ズレながら重なりあういくつもの可能性世界

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『隣接界 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)』クリストファー プリースト 早川書房

 クリストファー・プリーストは、もはやSF作家というより現代英文学を代表する小説家のひとりといったほうがいいだろう。とはいえ、SFの道具箱(アイデアやガジェット)を顧みなくなった後期のJ・G・バラードとは異なり、プリーストは外形的に見てSFと呼べる作品を書きつづけている。ただ、その扱いがジャンルSFとは異なり、現代文学のテーマや技法によっているのだ。『隣接界』は、そのプリーストの特長がいかんなく発揮された傑作である。

 プリーストは世界の外に立って設定を説明したりせず、その世界内の限定された視点で語っていく。第一部「グレート・ブリテン・イスラム共和国(IRGB)」は、時代が近未来、主人公は写真家ティボー・タラントである。彼はトルコから船でイギリスへ戻ってきたところだ。リンカンシャーにあるウォーンズ・ファームと呼ばれる海外救援局(OOR)の施設で、任務報告の会議に出席せよとの指示を受け、役人がつきそっている(監視している?)ため、自由な行動ができない。いわれるがまま人員運搬車(おそらく軍務用)に乗せられ、移動と宿泊を繰り返す。

 そのうちにわかってくるのだが、この未来ではひとが自分の意志で自由に旅行ができる状況ではないようなのだ。かたや異常気象のため人間が住める地域が限定されていること、もういっぽうで戦争状態にあるらしいこと。「らしい」と曖昧ないいかたしかできないのは、視点人物であるティボーが事態を把握していないからだ。彼に限ったことではなく、ほとんどの人間が世界でなにが起こっているかを知らない。


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