哲学者や教育者、文学者や経営者......あらゆる分野において、偉大な足跡を残してきた古今東西の先人たち。同時に彼ら、彼女たちは、自らの生き様や信念から生まれた言葉の数々をも残しています。

 本書『哲人・文豪・偉人 哲学の名言』では、釈迦や老子、ソクラテスにはじまり、織田信長、松下幸之助など、総勢50名の先人たちの名言を読み解き、その言葉が生まれた背景についても解説がなされていきます。

 早速、どのような名言が紹介されているのか、少しみてみましょう。

 まずは、日本有数の機械工業メーカー、二輪車の世界的ブランドである、本田技研工業(ホンダ)の創業者・本田宗一郎(1906~1991)。本田宗一郎は、「需要があるから○○をつくるのでは本当の意味でのメーカーとはいえない」という考えを根底に持ち、「今ある需要に乗っかるのではなく、未知の需要をつくりだすことを重視」した、いわば開拓者たるスタンスを貫いた人物。

 本書で注目する、その本田が残した名言とは「芸術でも技術でも、いい仕事をするには、女のことが分かってないとダメなんじゃないかな」というもの。この意味するところを、本書では次のように解釈しています。

「新しいものづくりでキーになる存在は『人』にほかなりません。ホンダは機械製品をつくるメーカーですが、製品をつくるのも、使うのも機械ではありません。生身の人間です。だからこそ、クリエイティブな仕事をするうえで、最も大切なのは人の情けを知ること。恋愛を経験したことがない人、自分にしか関心がない人に良い仕事はできないと考えたのは、誰よりも人にこだわり、人を見てきた本田ならではといえるかもしれません」(本書より)

 そして、このホンダのエンジンを搭載するマシンに乗り活躍したのは、F1レーサー、アイルトン・セナ・ダ・シルバ(1960~1994)。ブラジルの国民的英雄・セナが残した言葉のなかには、「この世に生を受けたこと、それ自体が最大のチャンス」というものがあるといいます。

「セナのことばには、毎日が可能性に満ちあふれていることを教えてくれます。昨日の失敗は今日取り返せばいいし、明日にはもっと良いことが起きるかもしれない。生きていることそのものがチャンスであれば、大抵の不幸はやり過ごせるもの。だから最も大切なことは、生き続けることなのかもしれません」(本書より)

 時を超えても色褪せることなく、後世に生きる私たちの心にも響く名言の数々。自身がいま抱えている悩みに寄り添ってくれる一言に出合えるかもしれません。