勤労統計、再集計後も18年の常用雇用指数に不自然な断層

●賃金よりも常用雇用のほうが大きく修正された再集計値

 厚生労働省では、毎月勤労統計を不適切に調査していたことから、統計に大きなずれが生じていた。そのため、同省は1月23日に2012年以降の再集計値を発表している。

 毎月勤労統計は、働く人の一人当たりの平均賃金や労働時間などを調べ、500人以上の事業所はすべて調べていることになっていたが、2004年から東京都分は3分の1しか調べていなかった。このため、中小企業に比べて賃金の高い大企業が抜け落ち、これまで公表してきた名目賃金は実際より過少だったことから、2018年の賃金の伸びは下方修正されることになる。

 事実、1月23日に公表された毎月勤労統計の再集計値によれば、2018年の名目・実質賃金の伸びが、それぞれ前年比+1.7%→+1.3%、+0.6%→+0.2%と▲0.3%ポイント下方修正された。しかし、それ以上に常用雇用指数が同+1.5%→+1.1%と▲0.4%ポイントも下方修正されていることがわかる。

●常用雇用指数に不自然な断層

 実は、常用雇用指数が大きく下方修正された背景には、2018年のサンプル替えのタイミングで生じた指数の断層が大きく拡大したことがある。

 こうしたサンプル替えに伴う断層を見るのに、もっともわかりやすい指標としては、雇用・労働時間・賃金の各指数等の主要系列について原数値と併せて公表される季節調整値がある。雇用や賃金等が前月と比べて増えたか減ったかを見るとき、それが例年のパターンなのか経済実態を反映した動向なのかを見分ける必要がある。そのため、季節調整値ではこのような例年のパターンを取り除いて、直接前期のデータと比較できる。

 実際、季節調整値で最近の毎月勤労統計の動きを見ると、賃金指数については名目も実質も従来の値と再集計値の間に大きな差がなく、名目賃金は緩やか上昇トレンド、実質賃金は横ばいで推移していることがわかる。

 ただし、常用雇用指数は再集計値で2018年1月に大きな段差が出来ており、常用雇用の実態を必ずしも正確に反映してない可能性がある。特に、アベノミクスがより重視をしているとされる総賃金で考えた場合、毎月勤労統計では2018年1月以降に常用雇用指数が下振れしている傾向にあり、家計所得動向を把握する上では問題があるといえる。

●2018年の総賃金を過小評価する毎月勤労統計

 こうした点を補うため、総務省が公表している「労働力調査」を見てみよう。労働力調査は、一定の統計上の抽出方法に基づき選定された全国約4万世帯を対象に、我が国の就業状況を安定的に捉えることを目的としている。一般的には失業率を計測する統計と認知されているが、常用以外も含んだ雇用者数の実数を調べていることから、毎月勤労統計の常用雇用指数よりも雇用の実態をあらわしていると見られており、GDP速報の雇用者報酬を推計する際にも重視されている。

 そこで、労働力調査の「雇用者数」の動きを見ると、2017年は毎月勤労統計の「常用雇用指数」と同様に増加基調にあったことがわかる。しかし、2018年以降は常用雇用指数のような不自然な段差はまったく生じていないことがわかる。同じグラフで比較すると、毎月勤労統計の「常用雇用指数」はサンプル替えの2018年1月で不自然な断層が生じていることがわかる。

 賃金の実勢を判断するには、雇用者数の増加が押し下げに作用してしまう従業員の平均賃金だけでなく、従業員の平均賃金に従業員数を乗じた「総賃金」も合わせてみることが重要である。幸いにもこの点では、マクロの「総賃金」を示すGDP速報の「雇用者報酬」が従業員数を労働力調査の雇用者数メインで推計しているため、大きな問題は生じない可能性が高い。

 しかし、毎月勤労統計の常用雇用指数ではサンプル替えのあった2018年1月から断層が生じていることからすれば、今回の毎月勤労統計の再集計値に基づいて、総賃金を過少に評価すべきではないと思われる。
(文=永濱利廣/第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト)

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