【前編】で述べたスンリ事件の延長線上に、ほかの事件が浮かび上がった。2019年3月、スンリと親交が深い芸能人、チョン・ジュニョンが、相手の同意なくセックス動画を撮影し、カカオトーク内の知人とのグループで共有していたという事件が発覚したのだ。
「事件の中心となったチョン・ジュニョンは、以前にもガールフレンドと撮影した映像を流布させ問題となったことがありました。しかし、事件後に特別な謝罪や長期の自粛期間もなし。ほどなくして、普通に芸能活動を再開しました。
公開された彼らのトーク内容は、人々の想像を超越していた。自分たちの名声を利用して、女性を次々と標的にしていたのだ。その一部始終は、さながら獲物を狙う「狩り」のようでもあった。芸能人はその気になれば簡単に異性と出会うことができる。テレビを通じてつくられた虚構のイメージが、一般人には大きな魅力として作用する。チョン・ジュニョンとその友人たちは、性犯罪に対する感受性は失っていたが、自分たちがどれだけ大きな“魅力”を持っているかは自覚していた。
彼らは自分たちの魅力をもって欲望を発散するだけにとどまらず、新型麻薬である「ムルポン」(GHB)を利用して、女性に性的暴行まで加えていた。ムルポンは、水や飲料水に混ぜるとニオイもしない。暴行された女性たちは芸能人を恐れ、性的暴行の事実を明かすことも難しい。彼らはその“韓国社会の力学”も理解していた。悪事を働く際には、非常に頭がキレるのだ。
●力を得たアイドルたちは、必然的に暴走する
性犯罪を含む、アイドルたちによる犯罪の発生は、ある程度予想し得るものでもある。
「アイドルが力を得たときにどのように行動すべきか、大人になったときに社会とどう折り合いをつけて生きていくのか。
●ビックバンが所属するYGは“薬局”
ちなみに、韓国大手芸能事務所のひとつで、歌手のパク・チニョン氏が運営するプロダクション「JYP」は、事件や事故を起こさないことで有名だ。パク・チニョンは自身が教育する練習生たちに、性教育や倫理教育を徹底させる。業界ではこれまでその様子が不思議がられていたが、最終的にJYPとパク・チニョンは勝者となった。
身体は大人なのに、頭や心は子どものまま。一方で、企業や視聴者もそんな“頭の幼い”芸能人を「美や富の象徴」としてもてはやす。結果、アイドルや芸能人は勘違いするしかない。
(取材・執筆=Dan Ryu【韓国紙記者】、翻訳・構成=河鐘基)