2018年3月期の「役員報酬1億円以上」(東京商工リサーチ調べ) を基に、石油・化学、鉄鋼、食品、住宅・不動産、流通・小売りなどの会長・社長の役員報酬をリストアップした。

 石油・化学業界では、扶桑化学工業前社長の赤澤良太氏が役員報酬10億3400万円(前年は開示なし)で首位。

退職慰労金による。同社は食品等に使う果実酸類の総合メーカーで、リンゴ酸は世界シェアの5割を持つ。

 常連の信越化学工業会長の金川千尋氏は6億7100万円(前年は5億8500万円)。例年、同社の役員が高額役員報酬ランキングの上位を占める。同社は塩化ビニール樹脂、半導体シリコンウエハで世界首位だ。

 鉄鋼ではJFEホールディングスの事業会社、JFEスチール社長の柿木厚司氏が1億7400万円で1位。


 食品ではヤクルト本社前会長兼最高経営責任者(CEO)の堀澄也氏の2億8800万円がトップ。20年以上経営トップとして君臨した堀氏は、昨年6月の株主総会で退任。18年3月期に特別功労金が支給された。

 住宅・不動産では大和ハウス工業会長の樋口武男氏が3億5000万円で1位だ。大和ハウスは1億円プレーヤーを9人も出しているが、大手の住友不動産は1人もいない。

 ドラッグストアなど小売業では、日本調剤社長、三津原博氏の8億2000万円が断トツだ。
日本調剤は調剤薬局第2位。後発薬を積極的に販売している。

 流通・小売業は2月期決算が圧倒的に多い。2月決算の流通業の役員報酬の首位は、セブン&アイ・ホールディングスの稼ぎ頭、セブン-イレブンの海外部門を統括するセブン-イレブン・Incのジョセフ・マイケル・テピントCEOで、24億300万円だった。

●問題発覚でも高額報酬のレオパレス21

 そのほか、“お騒がせ企業”のトップも1億円プレーヤーとして登場する。

 インターネットサイト運営会社のミクシィは、森田仁基社長が株主総会直前に辞任した。
チケット二次流通サイト「チケットキャンプ」で「ジャニーズ」の名称を無断使用したとして、子会社のフンザと同社社長を兼務していた森田氏ら3人を、兵庫県警が商標法違反で書類送検したことで責任を取った。

 その森田氏の役員報酬は3億600万円。新社長に就任した木村弘毅氏は2億2700万円である。

 レオパレス21は過去の一部施工物件に建築基準法違反の疑いがあり、1989年2月に上場して以降に施工したアパート3万7853件の調査に着手しており、株価が急落した。それにもかかわらず、深山英世社長は1億2500万円もの報酬を受け取る。レオパレスブランドの単独者向けアパートの建築を請け負い、サブリース(転貸)するのが主な事業だが、株主にも「レオパレス21」のオーナーにも迷惑をかけていることをわかっていないとの批判が多くあがっている。


 3期連続の最終赤字を出しながら、1億円プレーヤーの一覧表に顔を出す“鉄面皮”の経営者もいる。

 給食・食堂受託運営のシダックスは主力事業のカラオケボックスからの撤退に追い込まれた。最終損益は16年3月期が71億円の赤字、17年同期は32億円の赤字、18年同期は13億円の赤字である。

 それでいて、18年3月期に、創業者で取締役最高顧問の志太勤氏は1億8200万円、息子の会長兼社長の志太勤一氏は1億7700万円の役員報酬を得ている。「志太親子の辞書には『経営責任』という言葉が載っていないようだ」と強く皮肉る向きも多い。

 日本で栄養補助食品を無店舗販売しているシャクリー・グローバル・グループのロバート・バーネット会長兼社長は、5億5000万円。
同社は17年3月期の純損益が21億8200万円の赤字。18年同期は8億7100万円の赤字。2期連続して最終赤字だ。19年同期も赤字の見通し。会計監査を行う新日本監査法人、メインバンクのみずほ銀行は忠言しないのだろうか。バーネット氏は前年も巨額の役員報酬を手にしていた。

(文=編集部)