昨年大騒ぎになり、国会においても取り沙汰された食品偽装問題。使用していない高級食材をメニューには記載し、一部の老舗レストランやホテルが全面的に謝罪するハメになったことは記憶に新しい。
消費者庁としては消費者団体の突き上げや主張によって「正確な名称、誰もが納得できる正しい表示をするべき」として進めようとしている。例えば……
●パック入りのジュースを「搾りたてフレッシュジュース」と表示不可。搾りたてではないのだから。ちなみに「フレッシュ」はギリギリOK。
●加工したプレス肉を「ステーキ」と表示するな。1枚肉を焼いた料理が「ステーキ」。
●ロブスターを「伊勢エビ」と表示するな。もともと異なる種の海老だから。
●冷凍マグロの刺身を「鮮魚」と表示するな。あまつさえ「漁港直送」などと新鮮さを売りにしてはならない。
と、様々な議論を重ねてガイドライン作りに励んでいる。ここまでは納得できる。
しかし、今まで慣れ親しんできているお弁当屋の「シャケ弁」を、サケを使用していないから表示不可と言うのは如何だろうか? たしかに「シャケ弁」のサケに主に使われているのは「サーモントラウト(ニジマス)」であり、一般的な「白鮭(シロザケ)」を使用している弁当屋は数少ないだろう。コンビニ弁当やホカ弁では、そのほとんどが「サーモントラウト」であろう。
サーモントラウト弁の違和感しかしだ…。日本語においてサケとマスの違いは、実に曖昧な基準なのだ。
釣りの大会としてはハワイ沖でのマーリンのトローリングに匹敵する世界的な規模を誇り、日本人の釣り自慢たちもこぞって参加するカナダのキングサーモン釣りは有名だが、このキングサーモンも日本名だとマスノスケだ。
青森県の十和田湖のヒメマスをご存知の方もいらっしゃるだろうが、このヒメマスが海に下ると紅ザケになる。
だから「シャケ弁」はこのままでいいんじゃないの? もう慣れちゃってるし。表示変更しなくても、怒る人もいない気がしますけどね。
ちなみに「サーモントラウト」は、英語名だと「レインボートラウト」。
もうひとつ、ちなみにニジマスが海に降りて育ったものはアメリカでは「スティールヘッド」と呼びます。日本では元々、自然界にニジマスがいなかったので海に下ったものを呼ぶ言葉がないようですが……。
(文・旅人世五郎)
オススメ食材:『お弁当サイズの肉厚ふっくら銀鮭切り落し2kg [訳あり](食探七福神)