吉田豪のインタビューをまとめた単行本『シン・人間コク宝』が絶賛発売中。今回はその発売を記念して、著者の吉田豪に逆インタビューを敢行。

本のあとがきのような感じで読んでいただければ幸いである。【前編記事】

「ブス」という単語にドキッ!

—今作で8作目ですが、人選に変化は?

 そりゃあ相当ありますよ、初期に比べたら。もともと内田裕也ファミリー完全制覇がテーマだったから、男臭さ重視かつ前科者もOKってルールでやってて、でもその頃から楳図かずお先生とかROLLYさんとか、そういう意味での濃さも含めた人選ではあったんですよね。それが童貞をこじらせたような漫画家さんの取材が増えてきた頃から、コクがあるならヤリチンでも童貞でもOKって感じになって、さらには性別関係ない方向にシフトしてきているけど、このシフトは正解だったと思う。コクがあればどういう方向性でもいいという路線になっていったからいまでも続いているわけで。バイオレントな人だけだったらネタも尽きて、最近の時流にも合わないし、確実に怒られるような内容の本になっていたはずなので。

—シフトする前であろう、10年くらい前の轟二郎回とジャイアント吉田回も掲載されてますが。

 当時の取材相手の中では比較的常識的なはずの2人のインタビューをいま読み直したら、スリリングすぎてビックリしましたよ! やっぱり時代の変化って凄いね。2人ともナチュラルに「ブス」という単語を使っていて(笑)。いまその言葉を見るだけでもドキッとするもんね。

—それじゃ本題に。トップバッターは川添象郎さん。

 文化的な家庭で育ったちゃんとしたプロデューサーのはずなのに薬物とか拳銃不法所持とか一番アウトな話をしている気がする(笑)。しかし、この連載の裏テーマは「拳銃密輸」だね。最近取材した尾藤イサオさんとか、おじいちゃんたちは拳銃密輸しがちで、昔は本当に飛行機でも持ち物のチェックが緩かったんだなということがよくわかる。

—同時期に『CONTINUE』でも川添さんに取材されてましたが。

 『CONTINUE』は平和な話、こっちは物騒な話に分けようと思ってたんだけど、どっちも物騒な話になってた(笑)。会社の若い衆をボコボコにしたら逮捕されそうになって海外に高飛びするという話が載っているのが『CONTINUE』なので、そっちも必読です!

—次は高知東生さん。

 いろいろあった人だけど、Twitterも面白いし話してみたいなと思っていたら、いま高知さんをサポートしている依存症問題専門家の田中紀子さんも同席してて、まさかの「吉田さんに取材を受けるのが私たちの目標だったんです」という(笑)。珍しいくらいに喜ばれたんだよね。凄く感謝されて、「ウチの夫がファンだから一緒に写真撮ってください!」って旦那さんも登場するという。お母さんがヤクザの情婦でみたいな高知さんの大変な人生についても聞いてるけど、それは著書『生き直す』を読んだほうがよくて、そうじゃないこぼれた高知さん話が面白かった。嶋大輔さんとの喧嘩が立体的になる話とか、嶋さんサイドとは見解が違う面白さがある。

—で岡崎二朗さん。

 その後、息子さんが違う形で話題になったんだけどね(笑)。この時も、息子さんには会ったことがあるから話を振りたかったんだけど、それができないぐらいに話しまくる人だった。

—もともと怖いことで有名だったんですか?

 それはもう! Vシネマが一番怖かった時代のパーティーで、いつも場を仕切っていたし。真樹先生絡みのパーティーでもよく会う人という印象。ヘアヌードの脱がせ屋・高須(基仁)さんが「芸能界で一番強いのは岡崎二朗!」と言ってたほどで、だからこそ一度話を聞きたいと思ってたら、千葉真一さんの訃報直後だったこともあって千葉ちゃんのエピソードが中心にはなって。千葉ちゃんの愛すべきデタラメさが伝わる感じにはなってると思う。

—千葉真一にインタビューしたことはあるんですか?

 1回だけ『ダ・カーポ』でやった。相当過去資料を調べて、千葉ちゃんに余計なことしか訊かないインタビューをして。「若い頃の記事で『ずっと体操に夢中だった。だから毎日夢精していた』ってあったんですけど、本当ですか?」って訊いたら、「そうなんだよねぇ~。いまでもするよぉ~」って(笑)。取材後に千葉ちゃんに「この後時間ありますか~?」って言われて、終わった後2時間くらい千葉ちゃんの映画に関するいろんな野望の話を聞いたよ。

『戦国自衛隊』の続編の話とか、「カメラがこうきたら! こう!」みたいな話を熱く語り続けて。わかりやすいくらいの〝映画バカ〟。悪い言葉で言うと、そういう夢を見すぎていろんな詐欺みたいな案件に引っかかる人。アントニオ猪木に近いんだと思う。そんな千葉ちゃんの猪木っぷりがよくわかるインタビューになってます。

昔の不良と今のアウトロー

—続いて横浜銀蝿・翔さん。

 これきっかけでいろんなことが動いたインタビューですね。亡くなったさんは取材したことがあるけど翔さんは再結成後にグループとして取材しただけだったから、じっくり話を聞きつつ90年前後の翔さんのバラエティ能力の高さを絶賛したら、翔さんに謎のスイッチが入って、「Johnny(銀蝿のギタリストであり、銀蝿消滅後はキングレコードの偉い人)に頼んで番組作ってもらおうかなー。そしたら吉田さんもゲストで呼んで」とか言ってると思ったら、すぐに翔さんとテレビ神奈川でレギュラー番組をやることが決まって。Johnnyさんがボクの衣装を持ったり、Johnnyさんが収録のキュー出しをしたりするのが不思議でしょうがなかった(笑)。さらには当時旦那さんとゴタゴタしていた華原朋美がゲストで来て、その旦那の前で翔さんに「ヒゲ触っていいですか」「ハグしていいですか」ってウットリしちゃって(笑)。さらにはその取材の後、ボクは小室哲哉の取材で。トモちゃんと小室哲哉のはしごという惑星直列みたいな貴重な経験をすることになったのも忘れられないですね。

—銀蝿一家の嶋大輔さん。

 嶋さんも面白かったね。事前にNG事項もあって、やりづらいのかなと思ったら、なんでも話してくれて。事務所をやめるきっかけとなる話は初めてちゃんとしたみたいだったけど、要はとあるバンドがなぜか事務所を占拠していて、嶋さんの荷物を勝手に出されて、嶋さんがカチンときたという。そのバンドはチェッカーズなんだけど。このインタビューでは名前を伏せてて、てっきりチェッカーズ側が触れてない歴史なのかと思ったら、藤井フミヤが『ロッキン・オン・ジャパン』の2万字インタビューで話してたからここでバラします! いろんな謎が解けるんだよね。あの時のユタカプロという事務所はもともとアイドルバンドを扱うバンド版ジャニーズ事務所みたいなのを目指していて、ベイ・シティ・ローラーズみたいなグループを作っていた。となると、チェッカーズが引っかかるに決まってるんだよね。ベイ・シティ・ローラーズみたいなチェック衣装で、不良だけど可愛いヴィジュアルのバンドで、ちょうど所属事務所と揉めている(笑)。うちが囲えー! みたいになったんだろうね。そこで事務所が揺らいだせいで銀蝿一家が崩壊に至ったんだろうなって思う。

—リアルアウトローD・Oさん。

 アウトロー的なキャラクターを前面に出すとどれくらい大変なのかっていうことがよくわかるインタビュー。嶋さんもそれに近いよね。あの不良キャラで世間に出たせいで、ひたすらケンカを売られ続ける恐ろしい話(笑)。その現代版&ハードコア版がD・Oさんで。もっと早めにインタビューするはずだったのが、タイミング合わなくて次号にしようとしたら、その次号までの間に収監されちゃったんだよね。ようやく実現できて良かったです。

後編記事「吉田豪が語る『シン・人間コク宝』あとがきインタビュー【後編】」はこちら

構成/編集部写真/『シン・人間コク宝』(コアマガジン)初出/『実話BUNKAタブー』2023年7月号