達人ミネット・ウォルターズの性格劇『カメレオンの影』

達人ミネット・ウォルターズの性格劇『カメレオンの影』
『カメレオンの影 (創元推理文庫)』ミネット・ウォルターズ,成川 裕子 東京創元社

 ミステリーの興趣は性格喜劇、もしくは悲劇のそれにつながる。
 そのことを天下に再周知したのがミネット・ウォルターズという作家だ。

 強欲や好色など人間のある側面を取り上げ、そのことによって人生が左右されるさまを描くのが性格劇である。同じ題材でも演じようによって喜劇にも悲劇にもなる。だから本来の意味でのキャラクター小説とは、登場人物の性格が内容を決定づける主因になっているもののことを言うのである。ウォルターズの小説はまさにそれ。この人物はいったい何者なのか、という関心だけでどんな長い物語でも読ませてしまう。このたび翻訳された『カメレオンの影』はそのウォルターズが2007年に発表した長篇だ。

 中心にいるのはチャールズ・アクランドという若い軍人である。冒頭に置かれるのは、元国防相所属の文官であった老人が、自宅で撲殺されたという新聞記事だ。それに続く「八週間後」という短い章で、チャールズ・アクランドがどうなったかが語られる。彼はイラクで偵察任務に就いている最中に敵の攻撃を受け、車輛を爆破される。同乗していた二人の部下は死亡、彼は頭部と顔面に重度の損傷を負い、最終的には左眼を失うことになる。

 アクランドが目覚める場面から物語は実質的には始まる。重傷ではあったものの彼の体力回復は早く、勝手にベッドから降り立ってしまうようなこともあった。やがて、アクランドが時折極めて暴力的な反応を示すことが問題になる。見舞いに来た母親の手をねじり上げるなど、そうした反応の対象は女性に限定されていた。「八週間後」では、精神科医として彼を担当するロバート・ウィリスの視点と、「いや、だめだ。誰であれ、女は信用できない」と意識がまだ混濁しているうちから思考することもあったアクランド自身の視点とが綯い交ぜられながら叙述が進んでいく。


あわせて読みたい

BOOKSTANDの記事をもっと見る

トピックス

今日の主要ニュース 国内の主要ニュース 海外の主要ニュース 芸能の主要ニュース スポーツの主要ニュース トレンドの主要ニュース おもしろの主要ニュース コラムの主要ニュース 特集・インタビューの主要ニュース

ライフスタイルニュースアクセスランキング

ライフスタイルランキングをもっと見る

コメントランキング

コメントランキングをもっと見る
2020年5月21日のライフスタイル記事

キーワード一覧

このカテゴリーについて

生活雑貨、グルメ、DIY、生活に役立つ裏技術を紹介。

通知(Web Push)について

Web Pushは、エキサイトニュースを開いていない状態でも、事件事故などの速報ニュースや読まれている芸能トピックなど、関心の高い話題をお届けする機能です。 登録方法や通知を解除する方法はこちら。