年になり、若者のユーザーの割合が昨年より減少していた」としています。

 しかし、LINEユーザー全体のなかで中高年の割合が増えれば相対的に若者の割合は減ってしまいますよね。そして、「若者の割合」は減っても「若者の利用者数」が減っているかどうかはわからない。この記事では、「割合」と「実数」を混同していたのでしょう。一方で、「若者のLINE離れ」というタイトルは目を引きますよね。

――実際、この記事はものすごく拡散されていますね。そして、「実数ではなく割合を根拠にしており、本当に減っているかどうかはわからない」という反応よりも、タイトルに反応してコメントしている人が多いです。「読売新聞関連の媒体だから、より素直に受け止めた」という要素もありそうですね。

●山口達也事件でも起きた、誤情報の拡散

「YOMIURI ONLINE」の記事は「ガセ」や「デマ」ではなく、実数と割合の混同という「誤解」によるものだと思われるが、多く拡散された=注目度の高い話題であったことは間違いない。

 元TOKIOの山口達也による強制わいせつ事件の際には、ネット上で被害者を特定する動きが起きて誤情報が拡散、被害者とされた人物が否定する事態にまでなった。

 過去にネット上で「女子高生コンクリート詰め殺人事件の実行犯だ」などといわれない中傷に悩まされ続けた芸人のスマイリーキクチ氏は、この件についてツイッターで以下のつぶやきを残している。

「一部のネットユーザーがこの事件の被害者探しをしているようだけど、憶測で名前や個人情報を書き込んでも名誉毀損罪になるし、事実もアウトだからね。コピペやリツイートは最初の発信者と同じ責任で、借金に例えるなら連帯保証人と一緒なの。安易な投稿や拡散はさけましょう」

 ただ、名誉毀損は親告罪であり、被害者の告訴がなければ起訴ができない。私も過去に裁判を検討したことがあったが、裁判は非常に手間だ。今回の件で被害者とされた人物も、ネットでデマを発信した人やそれを拡散した人を名誉毀損で訴えるのは難しいのではないだろうか。現状がそうである以上、デマや不確実な情報が広がる流れを止めるのは、かなり難しいように思える。
(文・構成=石徹白未亜/ライター)

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