『わたし、定時で帰ります。』今期最高の好感度と「なぜ定時?」のくすぶる不満

 改元の夜に放送された3話こそ視聴率6.5%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)と大きく沈んだものの、そのほかは1話9.5%、2話10.4%、4話8.4%を記録した『わたし、定時で帰ります。』(TBS系)。

 アベレージとして悪くない上に、もともとほかのドラマ枠よりターゲット層が若い『火曜ドラマ』は録画やネットでの視聴傾向が高いだけに、十分なスタートを切ったのではないか。

 さらにSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)での反応も好意的なものが多数を占めているが、気になるのは熱狂的な支持の声が少ないこと。働き方改革の是非が叫ばれるなか、時流に合ったテーマに挑みながらも、どこか物足りなさを感じてしまうのは、なぜなのか。

●好感度は最高ランクのヒロイン

 好意的な声が多い最大の理由は、主人公である東山結衣(吉高由里子)のキャラクター。仕事はしっかりこなしつつ、毎日定時で帰り、行きつけの中華料理店でハッピーアワーの安いビールを飲み、恋人との時間も大切にしている。つまり、“普通の感覚”を持つ32歳の女性であり、視聴者にとっては共感しやすいキャラクターなのだ。

 どう見ても好感度が高く、残業を繰り返す同僚たちとの対比は、おのずと鮮明になる。連ドラは、刑事、医師、弁護士などの専門職が多いなか、普通のOLという身近な職業設定もあって、最初から応援したくなるムードが漂っていた。

 ただ、そんな好感度の高い主人公の仕事や人生にフィーチャーしていくと思いきや、ここまでのメインは同僚たちのエピソード。1話は「仕事命」の皆勤賞女・三谷佳菜子(シシド・カフカ)、2話は育休から復帰して張り切りすぎる賤ヶ岳八重(内田有紀)、3話は「辞めようかな」が口グセでSNSトラブルを起こした来栖泰斗(泉澤祐希)、4話は要領が悪く会社に棲み着く吾妻徹(柄本時生)が事実上の主役となっていた。

 結衣は彼ら“プチモンスター社員”に振り回されながらも、影響を与えて問題を解決していくのだが、その方法は良く言えば「穏やかで優しいもの」であり、悪く言えば「地味でインパクトに欠けるもの」が多い。

 たとえば4話のラストでは、結衣が「やりたいことがないから」という理由で残業をしている吾妻に、「私たちには給料日がある。私はそれを楽しみにして生きてるよ。意外とみんなそんなもんじゃない?」「やりたいことって大きな夢とか目標じゃなくても、自分が楽しめることだったらなんだっていいんじゃないかな」と声をかけることで改心させるシーンがあった。これを見て「いいこと言った」と感心するか、「それだけで変われる?」と首をかしげるか、紙一重ではないか。

 好感度が高い上に、穏やかで優しい結末を見せることで、ほっこりとした気持ちにさせてくれる半面、「こうなるだろう」と予想がつきやすい予定調和型の物語にも見える。

●「なぜ定時で帰れる?」はっきりしない不満

 もうひとつ見逃せないのは、「なぜ結衣は定時で帰れるのか?」「どんな効率のいい仕事ぶりなのか?」という疑問。世のOLたちにしてみれば、「その方法を教えてほしい」のに、ここまではしっかり見せてくれなかったのだ。

 しかし、5月7日放送の4話では、ついに「定時で帰る」ための方法が紹介された。残業を減らしたい吾妻から仕事効率アップの方法を相談された結衣のアドバイスは、「デスクの整理整頓をする」「ToDoリストを作成する」「所要時間を設定して、時間内に課題を終えるよう集中する」の3つ。

 当然ながら、この程度では「結衣が毎日定時で帰れる」という説得力にはつながらない。業務の進め方から、スキルの習得方法、社内外の人々とのコミュニケーションまで、まだまだ見せられるものがあるだろう。ここで大切なのは、「原作小説にそうしたノウハウがあるかどうか」ではなく、「なければ脚本化の際に加える」というスタンス。視聴者が求めている限りやるべきであり、そうした原作の補強がドラマ化成功につながっていくものだ。

 最後まで、結衣が定時で帰れる理由の説得力がないままでは、単なる“できるOLの物語”になってしまう。どこか「仏作って魂入れず」のイメージが漂っているのは、「タイトルやテーマの担保が不十分だから」ではないか。

●終盤は重いムードの物語にも期待

 次回5話のテーマは、セクハラの境界線。派遣デザイナーの宮(清水くるみ)がクライアントからセクハラまがいの行為をされたことで、結衣が解決に動き出すが……という展開が予告されている。おそらく「セクハラをどうとらえたらいいか?」「どこまでがセーフで、どこからがアウトなのか?」などを考えさせられるエピソードになるだろう。

 今後、中盤から終盤に向けて、どんなテーマが選ばれ、結衣はどうアプローチしていくのか? いずれにしてもそれらが、どこにでもある一般企業の話だけに、身近であると同時にシビアでもある。

 ここまでは重くなりがちなエピソードもポップに描くことで、いい意味での気軽さを感じさせているが、最後までそれは変わらないのか。それとも終盤は、目を背けたくなるような重いムードに変わるのか。後者なら、これまでの好意的な声が熱狂的なものに一変するはずだ。
(文=木村隆志/テレビ・ドラマ解説者、コラムニスト)

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