終末期医療を「自己決定」させるのは、誰のためか?

終末期医療を「自己決定」させるのは、誰のためか?

 怖れていた事態が起きた。公立福生病院での、透析中止「自己決定」事件である。女性患者(44歳)が病院側から継続か中止かの二択を示されて、人工透析をやめることに同意、文書に署名した後も、死の直前まで迷い続けた。同意を翻そうかと夫にも語った。夫が見た最後の携帯画面には、「おとうさん、たすけて」という意味にとれる悲痛な最後のメッセージが残されていた。


■終末期医療の抑制のため

 女性が文書への署名を求められたのは、他の病院から紹介されて診療を受けた初日だったという。この先、初診時に終末期の医療についての同意書を文書で求める診療機関や、入所時に同じく同意書をとる施設は増えそうだ。厚労省は、終末医療を自己決定するためのACPことアドバンスケアプランニング(事前ケア計画 Advance Care Planning)に、「人生会議」という愛称を付けてこれから全国に展開する予定だ。少し前まで「事前指示書」と呼ばれていた。「自己決定」と言いながら、その実、終末期医療の抑制のためである。「人生会議」とは、最近流行りのことばでいえば、「共同意思決定」、生き死にについてわいわいがやがやみんなで話し合って決めることをいうのだそうだ。だがその中で当事者が周囲の意思を忖度したり、声の大きいひとに引きずられたりすることはないだろうか。


「尊厳ある生」が送れなくなったらいっそ死なせてくれという人は多い。「尊厳ある生」と「尊厳なき生」との境界線はどこか? 排便・排尿は「尊厳」のメルクマール、他人に下の世話を頼まなければならなくなったら、いっそのこと、と言うひともいる。だが排泄介助を受けるぐらいで、死ぬ理由にはならない。認知症になったら死んだほうがましという人もいる。だが認知症になっても機嫌よく生きている高齢者だっている。


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