アップル、中国にユーザデータ移行…「中国ベッタリ」戦略で莫大な利益を享受

 米国の検索サービスやSNSアプリが中国で利用できないことは日本でもよく知られている。世界中で当たり前のように利用できるGmailやグーグル検索、フェイスブックやツイッターといったサービスは、中国では利用できない。“万里の長城”ともいわれるファイヤーウォールによって、アクセスが阻まれているからだ。

 しかし、中国は市場として非常に魅力的だ。13億8600万人という人口は米国の4倍ほどで、GDPも2000年から飛躍的に成長している。テクノロジー企業にとっては、米国に次ぐ第2の市場として企業を急成長させることができる。後述のアップルは、14年に照準を合わせ、爆発的成長を享受した。

 一方、世界中で利用されるネットサービスが進出できていないおかげで、中国では独自のサービスが、そのスケールを生かして発展してきた。

 ウィーチャットやアリペイ、ディディなどは、世界中に活動の場を広げている中華系の人々の間で使われながら、中国から日本を含む先進国へと進出しているのだ。

●うまくやっているアップルと批判

 その点でいえば、アップルはうまくやっている企業といえる。

 アップルは14年9月に発売したiPhone 6で勝負に出た。それまで4インチの画面サイズだったiPhoneを、4.7インチ、5.5インチへと拡大させ、中国を最初に発売するエリアに加えたのだ。このタイミングで、アップルの市場別売上比で中国はEUを追い越し、米国に次ぐ第2の市場となった。

 ティム・クックCEOは頻繁に中国を訪れ、同国内への投資をアピールする。また、アップルは中国のユーザ向けのデータを、中国国内の企業が管理するデータセンターに預けることに同意した。

 また赤いiPhoneからは、世界中から評価されているエイズ撲滅運動(PRODUCT)REDモデルの称号を取り除いた。世界でエイズ患者が減っているなか、中国では逆に増加の傾向で15年には11万人以上の患者が増加した。政権にとっての恥となり得るエイズ撲滅キャンペーンによる影響に配慮した結果で、17年のiPhone 7に続いて、18年のiPhone 8の赤モデルも単なる「紅色」として販売された。
こうした細やかな配慮によって、アップルは米国と同じように製品を販売し、またインターネットサービスを含めた「体験」を提供するに至っているのだ。アップルは中国へのデータ移行で、ユーザの人権が危機にさらされると警告されている。中国におけるデジタルの検閲の管理下に、中国のアップルユーザのデータが入ることに対しての批判だ。

 アップルはiMessageやFaceTimeなどに関して、エンド・トゥ・エンドの暗号化が施されており、秘密鍵がなければアップルすら中身を知ることができない、と繰り返し説明する。しかし、当局に従順な姿勢は、先進国の活動家の懸念と落胆を誘っているのだ。

 そのアップルにとって、米中の貿易戦争の激化は頭の痛い問題だ。今のところ、生活にとって重要なツールであるスマートフォンについては、中国による関税措置の適用対象から除外されているが、「データ送信機器」としてApple Watchはリストに入っており、その影響が懸念される。

 また、トランプ政権の強硬な姿勢は、中国からの全輸入品に対する関税措置を引き起こす可能性があり、そうなるとiPhoneも関税を免れなくなる。単純に10%が価格に上乗せされれば業績への影響が免れないだろう。

●二転するフェイスブックの中国オフィス計画

 中国でのサービス展開は行っていないものの、グーグルは18年1月、深センに新たなオフィスを開設した。深センはハーウェイ、ZTE、ワンプラスといったスマートフォン企業が集まっており、ゲームを中心として大成功を収めるテンセントも本拠地としている場所だ。

 グーグルは中国との間で数々の問題を抱え、10年には中国向けのグーグル検索サービスの提供を停止し、検閲に対して反対の意向を表明してきた。その一方で、深センのオフィスは北京、上海に続いて3カ所目となり、無視できない中国市場との関係性を模索している様子がうかがえる。

 一方、フェイスブックもまた、中国市場を取り込みたいと強く願っているはずだ。ユーザ数を爆発的に増やすことができ、結果として広告売上の大幅な増加を見込むことができるからだ。フェイスブックは09年から中国で利用できなくなり、長年にわたる努力は実っていない。しかし18年7月24日、米紙ワシントンポストがフェイスブックのインキュベーションオフィスを浙江省に開設することを明らかにした。

 しかしニューヨークタイムズは、フェイスブックに出された許可が、数時間後に当局によって取り消されたと報じた。浙江省の当局が許可を与える際、中国の国家インターネット情報弁公室との間で緊密な連携を取っていなかったことで怒りを買ったという。

 こうなると、再び許可を得るのは難しく、フェイスブックが中国にインキュベーションの拠点を構える可能性は遠のいた可能性が高い。

 それでも、フェイスブックを含め、シリコンバレー企業は中国への進出の可能性を模索し続けることになるだろう。一方、インドも中国に次ぐ人口を誇り、成長の可能性を見せる。インドと中国が諸外国からの投資を競うようになると、状況も変化するかもしれない。
(文=松村太郎/ITジャーナリスト)

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