山崎製パン、「イーストフード・乳化剤不使用」表記に異議…「添加物=悪」見直し機運も

 スーパーマーケットなどで食パンを選ぼうとすると、パッケージに「イーストフード・乳化剤不使用」と書かれていることがある。食パン売り場に、「下記は、乳化剤・イーストフード不使用の商品です」として、商品名が列記されていることもある。これを見ると、イーストフードや乳化剤は体に良くないのか、と受け取ってしまう。

 こうした状況に真っ向から異議を唱えたのは、業界大手の山崎製パンである。3月26日に「『イーストフード、乳化剤不使用』等の強調表示について」というメッセージを発した。

 イーストフードとは何か、そこから引用しよう。

「イーストフードとは、パン酵母(イースト)の栄養源として働くなど、発酵を助ける添加物の一括名です。パン酵母の活動が活性化されることにより、パンの風味や香り、食感、ボリューム感、ソフトさなどが向上し、安定して品質の良いパンをつくることが可能になります」

 同メッセージには、「イーストフードや乳化剤は、国際的に安全性が公認され、国が科学的根拠をもってその安全性を評価している食品添加物です」とあり、その根拠が詳しく解説されている。

そして「イーストフード、乳化剤不使用」の表示のあるパンも実は、イーストフードや乳化剤と同等の機能を持つ物質で代替されており、イーストフードや乳化剤を使ってつくられたパンと差があるものではないことが指摘されている。

 山崎製パンの発したメッセージに関して、ある自治体の食品安全行政関係者はこう語る。

「消費者団体の一部は『すべてを表示したほうが良い』と主張し、企業からは正反対の意見が出ている状況です。食品添加物は、食品メーカー等が厚生労働大臣に許可申請をしますが、そこでは有効性をはじめ多くの項目についてデータで示す必要があります。それを受けて、大丈夫な物質のみを食品安全委員会が、発がん性をはじめ多くに毒性試験結果から安全性を評価し、安全だと判断されたものを厚労大臣が基準値等の規格を決めて許可をします。基準値が設定された物質については、都道府県・政令市等の食品衛生監視員が監視をし、衛生研究所や保健所で科学的な検査をしています。
 
 山崎製パンの件ですが、同社がコメントをしている内容は、まったくその通りだと思います。乳化剤やイーストフードを使用している商品も、代替品を使用している商品も、厚生労働省の許可をしている添加物を使用していれば安全性は両方共に大丈夫だと考えられます。

 山崎製パンが、食品添加物として許可されているものを使用しているのに、根拠もなく、同業他社がことさらに『体に良くないものは使用していません』という宣伝・表示に対して納得いかなかったという主張をすることは、理解できます。昔からそうですが、食品添加物は危ないと根拠もなく週刊誌や一部の新聞で煽る傾向があります。根拠があれば言論の自由ですが、困っています。ある科学雑誌に出たということで騒ぎ立てる人たちがいますが、その後にその論文の内容が否定されたにもかかわらず、いつまでも根拠として煽ることが多くてとても残念です」

●「食品添加物は、食品安全委員会が安全性を評価」

イーストフードや乳化剤が有害だとの具体的な指摘があるのか探してみたが、インターネット上で個人が運営していると思われるサイトに、そのような意見が散見された。それらについて、山崎製パン広報に質してみた。
 
 ネット上には、イーストフードは海外では禁止されているという記述があるが、これはどうなのだろうか。

「ネット上の記述については、情報の出所や根拠等について調べようもなく、当社ではお答えをいたしかねます。なお、『イーストフード』という一括名が使用されているのは日本だけです。また、食品表示法で『イーストフード』という一括名が使用されている食品添加物は18種類あります。食品添加物は、食品安全委員会が安全性を評価し、厚生労働省が食品安全委員会の評価結果を受けて使用基準を定めており、科学的根拠に基づいて評価、管理され、安全性が確保されています」

 イーストフードという名称が使われているのが日本だけなら、海外で禁止されているということはないのだろう。イーストフードという一括名が認められている18種類のなかには、塩化アンモニウムがある。塩化アンモニウムをウサギに2グラム投与したところ10分後に死亡したという記述が、あるサイトでは見られた。

「ご質問のネット上の記述は、情報の出所や根拠等について調べようもなく、当社ではお答えをいたしかねます」

 個人レベルで運営されているサイトでの記述なので、確かに確かめようがない。山崎製パンが上記メッセージを発信したにもかかわらず、他社の「イーストフード、乳化剤不使用」の表示は続いている。スーパーマーケットでは、値札の部分にまで同様の表示がされていることもある。今後の対策は考えられているのだろうか。

「現在、日本パン工業会並びに日本パン公正取引協議会において、お客様に誤認を与える恐れのある『イーストフード、乳化剤不使用』等の強調表示をしないための自主基準作りを検討しています」

 山崎製パンの売上高を見ると右肩上がりだ。他社の「イーストフード、乳化剤不使用」等の強調表示によって影響を受けているとは見受けられない。なぜ、メッセージを発したのだろうか。

「『イーストフード、乳化剤不使用』等の強調表示が消費者に誤解を与える恐れがある表示であり、パン業界として適切な添加物表示のあり方を考える必要があることから、ホームページ上で当社の見解を表明するとともに、現在、日本パン工業会並びに日本パン公正取引協議会において、お客様に誤認を与える恐れのある『イーストフード、乳化剤不使用』等の強調表示をしないための自主基準作りを検討しています」

 パッケージで「イーストフード、乳化剤不使用」と強調しているパンにしても、イーストフードや乳化剤が有害だと書いているわけではない。だが「素材にこだわる」などの言葉が並べられると、あたかもそれらが有害であるかのようなイメージを与えられてしまう。

 こうした手法は、他業種の広告などでも見ることがある。消費者は賢い判断をしなければならない。
(文=編集部)

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