反体制の「正義」の矛盾をあぶりだした山本薩夫!――春日太一の木曜邦画劇場

反体制の「正義」の矛盾をあぶりだした山本薩夫!――春日太一の木曜邦画劇場

 高校時代の下校時によく立ち寄った高田馬場のレンタルビデオ店の話を少し前に紹介した。その店はこだわりのラインナップを取り揃えており、なかなかにマニアックな作品に出会うことができた。


 この店の日本映画のスペースは旧作も充実していたのだが、その中で独立したコーナーを設けられていた監督は、一人だけだった。それは黒澤明でも小津安二郎でもなく――なぜか、山本薩夫だった。


 作風は一貫して反体制。だからといって思想信条を前面に出すような作り方はしなかった。観客を楽しませることを第一とし、背景に批判精神を巧みに盛り込んだのだ。


 そのため、左翼系の監督では珍しく、『白い巨塔』『忍びの者』『戦争と人間』『華麗なる一族』――と、メジャー会社の大作映画も数多く撮っていた。そんな魅力を、高田馬場のレンタル店で教わった。


 今回取り上げる『天狗党』も、山本薩夫らしい作品といえる。ビデオがあまり出回っていない上に名画座でかかる機会も少なかったため、当時は観ることができないでいた。


 舞台は江戸末期。貧しい百姓たちを救済する「世直し」のために筑波を中心に決起した天狗党の顛末が描かれる。


 序盤は主人公の百姓・仙太郎(仲代達矢)の復讐譚。仙太郎は飢饉のため年貢の減免を代官所に願い出るが、そのために重い仕置きを受け、村を追放されてしまう。怒った仙太郎は江戸で剣法の修行を積み帰郷、酷い目に遭わせた親分を討ち果してのける。


 アクションあり恋模様ありの娯楽満載の展開に、全身から強烈な怒りを放つ仲代のカッコよさもあいまって、実に快調なスタート。楽しみながら物語に引き込まれる。


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