『人喰いワニ ジャイアント・クロコダイル』
1978年制作・タイ・92分
監督/ダイ・ション・ボー、アン・ピー・リー
脚本/ダイ・ション・ボー
出演/バイ・ション・ダイ、チョー・ウォン・チェン、ボー・ディー・ヤー、アン・リーほか
原題『チョラケー』
中国題『鰐魚大災難』
英題『GIANT CROCODILE BLOODY DESTROYER』
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今年も夏休みのテレビ映画は、季節モノとして多くのサメ映画がオンエアされた。今も昔もサメ映画は生物パニック映画の王道なのだが、その陰で地道に作られているのがワニ映画。
そこで当コラムは数回に渡り、世界各国の珍作ワニ映画を筆者が飽きるまで紹介しようと思う。その第1弾は、ワニ映画史上最大の巨大ワニが登場するタイ映画だ。作品は未だディスク化されず、中古ビデオ屋で7000円も吹っ掛けられたVHSビデオは貴重だ。ジャケットに記してある「血にうえた巨大なワニが、次々と人間を襲う!! 手が足がもぎとられ、鮮血が飛び散る! 地獄のスペクタル巨編!」というキャッチコピーは今回に限って嘘偽りなし! もはや地上波テレビでは放送不可能な残酷ワニ地獄を紹介しよう!
作品はオープニングから驚かされる。「ウルトラマン・シリーズ」では番組の頭にタイトルロゴが表示されるまで凝った映像が流れるが、本作の冒頭で『ウルトラマンタロウ』と『ウルトラマンエース』のソレを編集で繋いだものが流れ出し「え?」と戸惑っていると、最後にドーンと出た「チャイヨー」の文字に2度ビックリ。
導入部も衝撃的だ。大海原に巨大なキノコ雲が浮かび、ナレーションが「原爆が落とされ第二次世界大戦が終了し、人類に平和が戻った」(おいおい)。そして死の灰は広島・長崎からタイの熱帯雨林まで届き、「核爆弾の大気汚染で生物が変化してしまう。
巨大化したワニ(20メートル以上はある作り物)は、「ウモ~」と鳴いている水牛(本物)の頭をくわえて巨大な顎を上下にバクバク。次になぜか3メートルくらいになったワニは「ガーガー」鳴いて必死に逃げるアヒル(本物)の群れを追いかけ、背中に乗って遊んでいた猿(本物)を飲み込み、ついにパタヤビーチで人間を食う! 家族を3人殺された医師アンカン(主人公)は、病院を辞めて弟と共に復讐を誓う。今回この巨大ワニに名前が欲しい筆者は、子供の時に作ったプラモデル「海底怪獣ワニゴン」(日東科学、定価200円)から拝借して勝手にワニゴンと呼ぶ。
川沿いの家に漁師の父親が小舟で戻ってくるのを見た息子が「父ちゃんが帰ってきたよ~」。
川沿いで人々が食事したり喫煙したりと思い思いに過ごしている。そこへ「バシャーッ」と大量の水がブッ掛かり、続けて巨大な尾(実物大)が彼らを薙ぎ倒す。ここは30メートル級の怪獣サイズだ。
果物や食器などで溢れた川面で人々がひしめき合い必死にもがいている。するとワニゴンの巨体が水中に渦巻を発生させ、その中に数人が捉われグルグルと洗濯機状態! 入れ食い状態のワニゴンは人間をバクバク噛み殺し、血に染まった真っ赤な水中に食い散らかされた夥しい数の人の手足が沈んでいく。他の生物パニック映画ではお目に掛かったことがない、凄惨なタイ式大殺戮ショーだ。
ラストは捕鯨用の銛とマシンガンを装備した船で、アンカン兄弟がワニゴン退治に挑む。
3メートルから30メートルとワニゴンのサイズが場面ごとで違うのは、予算削減のためチャイヨープロが制作した他作品からワニのフッテージを流用したためだが、それにしても大雑把すぎる(苦笑)。この作品後にチャイヨープロは、米合作映画『クロコダイルVSジョーズ』が企画倒れになるが、ちゃんとアサイラムが『メガ・シャークVSクロコザウルス』(10年)を制作しているので、気になった方は観てみよう。
(文/天野ミチヒロ)