窪田正孝が主演を務める連続テレビドラマ『ラジエーションハウス~放射線科の診断レポート~』(フジテレビ系)の第6話が13日に放送され、平均視聴率は自己最高の13.2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)だったことがわかった。前回からは2.4ポイントのアップで、折り返しを迎えて支持を集めていることがうかがえる。



 一方、平均視聴率15%を超える好調なスタートを切った天海祐希が主演を務める連ドラ『緊急取調室 第3シーズン』(テレビ朝日系)は、9日放送の第5話が13.7%だった。『ラジエーションハウス』が『緊急取調室』を逆転し、今クールの連ドラで1位に浮上する可能性が出てきた。

『ラジエーションハウス』は、レントゲンやCTで病変を写し出す放射線技師・五十嵐唯織(窪田)が「病の写真家」として、目には見えない患者の病気を見つけ出し、命を救っていく医療ドラマだ。第6話は、画像診断装置で患者の体の中を透かして見ながら治療を行う「IVR(画像下治療)」がテーマとなった。

 IVRは通常の手術に比べてはるかに傷口が小さくて済むため患者への負担が少なく、出血もごくわずかで済む。傷跡もほとんど目立たない。
一見するといいことずくめのように思えるが、症例によってはリスクも生じる。今回のエピソードでは、「できればIVRで治療したかったが断念して開腹手術せざるを得なかった例」と「IVRに成功した例」の両方を通して、命を救うために奮闘する医師や放射線技師らの姿を描いた。

 本作はほとんどの回で、あまり周知されていない医療知識を視聴者にわかりやすく教えてくれており、今回も「IVRという治療法があること」と「IVRが万能ではないこと」をバランスよく描いていた。医療ドラマとして非常にマジメな姿勢であり、評価に値する。

 それでいて、人間ドラマとしても面白かった。特に今回は、五十嵐がひたすら思いを寄せる放射線科医・甘春杏(本田翼)と、五十嵐の天敵である診療部長・鏑木安富(浅野和之)の2人を掘り下げることで、視聴者に新鮮な驚きを与えることに成功した。


 回が進むにつれて薄れてきたものの、基本的に甘春は上から目線で技師を見下すようなキャラクターとして登場していた。だが実際には、優れた医師だった父と自分の技量のなさを比較してコンプレックスを抱いており、自分にまったく自信を持てずにいた。ところが、この第6話では五十嵐を筆頭に技師らが一丸となって彼女をサポートし、難しいIVRを見事に成功させた。甘春がすれ違いざまに五十嵐とハイタッチをしたシーンは、2人の関係が新たな局面に入ることを予感させる。

 五十嵐と甘春は幼なじみであり、同じ思い出を共有しているはずだが、これまでのところ昔の記憶を持っているのは五十嵐だけ。甘春は五十嵐のことを何ひとつ覚えていないらしい。
視聴者からは「記憶喪失か若年性健忘症としか考えられない」との声もあるが、だとすれば甘春が記憶を取り戻す日が来るのだろうか。それとも、記憶を取り戻さずに、純粋に現在の五十嵐に心をひかれていくような展開が待っているのだろうか。今後の展開が気になる。

 一方、いつも偉そうな態度で技師たちに命令し、特に五十嵐をクビにするための口実をいつも探しているイヤミな医師・鏑木の違った一面が描かれたのも興味深かった。彼は現院長の大森渚(和久井映見)を追い落として自分が院長の座に就きたいと考えているくらいだから、善人かといえばそうではない。

 だが、傷口が目立たないことよりも確実に命を救える手段を選ぶべきだとして開腹手術を選ぶ冷静な判断や、いったん緊急連絡が入ればエロそうな美女と大好きなカキを投げ出してでも病院に駆け付ける職務への忠実さは、医師としては有能であることをうかがわせる。
さらには、自身が取材に協力した書籍のなかで暗に放射線技師たちを「医師を支える陰の存在」としてたたえており、決して五十嵐たちの働きを軽んじているわけではないことが明らかになった。

 「いやな奴だと思われていた登場人物が実はいい人だった」という展開はありがちではあるが、心地よい驚きが得られたのも事実だ。素直に「鏑木には彼なりの信念があるのだろう」と思うことができ、今後鏑木と技師たちとの関係がどのように変化するのか楽しみになった。2人の医師を通して物語に変化が生まれたことで、後半に向けてますます弾みがつきそうだ。
(文=吉川織部/ドラマウォッチャー)