『ハゲタカ』、『半沢直樹』の猿真似…もはやNHK版を冒涜、綾野剛が最低のミスキャスト

 今クールの連続テレビドラマ『ハゲタカ』(テレビ朝日系)の第1話が19日、放送された。

 銀行の不良債権問題で日本が金融危機に陥っていた1997年、三葉銀行の資産流動化開発室室長の柴野健夫(渡部篤郎)は、同行が抱える不良債権の処理に奔走。鷲津政彦(綾野剛)が代表を務める外資系ファンド、ホライズンジャパン・パートナーズへのバルクセールによって銀行の帳簿上から不良債権を“消す”ため、ホライズンとの交渉に当たっていた。

 三葉銀行はホライズンとの第1回交渉で、バルクセールの対象となる債権の簿価総額を723億6458万円とはじき、最低でも300億円で買い取ってほしいと主張。だが、その4週間後、ホライズン側が独自の査定に基づき提示した資産買い取り額は約63億円で、三葉銀行の面々は激怒。しかし、債権のなかに資産価値のない不動産や多額の負債を抱えている法人なども数多く含まれていることを見抜かれた三葉銀行は、結局、言い値でホライゾンに売却する羽目になる。

 そこで第2回目のバルクセールでは、常務の飯島亮介(小林薫)が陣頭指揮を取り、競争入札とオークション方式によって“より高く”債権を買い取ってくれる売却先を選定しようと画策するが、ホライズン側に大蔵省へ情報をリークされてしまい、一発入札方式を余儀なくされる。入札当日、締切の午後3時ギリギリに走り込んできたホライズンの入札価格は、2位とわずか1560万円差の約198億円で1位となり、またもやホライズンがディールを勝ち取る。

 だが後日、飯島常務の元に、柴野と共に入札を担当していた審査役の沼田透(藤本隆宏)がホライズン側と接触している様子を収めた写真が送られ、沼田が入札情報をホライズン側に漏らしていたことが判明。そのまま依願退職をすることになった沼田を柴野が責めるところまでが放送された。

●主役の綾野剛が懸念材料?

 第1話を見た感想としては、見始めると一気に見入ってしまうほどスリリングで、今クールの各局連ドラのなかでは群を抜いた面白さであると評価できる。

 ただ、2007年に放送されたNHK版の『ハゲタカ』と比べると、映画のような重厚な演出や描かれる人間ドラマの深さ、映像美、ストーリー展開の計算高さや巧妙さ、ドラマ全体に漂う緊迫感、そして俳優陣の演技など、どれをとってもNHK版に見劣りしてしまい、はっきり言ってその足元にも及んでいない。NHK版が超名作であっただけに、NHK版への冒涜ですらあると感じてしまう。

 たとえば俳優陣でいえば、今回、柴野役を演じた渡部篤郎も悪くはないのだが、苦境に追い込まれるたびにオーバーに眉間に皺を寄せて顔をしかめるシーンが多すぎて、演技がしつこくてクサい。一方、NHK版でこの役を演じた柴田恭兵は、一貫して抑揚の効いた演技が功を奏して、大企業という組織の一歯車として、その理不尽さや矛盾に押し潰されそうになりながらもがき苦しむ日本のサラリーマンの哀愁が表現されており、多くの視聴者の共感を得ていたのではないか。

 そして今回のテレ朝版の最大の懸念材料ともいえるのが、鷲津役を演じる綾野だ。NHK版でこの役を演じていた大森南朋は、ハゲタカファンドを率いる冷徹で頭脳明晰な豪腕マネージャーという役柄にぴったりで、さらに心に大きな闇を抱えつつも奥の奥に“熱い何か”を隠し持つ男を見事に演じていた。一方、そもそも綾野はまったく冷徹な豪腕金融マンにも頭脳明晰な男にも見えず、専門知識などを口にするたびに強烈な違和感が画面のなかに流れて、そのたびにドラマの緊迫感が壊されていく。

 綾野のキャラは鷲津の真逆、むしろ“もっとも鷲津役に向いていない俳優”とすらいえるのではないか。綾野といえば、『最高の離婚』(フジテレビ系)で演じたような、“どこか頼りなくて優柔不断で線は細いけど、底抜けの優しさと言葉にできない魅力を女性に感じさせる男”みたいな役柄がぴったりだ。個人的には、映画『リップヴァンウィンクルの花嫁』の“何でも屋”役が、綾野の良さが一番発揮されていると思っている。

 さらに、NHK版で柴野と鷲津を第三者の視点から観察する重要な役柄、栗山千明が演じていたテレビ局記者役の三島由香がいないのも物足りない(ちなみに三島の代わりというわけではないだろうが、「東京クラウンセンチュリーホテル」のフロントマネージャー・松平貴子役として沢尻エリカが出演している)。同じテレ朝の人気ドラマシリーズ『ドクターX』でいえば、大門(米倉涼子)のパートナーである城之内博美(内田有紀)がいないような違和感、そんな表現だろうか。

 そしてもう一つテレ朝版の大きな懸念点としては、妙に『半沢直樹』(TBS系)のマネをしている点だろう。銀行モノという大きなくくりでいえば、2013年に放送され大ヒットした『半沢直樹』がどうしても思い出されるが、明らかに『半沢直樹』の演出手法を意識しているのが節々に伝わってきて、興ざめしてしまう。

 たとえば、『半沢直樹』ではクライマックスのシーンでの“顔ドアップ”や、男同士がやたらと顔を近づけて脅し&いがみ合うシーン、感情を露わにする人物の顔やカギとなる“モノ”にズームで寄りながら“ゴーン”という音が流れる演出手法が多用され話題を呼んだが、それらの手法がすべて『ハゲタカ』でも使われている。しかし、どれも非常に中途半端で、それゆえに余計に“『半沢直樹』の猿真似”感が強調されてしまう。

 繰り返しになるが、ドラマとしては十分に見応えがあるし、それなりに面白いので、高視聴率を獲得できると予想されるが、多くの視聴者たちが感じたであろう細かい部分の軌道修正が次回以降なされることで、ドラマとして“大化け”することを期待したい。もっとも、最大のネックである主役の綾野を替えることはできないだろうが。
(文=米倉奈津子/ライター)

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