低視聴率『いだてん』を受信料使い1本1億円かけてつくり続ける“スポンサー不在”の罪

 まさかの低視聴率に加え、レギュラー出演中だったピエール瀧容疑者の逮捕など、何かと話題にこと欠かないNHK大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』。肝心のストーリーに関しても、「革新的で面白い」「構成が複雑すぎて理解できない」と相変わらず賛否両論が渦巻いている。脚本は宮藤官九郎、演出チームは『あまちゃん』を世に放ったNHKが誇る異能集団だけあって、既存の大河ドラマとは一線を画す物語になることは誰もが期待していたところであったが、第6話で大河ドラマ史上最速となる視聴率9.9%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)の1桁台を記録。

 第9話「さらばシベリア鉄道」では、映画『モテキ』『バクマン。』などのヒット作がある大根仁氏が外部演出家として初登板。「ほぼ全編をシベリア鉄道内だけのシーン」という野心作で、視聴率も9.3%→9.7%と前回より微増したが、それでも2桁に戻すことはできなかった。あるテレビ局のドラマ班ディレクターは次にように解説する。

「由緒正しい大河ドラマの歴史において、外部からディレクターを登用すること自体が前代未聞なのですが、大根さんは深夜ドラマ業界で辣腕をふるい、2011年に映画『モテキ』で大ヒットを飛ばすと、旬な役者たちから続々とラブコールを送られるほどの人気監督になりました。大河ドラマにも造詣が深く、そういう意味ではまさに適任なのですが、本来なら脚本と演出を担当し、独自の世界観を構築するのが大根監督のスタイル。宮藤さんの脚本がガッチガチに決まってる以上、それ以前の回との違いをそこまで見せることができなかったのではと思います。それよりもこの回では、中村勘九郎演じる金栗四三の突然の“キャラ変”に驚かされましたが……」

●『モテキ』大根仁の演出過多

 毎日井戸の冷水を浴び、黙々とマラソンの練習をし、「自費でオリンピックに行ってくれ」と無茶すぎる要求にも文句を言わなかった金栗。これまでの回では、かように実直で聖人君子のような描かれ方をしてきたこの主人公が、第9話にして突然のキャラ変を見せ、シベリア鉄道に同乗する外国人や仲間内にも敵意をむき出しにするというシーンに、ネット上でも戸惑いの声が上がったのだ。

「約100年前(ストックホルム五輪は1912年開催)のシベリア鉄道という劣悪な環境の中、17日間にも及ぶ長旅でストレス過多になったという設定なわけですが、それにしてもこの描写があまりにも突然すぎるというか。どう考えてもそれ以前とはキャラが違いすぎていたんです。金栗本人が綴っていた日記に同行者への悪口が書いてあったことを宮藤さんが脚本に落とし込み、こういう描写になったのだと思いますが、それを大根さんが過剰にクローズアップした感はあります。

 そもそも大根さんは、『モテキ』などでも主人公の裏の顔にクローズアップし、隠された自己顕示欲や虚栄心をむき出しにさせる演出に定評がある人。本人も撮影前に実際にシベリア鉄道に乗り、相当フラストレーションがたまったと公式サイトに綴っていますが、今回はその思いが乗っかりすぎて、少々演出過多になったのではないかという気も。ネット上でも『革新的すぎてわかりづらい』との声が多い本作ですが、第9話におけるこの演出も、一般視聴者には相当わかりづらかったのではないかと思いますね」(同・ディレクター)

●大河1話に1億円以上をかけることも

 本来の大河ドラマファンである中高齢者はすでに脱落し、一方のドラマ好きからも「わかりづらい」と酷評される始末。これでは、視聴率が回復する兆しが一向に見えない。あるスポーツ紙の芸能記者は、『いだてん』の今後をこのように分析する。

「女優・石田ひかりの夫としても知られる、『いだてん』プロデューサーの訓覇圭(くるべ・けい)氏は『子どもが観て楽しいねって思ってもらえる作品にしたい』とコメントしていましたが、大河の裏番組には、バラエティで常に視聴率No.1の『世界の果てまでイッテQ!』がある。まず、この枠で子ども向けを意識すること自体が間違ってると思うんですよ。とはいえ、スピーディーな展開と複雑な構成を中高年層がわかるはずもない。結局、自分らがおもしろいと考えるドラマ作りにしかなってないのではないかと。2つの時代にまたがって、狂言回しも若き日の古今亭志ん生と重鎮落語家の古今亭志ん生と2人いて、2人ともナレーションを担当するって、誰が理解できます? いくらなんでも革新的すぎますよね。大河ドラマにはベタな展開と安定感こそ求められるのに、それがまるでない時点でこのドラマは、間口が狭すぎます。

 また、大河ドラマの制作費は平均すれば1本5000~6000万円ともいわれていますが、回によってはがっつり億以上の予算をつぎ込むこともある。この金額をかけてこの自由奔放すぎる作風……という現状に、苦虫をかみつぶしている民放のドラマ制作者はたくさんいると聞きます。低視聴率が続くため脚本のテコ入れや、脚本家の更迭などもネットニュースでは囁かれていましたが、スポンサー不在のNHKがそんなことをするわけがない。『作品自体はおもしろいし、脚本もドラマも完成度が高い。ただ、視聴率が悪いだけ』。NHKの関係者に聞くと、それ以上でも以下でもないという雰囲気ですよ。スポンサーがいない時点で、テコ入れを強要される筋合いがまずないんです。今後も、どんな視聴者をターゲットにしているかも判然としないまま、低視聴率の記録を塗り替えていくことでしょう」

 どの世界においても、革新性やイノベーションが求められがちな現代。しかし、由緒正しき大河ドラマの世界では、“ほどほどの安定感”が求められるようだ。
(文=藤原三星)

●藤原三星(ふじわら・さんせい)
ドラマ評論家・コメンテーター・脚本家・コピーライターなど、エンタメ業界に潜伏すること15年。独自の人脈で半歩踏み込んだ芸能記事を中心に量産中。<twitter:@samsungfujiwara>

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