きらめく青春小説にして、時間と現実と創作とをめぐる問い直し

きらめく青春小説にして、時間と現実と創作とをめぐる問い直し
『エンタングル:ガール (創元日本SF叢書)』高島 雄哉 東京創元社

 サンライズ製作のSFアニメ『ゼーガペイン』のスピンオフ小説。ヒロインの守凪了子(カミナギリョーコ)、彼女の幼なじみ十凍京(ソゴルキョウ)は共通だが、小説版オリジナルの主要キャラクターも多く登場し、背景となる設定もいっそう深く練られている。

 物語中盤までは燦めく青春小説だ。舞浜南高校へ進学した了子は、子どものころから志していた映画監督への第一歩として映画研究部に入部する。初対面の部長、河能亨(カノウトオル)からいきなり「きみは映画監督になれない」と言われて面食らうものの(河能の発言は了子を侮辱する調子ではなく、のちにこの世界の成りたちに関わっていることが明らかになる)、その後は、部内外の協力を得てほぼ順調に自分の映画製作をつづけていく。了子が映画の題材に選んだのは、舞浜南高校に伝わる七不思議だ。

 映画製作のスタッフのなかでとくに頼りになるのは、撮影機器を自作しAI搭載のドローンを自在に操る天才、深谷天音(二年生)と、小説やシナリオの新人賞をいくつも獲っている飛山千帆(三年生)である。しかし、天音と千帆のあいだには確執があるようで、了子はギクシャクした空気をなんとかしようとするのだが事情を知らない下級生ゆえ、ふたりのあいだに踏みこめない。こうした青春期特有の距離感がとりにくい人間関係も、この物語の大切な要素だ。

 いっぽう、自主映画の製作は青春小説におあつらえむきの題材というだけではなく、SF的(あるいは思索的)テーマとも深く結びついているのだ。了子たちが撮影した映像は、天音が構築したVR書斎で編集をおこなう。そこで了子と天音はフィルムを手に取って、こんなやりとりをする。


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