SMAPの謝罪会見をみたよ:ロマン優光連載49

ロマン優光のさよなら、くまさん

連載第49回　SMAPの謝罪会見をみたよ

　まあね、見ちゃいましたよ、スマスマ。「わー、嫌なもの見ちゃったなー。」という感想以外でてこないですな。

実在するかどうかわからない番組宛ての不自然なメッセージが読み上げられた後に登場してきた白ネクタイ締めたキムタクの顔。なんだか得意気に見えてムカつく。それに比べて、つよしもしんごちゃんも稲垣メンバーも中居くんも、葬式みたいな黒ネクタイを締め死んだような目で表情は凍りき、処刑される前の囚人のよう。西山アナはなんだかブルブル震えてるし。こんなものを見せられて「うわー！　木村くんのおかげでみんな仲直りだー！　やったー！」とか思うバカな人は世の中に存在するのでしょうか。多分いないと思います。普通に考えて木村はイヤな奴、4人がかわいそう、ジャニーズ怖い、という感想しかでてこないですよね。バイクでやってきた森くんがキムタクを跳ね飛ばして、4人を早く助けてくれたらいいのにと本気で思いそうなぐらい不快で残酷な放送でした。SMAPを襲った残虐な運命とキムタクの変わり果てた姿に、森口博子もジョギング中の森脇健児もきっと泣いていたことでしょう。キムタクの「長年お世話になったI女史とメンバーを保身のために裏切って権力にすり寄り、SMAP独立計画を頓挫させた卑劣な男」というイメージを解消するために行われたとしたら大失敗、よけいにキムタクのイメージが悪くなったと思うし、このシナリオを書いた人は無能と呼ばれても仕方ないでしょう。
　気に食わないI女史に向かって「SMAPごと出て行け！」というような発言を先にしたのはメリーさんなのに、いざ独立しようとすると完全に潰しにかかる。ほんとに恐ろしいやり方です。独立して妨害工作されるよりも、飼い殺しにされ奴隷同然に扱われる方が本人たちは苦しいでしょうね。SMAPごと独立だったらなんとかなったかもしれないのに、キムタクの裏切りで全てがご破産になってしまったわけですが、これが工藤静香がキムタクに入れ知恵したためだという噂があります。工藤さんは芸能人だからジャニーズ事務所の恐ろしさも知っているし、主婦の立場としては安定した収入が望ましいわけで、選択としては間違ってはないし責められるようなことでもないのですが、好感はあまり持てないですよね。普通に考えて貯蓄だって充分ありそうなもんだし、独立したからといって明日から路頭に迷うわけでもないわけで、やってこうと思えばやってけますもんね。メリーさんが現役で権力を振るえるのなんて年齢からいって、そんな長い期間ではないと思います。メリーさんが引退すれば、ジャニーズ事務所内で分裂や造反が起こったり、芸能界全体での地図の書き換えが起こるのは必至です。一足先に独立して、I女史と共にその時まで持ちこたえれば色々と変わってきたのではないでしょうか。関ヶ原の戦いで最も貢献したうちの一人が西軍から東軍に裏切った小早川秀秋なんですが、関ヶ原後は世間に後ろ指さされつつ、よくわかんない若死にをして家は無くなっちゃいました。東軍側について功績があり優遇された武将たちも徳川家が代替わりしたとたんに潰されたりしてるわけで。メリーさんが現役の時は優遇してもらえそうだけど、それはあくまでメリーさんとの関係でしかない可能性もあるし、代替わりしたらキムタクの扱いがどうなるかなんて知れたもんじゃないと思いますよ。ジュリーさんがかわいがってる子飼いの子たちはたくさんいるんですから、上が詰まってては困りますからな。
　私はあのスマスマは事態の沈静化、キムタクのイメージ改善のために放送されたのではないような気がしています。あれは事務所内の人間に対して「逆らったらこんな目にあわせるぞ」という見せしめを行うことが一つ、芸能界に向けてつよし、しんごちゃん、稲垣メンバー、中居くんに対する回状を回すというのが一つ、その2つが目的でしかなかったのではないかなあと。視聴者の方に全く向けてないんだと思います。業界に対して権力を誇示するための放送。権力による度を超えた粛正は人々に恐怖を与え従順さを生むかもしれませんが、秘められた反感は育っていきます。存在的な敵を増やす行為です。

ファンが離れることはないが…

　今回のことで一番損をするのは誰なんでしょう。

ジャニーズでもアイドルとして現役バリバリの人たちには取りあえず影響はないと思います。この人たちのファンにしてみれば、ジャニーズがどうこうより、好きな気持ちの方が大切だからです。離れる人とかあまりいないでしょう。ファンがいる以上、テレビ局も大切に扱います。キムタク以外のSMAPの4人はどうでしょう？　確かにこれから悲惨な目に合わせられるかもしれません。でも腐らずに耐えていれば、時間の経過と共に状況が変わって、助けてくれる人も増え、また中央に出る機会もあるでしょう。スターでなくても芸能界の中で好きな仕事を好きにできる日がくるかもしれません。しんごちゃんが40前のおっさんにもなって未だにしんごちゃんと呼ばれてしまう感じというか、演技にもバラエティーにも対応できてない感じなのは不安がありますが、それは今回のこととは関係ないことなので仕方ないですね。メリーさんたちのいいなりにこんな番組を放送してしまったフジテレビには批判がつきまとうでしょうけど、いまさらなんであまり変わらないかもしれません。キムタクはどうでしょう？　まあ、人から良い風には思われないですよね。どう言い繕うと裏切り者は裏切り者ですもの。他の4人と仕事をして好感を持っていた人たちからは反感を買うのは仕方がないんじゃないですか。人間関係のしがらみの中で苦渋の決断をしたという風にとってあげれたらいいのですけど、あの顔を見たらそう思う人はあまりいませんよね。勝利者然とした得意気で少しにやつき気味の顔と偉そうな態度。他のメンバーに対する惻隠の情も全く感じられない。実際のところ、本人はそんな気なんのかもしれませんよ。でも、テレビというのは恐ろしいもので、そう見えちゃったら、それが真実として流通しちゃうものなんですよね。実際に人を車で跳ねるより、テレビの画面で卑しい表情を見せるほうがよっぽどイメージダウンなんです。これを払底するのは大変じゃないですかね。メリーさんが健在のうちは貢献者として優遇されるかもしれないですけど、その庇護が無くなった後に、視聴者からも悪印象持たれてるような人間をテレビが使うでしょうか。ジャニーズ内に変わりはいくらでもいるし、新体制のジャニーズはそちらを推していきたいというのは当たり前のことです。お金は困らないと思いますけど、人気者であることに人一倍こだわりのあるナルシストがそうなった時に耐えられるのでしょうか？　結局、あの放送で一番損をするのは実際に顔を出して不快感の象徴になってしまったキムタクのような気がしています。
　今回の件、芸能界はやくざ体質だという風に言うむきがあり、実際間違ってはないと思うのですが、一般の社会でもこれと同じような構造の出来事はわりとよく起こってるのではないでしょうか。やくざや芸能界が生々しい形でそれを表出させてるだけで、よりソフティケイトされた形で、会社だったり、お店だったり、学校だったり、趣味の集まりだったりで同じような出来事を行われてるのではないでしょうか。ようするに他人事ではなくて怖いって話です。

＜隔週金曜連載＞

【ロマン優光：プロフィール】

ろまんゆうこう…ロマンポルシェ。のディレイ担当。「プンクボイ」名義で、ハードコア活動も行っており、『蠅の王、ソドムの市、その他全て』（Less Than TV）が絶賛発売中。代表的な著書として、『日本人の99.9%はバカ』（コアマガジン刊）『音楽家残酷物語』（ひよこ書房刊）などがある。少女閣下のインターナショナルの里咲りさに夢中らしい。

おすすめ書籍：「日本人の99.9％はバカ」／ロマン優光（コア新書）
http://books.rakuten.co.jp/rb/13104590/

おすすめCD:『蠅の王、ソドムの市、その他全て』／PUNKUBOI（Less Than TV）
http://books.rakuten.co.jp/rb/13292302/

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