>>>前編より

やしきたかじん人気は東西で温度差あり

「惜しい人を亡くしました」
 通夜振る舞いのタダ飯タダ酒を貪りながら交わされがちな型通りのセリフ。でも、そんなに世の中「惜しい人」ばかりですか?
 今年、1月7日。

やしきたかじんの死去が公表された際の、マスコミの騒ぎっぷりにも違和感を覚えました。まずこの訃報を、全国区のニュースとして取り上げる意味がわからない。大阪界隈では絶大な人気があるが、その他の大多数の地域の人間にしてみれば、「やしきたかじんって、何してる人?」程度のもんですよ。
 関西芸人は、やしきたかじんといえばすぐに「♪やっぱ、すっきゃね~ん」と歌い出すが、オリコン60位の曲だし、誰もが歌えるほどに知名度は高くないはず。
 司会やコメンテイターとしても、たびたびトラブルを起こす面倒くさい人だったのに、それが死んだ途端に「歯に衣着せぬ切れ味鋭いコメント」としたマスコミの報道はちゃんちゃらおかしい。

 2011年8月、サッカー元日本代表の松田直樹が急性心筋梗塞で亡くなったときも、耳触りのいい言葉ばかりが棺の周りを埋め尽くした。


 しかし、彼が生前はトラブルの多い選手だったことは常識だ。判定に納得がいかないと、「やるよ? やっちゃうよ?」と審判を恫喝。退場を食らえば、腹いせにキャプテンマークを叩きつける。その目つきは、スポーツ選手よりもチーマー上がりの半グレに近かった。
 そんな素行の悪さも「闘志あふれる」という言葉で美化するのだから、死んだことが便利なリセットボタンとして使われているようだ。

死んだことで神格化するファンやマスコミ

 ときには、死んだことをきっかけに「神格化」されてしまう人も。

いわゆる“再評価”というやつだ。代表的なところが夏目雅子。確かに、美人女優ではある。ただ、それ以上でもそれ以下でもない。役者としては、いまひとつパッとしなかった。
 それを証拠に彼女を振り返る映像には、カネボウ「クッキーフェイス」のCMか、ドラマ『西遊記』の袈裟姿ばかりが使われる。
享年27歳、白血病という死に様が、悲劇のヒロイン像を作り上げただけな気がしてならない。

 享年43歳、日航機墜落事故で亡くなった坂本九。享年21歳、撮影所で戯れに乗っていたゴーカートで激突死した赤木圭一郎。芸能界以外なら、黎明期の日本プロ野球を支えながらも、度重なる徴兵によって体を壊し、屋久島沖で戦死した沢村栄治なども、夏目雅子同様、衝撃的な死に方に目を付けたファンやマスコミが、存在自体を神格化してしまったのだ。

 存在が物語化されるといえば、かの坂本龍馬もドラマと実像の間にはかなりの隔たりがある。「歴史を変えた維新の志士」としてヒーロー扱いされているが、実際のところは、金に目が眩んで大量殺戮兵器を輸入した武器商人、とも解釈することができる。


 龍馬の仲介によって薩長が手を結んだように思われがちなのも、司馬遼太郎の空想小説『竜馬がゆく』が作り上げたフィクションでしかない。『竜馬がゆく』以前、歴史のなかに坂本龍馬の名などほとんど出ることはなかった。
 人はみな、病も事故も戦争もない茶の間でのん気に感動できる「物語」が大好きなのだ。都合のいいように物語を作り、ともすればそれを史実にしてしまう。再評価など、その程度のものでしかない。

(文・編集部)

オススメCD:『たかじん やっぱ好きやねん ‐シングル・コレクション‐』(ビクターエンタテインメント)/やしきたかじん