スーパーマーケットの米売り場には、十数種類の銘柄が陳列されていた。そのなかの数銘柄に「特A取得」の表示があった。

2月27日に日本穀物検定協会が発表した2018年産米の食味ランキングの結果に基づくものだ。

 銘柄米の通信簿ともいえる食味ランキングは、今回で48回目。18年産米の154産地品種について食味試験を行った結果、最高評価の「特A」に格付けされた銘柄数は前年産よりも12多い55となり、過去最多を記録した。注目は昨年「特A」から陥落した新潟県・魚沼の「コシヒカリ」が、1年で「特A」に返り咲いたことだ。“陥落組”では、岩手県・県南の「ひとめぼれ」など7産地の銘柄が「特A」に復帰した。

 今回、初めて「特A」に選ばれたのは9銘柄。
18年産米で本格デビューした山形県の新品種「雪若丸」は、村山と最上の2地区が初出品で「特A」を獲得した。静岡県・西部の「にこまる」と徳島県・北部の「あきさかり」は、静岡、徳島県勢初の「特A」となった。この結果、これまでの特A獲得県は42道府県となった。

 今回のランキングを県別に分析すると、特A銘柄が多いのは以下のとおり。
・4銘柄…山形、福島、新潟
・3銘柄…宮城、秋田、栃木
・2銘柄…北海道、岩手、富山、長野、岐阜、兵庫、福岡、佐賀、大分

 こうして見ると、東北勢の強さが目立つ。山形、新潟両県は昨年の2銘柄から倍増した。


●収穫量は前年より微増

 18年は米作農家にとって転換期の1年となった。減反政策が廃止され、全国、そして各地の生産がどう変化するのかに関心が集まった。18年産米の作況指数(全国平均)は98で「やや不良」。作付面積は17年の137万ヘクタールから138万6000ヘクタールと、1万6000ヘクタール増加した。

 収穫量は732万7000トンで前年の730万6000トンから若干増となった。減反廃止で作付面積は増えたものの、主産地の天候不順で供給量が絞られたことから、結果的に需給バランスは保たれた。


 今後、主食米の作付面積が増え続けるのかどうかが注目点だ。米価に影響を及ぼすだけに見過ごせない。

 産地別にみると、主食米収穫量で前年トップの北海道が低迷した。6月、7月の低温と日照不足が原因とみられ、作況指数は90と全国最低。47都道府県で唯一「不良」となった。高価格帯の主力銘柄「ゆめぴりか」の作柄がふるわなかった。
主食米の収穫量は48万9600トンと、ついに50万トンの大台を割り込んでしまった。

 北海道と毎年首位争いを演じている新潟県も、6月以降の少雨と高温に苦しんだ。作況指数は95(やや不良)と、過去10年で最低だった。作付面積は前年の10万300ヘクタールから10万4700ヘクタールに増えた。収穫量は55万6000トンで52万7600トンから2万8400トン増加した。

 主食米の収穫量トップの座は、前年の北海道から新潟県に移った。
主食米収穫量トップと食味ランキング「特A」4銘柄取得によって、米どころ新潟は日本のコメづくりの頂点に返り咲いた。

●気になる米の値段はどうなっているのか

 スーパーの店頭に戻ろう。「ゆめぴりか」は2キログラムの袋しか見当たらない。代わりに「合組」(ごうぐみ)という耳慣れない銘柄が売られている。認定基準に満たなかった「ゆめぴりか」と「ふっくりんこ」をブレンドした新たなブレンド米(「ゆめぴりか」9割・「ふっくりんこ」1割)でホクレンが18年11月、都内で開いた新米発表会でマツコ・デラックスさんがPRしていた。

 5キログラムの販売価格は2380円(税別、以下同)。
同じ売り場で見ると「特A」表示のある「岩手ふるさと米 ひとめぼれ」は2280円、同「富山県産 こしひかり」も2280円、「特A」表示のない「山形県産はえぬき」は1980円だった。「特A」の「魚沼産コシヒカリ」は別格で3180円。ブランド力の違いを見せつけた。

 農林水産省のデータで米の相対取引価格を比べてみると、18年産米の今年1月の全銘柄平均価格(玄米60キログラム)は1万5709円。もっとも高いのは「魚沼産コシヒカリ」の2万1210円で、唯一2万円を超えている。昨年は2万640円だったので、570円(2.8%)のアップだ。もっとも安いのは「佐賀県産ヒノヒカリ」で1万4271円(前年比429円アップ)だった。両者の価格差は6939円にもなる。

 ブランド銘柄米は、根強い人気に支えられ高価格を維持できる。食味コンテストで「特A」取得米の数が過去最高を更新した背景には、消費者の関心を惹くために各県の米生産関係者がブランド米づくりに必死に取り組んでいることがある。

 今後、全体のパイが縮小していくなか、毎年のように新たなブランド米が登場し、競争はますます激しくなりそうだ。
(文=山田 稔/ジャーナリスト)