女性性に注目が集まるなか、百合マンガが人気を集めている。そもそも1970年代に、『薔薇族』の編集長が男性同性愛者を指す“薔薇族”の対義語として提唱したとされる“百合族”だが、現在の“百合”が意味するところは少し違うようだ。多様化の時代に花開いた百合マンガの今に迫った。

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■花開く百合マンガ市場。少年誌や青年誌にも進出
近年、ドラマや映画といったエンターテインメントの領域で、女性同士の恋愛を描いた作品が目立つ。昨年12月には百合SFの特集が組まれた『SFマガジン』2月号に予約が殺到し、異例の出版前重版に踏み切った。それに先駆けて良作を生みだし続け、いままさに花開こうとしているのが百合マンガの世界だ。
その勢いは少年誌や青年誌にも飛び火。『月刊コミック電撃大王』連載の『 やがて君になる 』(仲谷鳰)はシリーズ累計85万部のスマッシュヒット。書泉の古川航貴さんは、「ここ2年で百合マンガの棚が0から5つに増えました」と語り、元々は専門レーベルを持っていなかった出版社も次々に市場に参戦。アニメイト池袋本店の三枝謙介さんは、「最近は新規タイトルが増え、2年前は余裕があった百合棚3棚もいつの間にか全タイトル出しきれなくなりました」と嬉しい悲鳴をあげる。
ブームを支えるのは、現在刊行中の唯一の専門誌『コミック百合姫』。その創刊は2005年に遡り、合併や隔月刊を経て16年に月刊化している。同誌の梅澤佳奈子編集長が、ターニングポイントとして挙げるのは、11年に百合レーベルの作品として初めてアニメ化された『 ゆるゆり 』(なもり)。現在のブームについては、次のように捉えているという。