自衛隊がオスプレイ導入、首都圏で墜落事故の危険…政治主導の配備で隊員の命も危ない

 オスプレイが沖縄の普天間飛行場に続き、東京の横田基地にも配備される。10月に5機が配備され、その後10機に増える予定となっている。そして今年度から陸上自衛隊も導入することになっており、その運用面での目的や安全性についてさまざまな意見が出されている。そこで問題点を整理し、私なりの見解を述べてみたい。

 オスプレイとは正式にはベル・ボーイング製のV-22型垂直離着陸輸送機のことで、初飛行は1989年3月と歴史はそれなりに古い。飛行目的は特殊部隊を敵地に潜入させるのを主な任務とし、対テロ作戦などに投入される米陸軍、海軍それぞれの特殊部隊「デルタフォース」「シールズ」も運用。そして今後、我が国の演習場でもこうした訓練に使われることになっている。

●なぜ事故が多いのか

 オスプレイは国内外で事故やトラブルが相次ぎ、2016年12月には沖縄県名護市沖で大破、今年の2月には落下した部品がうるま市の海岸で見つかったのが記憶に新しい。

 緊急着陸は17年に大分空港や奄美空港(鹿児島県)で発生し、今年に入っても日本各地で日常茶飯事となっている。ちなみに量産決定後の06~11年の間に米空軍及び海兵隊では大小合わせて58件の事故が発生している。

 そのなかで、墜落する大事故は私が知る限りでは8件発生しているが、その主な原因は機体の構造上とソフトウェアからくる問題による耐空性の低さにある。オスプレイは離着陸時にはローター(プロペラ)を回すエンジン部分を垂直にして、ヘリと同じように上昇と降下を行い、ある程度高度を得た後には、それを固定翼の航空機と同じように水平に戻して前へと進む仕組みとなっている。

 これまでの大事故は、この動力部分を変換する過程で起きている点が注目される。専門的には「トランジッション」(移行)というこの過程は、少しの乱気流や風向きの変化によって揚力が落ちるので、操作が難しいといわれている。操縦技量の優れたアメリカ人パイロットでもこれだけ多くの事故を起こしている点を考えれば、この「トランジッション」操作を行う上でのコンピューター制御の精度が不十分といってもよいだろう。

 安全上の不安は、エンジントラブルの際に行うオートローテーションと呼ばれる緊急操作にもある。オートローテーションとは、ヘリのような回転翼機においてローターをエンジンの力ではなく抗力によって回転させて力を得るもので、車でいえばギアをニュートラルに入れるようなものである。エンジンとローターとの連絡を切って落下していくときに、相対的に発生する上昇気流によってローターを回して揚力を得て、落下速度を少なくして軟着陸を果たそうとする仕組みで、ヘリの操縦での重要な技術のひとつである。

 オスプレイでも仮に2基あるエンジンが全て故障すれば、このオートローテーションの技術を使い墜落時の被害を少なくしなければならないのだが、果たして十分に機能するのか疑問がわく。

 もともと、オスプレイのローターは構造上大きくできず短いため、それをカバーするために回転数を高くしている。そのため降下のときにはダウンウォッシュを強く発生させ、それが自機とほかの編隊機に乱気流となって影響するという特徴があるのだが、この短いローターはオートローテーション時にも十分な揚力を得られないという弱点が指摘されている。

●オートローテーション操縦は本当に十分なのか

 12年9月に沖縄県知事への回答というかたちで防衛大臣が、次のような主旨の発表を行った。

「エンジン出力喪失時の処置は滑空とオートローテーションの2つがあり、適切な前進速度と降下率を得るように飛行する。しかし回転翼機であってもオスプレイであっても、低高度におけるホバリングのような適切な前進速度と降下率を得ることができない高度及び速度領域が存在する。なおオスプレイについては両エンジンが同時に出力を喪失する事態は一度も発生していなく、オートローテーションを求められる場面はほとんど想定されていない」

 しかし先に述べたローターの大きさからくる非常時の落下速度は、かなり大きくならざるを得ないのは明らかで、滑走路など不時着時に適した場所がないと二次被害を十分に避けることは難しいだろう。そもそも、オスプレイは軍用機であるため民間のヘリ等に求められているオートローテーション等の厳しい耐空性基準は適用されず、日本の航空法で定めた耐空証明がなくても飛行可能である。

●オスプレイは日本に必要か?

 米軍に加え日本にも18年度から導入が始まり、自衛隊としてのオスプレイは当面17機となる予定である。しかし自衛隊では、国土の狭い日本では既存のヘリ部隊で十分であり、実効性もオスプレイより高いという意見が強かった。オスプレイは敵地に乗り込んで作戦を展開させるのが主目的で、そのために一般の航空機のように航続距離も長い。米軍が海兵隊の任務遂行のために開発したのもその理由からだ。

 しかし、専守防衛を任務とする自衛隊の任務からいって不必要な輸送機といえなくもない。自衛隊の武器類はユーザーでもある自衛隊が選定する。具体的には陸海空自衛隊を統括する防衛省総合幕僚監部が策定する「統合長期防衛戦略」をたたき台に、陸海空の各幕僚監部が武力攻撃事態を想定して武器類の導入を要求し、予算配分される。

 しかしオスプレイを配備される陸上自衛隊幹部は、「陸上自衛隊長期防衛戦略にオスプレイの名前はなく、当初採用されなかった」と明かす。私が最前線のヘリ部隊の幹部に聞くと、その理由は現在、オスプレイの2倍の輸送力を持つCH-47型大型ヘリを57機も保有し、狭い日本での活用はCH-47で十分とのことである。

●政権の都合で決まった導入

 では、なぜオスプレイを陸上自衛隊が導入することになったのか。答えは武器のことを十分に知らない政治家がトップダウンのかたちで決めたことによる。

 最初のいきさつは米軍が沖縄への配備を進めた2012年当時、沖縄から強い反対の声が上がり、それを見た玄葉光一郎元外相が「安全性を訴えるために自衛隊も保有すべきだ」と提案、当時の森本敏元防衛相がそれに同調して2013年度防衛費に調査費として800万円を計上したことといわれている。

 そして同年11月に衆議院が解散され、選挙で勝利した自民党が政権復帰すると、安倍内閣は14年度予算に調査費1億円を計上し、導入目標を15年度と発表したのであった。このようにオスプレイは現場の自衛隊の意見をまず聞くことからでなく、米軍の意向を優先させた「政治主導による武器調達」として決定されたといってよい。

●実際に誰がオスプレイを操縦するのか?

 オスプレイは陸上自衛隊に配備される。現在の陸上自衛隊にはヘリを操縦する隊員と、固定翼の偵察機などを操縦する隊員がいる。オスプレイの垂直離着陸という特徴から、訓練要員はヘリのパイロットから選ばれるであろう。

 しかしオスプレイは固定翼の航空機としての性能を有し、パイロットは固定翼機としての緊急操作要領もこなす必要がある。実際オスプレイの上空でのエンジントラブルなどの場合、固定翼機としての滑空による不時着の技術や、失速からの回復技術が求められている。

 現在の隊員のなかにはヘリと固定翼機の両方を十分に経験しているものは少なく、今後両方の操縦技量を十分に身に着ける必要がある。しかし、それはそう簡単なことではない。訓練には相当な時間が必要で、何よりも慣熟飛行をどこでどのように行うのか、教育に当たる米軍との調整も必要となってくる。そしてシミュレーターに続く実機の慣熟訓練で、地上の被害を出さない安全をどう担保するのか課題は多い。

 オスプレイの導入はいったん白紙に戻して、現場自衛官たちの意見もふまえ十分な議論を重ね結論を出していくことが必要ではないか。

 そしてシミュレーターでの訓練不足によって事故が続いている自衛隊でこれ以上隊員の命を粗末にしてはならない。必要なのは現有機での基礎的訓練である。優秀なアメリカ人のパイロットでもこれだけ多くの事故を起こしているオスプレイを、自衛隊が十分な訓練と導入準備を怠ったり、拙速に導入を急げば、首都圏をはじめ日本の人口密集地でも墜落事故が起きる可能性がある。

 現在の東アジアの情勢は米朝合意などで大きく変わろうとしている。ミサイルを迎撃ミサイルで撃ち落とせる1基1000億円もかかるイージス・アショアの配備にも批判が多く出されている今日、「米海兵隊」の敵地攻撃を主な任務とするオスプレイを「陸上自衛隊」が配備するという日本の国防政策の妥当性について、議論を重ねることが重要であろう。
(文=杉江弘/航空評論家、元日本航空機長)

あわせて読みたい

ビジネスジャーナルの記事をもっと見る 2018年9月29日のライフスタイル記事
この記事にコメントする

\ みんなに教えてあげよう! /

トピックス

今日の主要ニュース 国内の主要ニュース 海外の主要ニュース 芸能の主要ニュース スポーツの主要ニュース トレンドの主要ニュース おもしろの主要ニュース コラムの主要ニュース 特集・インタビューの主要ニュース

ライフスタイルニュースアクセスランキング

ライフスタイルランキングをもっと見る

コメントランキング

コメントランキングをもっと見る

コラムの人気のキーワード一覧

新着キーワード一覧

このカテゴリーについて

生活雑貨、グルメ、DIY、生活に役立つ裏技術を紹介。

通知(Web Push)について

Web Pushは、エキサイトニュースを開いていない状態でも、事件事故などの速報ニュースや読まれている芸能トピックなど、関心の高い話題をお届けする機能です。 登録方法や通知を解除する方法はこちら