「死後硬直」――明石家さんまは、自らの現状をそう評した。8月5日、木村拓哉がパーソナリティを務める新ラジオ番組『Flow』(TOKYO FM)にゲスト出演したときの言葉である。



「現在63歳のさんまは、かねて『60歳で引退する』と語っていました。しかし、爆笑問題の太田光に『今辞めたらかっこよすぎる』と引き留められたことを同番組で明かしました。その上で、翻意した現状を『死後硬直が3年続いてるって感じ』と自虐的に語り、木村から『硬直なのに、こんなに動いてしゃべるんですか』と驚かれていました」(芸能記者)

 さんまは、3カ月近く前にも似たような発言をしている。5月26日に放送された『さんま&女芸人お泊まり会』(フジテレビ系)で、大久保佳代子が「さんまさん、あと何年売れる?」と質問すると、「俺はもう終わってるよ。自分では終わってると思ってる。もうこの年齢やし」と答えたのだ。


 さんまの意外な本音に、いとうあさこが「終わってはないですよ!」と驚き、大久保も「数字も取れるし、絶対的におもしろいっていうのもあるし」と称賛していたが、さんまは本当に終わっていないのだろうか。テレビ局関係者は「終わってはいないが、少し気になる部分はある」と指摘する。

「まず、流行についていくことができているかどうか。以前、日頃から親しくしているヒロミが『ベテランの芸人の中で携帯電話やLINEをバリバリ使いこなしている人間は、さんまさんしかいない』ということを言っていました。また、欅坂46のメンバーが『踊る!さんま御殿!!』(日本テレビ系)に出演したときは、必ず『サイレントマジョリティー』の振りを披露しています。同世代の芸能人のなかでも、これだけ流行についていけているのは、さんまぐらいでしょう。


 しかし、やはりトレンドをリアルタイムで自然に取り入れるのは難しいようです。7月24日の『さんま御殿』で兄弟芸人のミキがE-girlsのライブに行ったときのエピソードを話し始めると、さんまは『E-girlsかぁ。“おっおっおっ”やろ!』とヒット曲『Follow Me』の振りを再現しました。兄の昴生が『時代についていっていますねー!』とヨイショしていましたが、この曲がリリースされたのは、もう6年前。確かに代表曲ではありますが、必死についていっている感が痛々しいのは否めないのが実情です」(テレビ局関係者)

 そもそも、さんまが流行に敏感になったのは漫画『ドラゴンボール』(集英社)がきっかけだといわれている。それまで「かめはめ波」ぐらいしか知らなかったさんまは、10年ほど前に若手芸人が「ピッコロみたい」などと仲間を『ドラゴンボール』のキャラに例えるのを見て「なんのこと言うとんのかな」と対応できなかったという。


 あとで、それが『ドラゴンボール』のキャラだと知ったさんまは「読んどかなあかんな」と危機感を抱き、次長課長の井上聡に全巻用意してもらって読み始めたというのだ。その努力には恐れ入るが、やはり移り変わりの激しい流行り廃りのすべてを把握するのは難しいのかもしれない。

●さんまと対極的なダウンタウンのスタンス

「6月26日の『さんま御殿』では、スクールバッグを意味する『スクバ』がわからずに『あ~、筑波山麓合唱団……』と苦し紛れにリアクションしていました。周囲から『スクバです、スクバ』と言われ、『スクールバスか?』『惜しいです』『スターバックス?』『それスタバ』などとやり取りする姿は、正直言って痛々しかったですね。さらに、“フットワークが軽い”を意味する『フッ軽』についても、単に“動作が早い”ことだと認識していたようで、古坂大魔王から『さんまさん、今日全部ダメです! 何も通じない』とツッコまれていました」(同)

 しかし、さんまは一度も言葉の意味を「知らない」とは言わず、適当であっても答え続けていた。やはり、プライドが許さなかったのだろうか。
一方、たとえばダウンタウンはどうか。

「8月3日の『ダウンタウンなう』(フジテレビ系)で、朝ドラ『わろてんか』(NHK)のヒロインを務めた葵わかなが、オーディションの際に『ニャンちゅう』のものまねをしたことを明かしました。これはNHK Eテレの番組に登場するパペット人形のキャラクターなのですが、松本も浜田も『知らない』と正直に答えていました。つまり、流行りなどに一線を画しているスタンスであれば物事を知らなくてもそれで済むのですが、さんまのように一度流行についていこうとする姿勢を示すと、『知らない』は自己否定につながる。そのため、自分で自分の首を絞めてしまうことにもなりかねないのです」(同)

 そんな事情にはお構いなく、流行は生まれては消えていく。引退を撤回し「死後硬直」のまま動き続ける“お笑い怪獣”は、自分の芸能人生にどう区切りをつけるのだろうか。

(文=編集部)