アクセンチュアは、企業がイノベーションを推進する上で、テクノロジー活用がもたらす潜在的な価値と実際に得られた価値の乖離を理解することを目的に、日本を含む20カ国、20の業界における8,300社以上を対象に調査を行いました。

同調査「Full Value. Full Stop. How to scale innovation and achieve full value with Future Systems」は、アクセンチュアがこれまで実施した企業のIT活用状況調査の中で最大規模であり、クラウドやアナリティクスなどのほか、人工知能(AI)やブロックチェーン、拡張現実などの新興テクノロジーも調査対象となっています。

調査では、「テクノロジーの導入状況」、「テクノロジーの活用度」、「組織文化への浸透度」の3点それぞれに関して企業のスコアを算出し、上位10%を先行企業、下位25%を出遅れ企業と定義しました。

出遅れ企業は2023年には46%の増収の機会が失われる恐れ

これによると、2015年から2023年(予測値)の業績評価指標に基づいて、テクノロジー活用と業績との関係を分析した結果、先行企業は出遅れ企業に比べて2倍以上の収益成長率を実現できていることが判明しました。

また、2018年に限って見ると、出遅れ企業は年間で15%の増収の機会を逸しており、テクノロジーの活用方法を変えない限り、2023年には46%の増収の機会が失われる恐れがあることがわかりました。

テクノロジー活用で先行する企業の収益成長率、出遅れた企業の2倍に上ると判明

アクセンチュアでテクノロジーサービスの最高責任者を務めるバスカー・ゴーシュ(Bhaskar Ghosh)氏は次のように述べています。

「多くの経営幹部が新興テクノロジーに膨大な投資を行っている中、必ずしも全ての企業が、投資に見合ったイノベーションの恩恵を享受できているわけではありません。出遅れ企業はイノベーション推進に向けた戦略を立てずにテクノロジーを導入した結果、部分的な恩恵しか得られず、競合他社に後れを取っています。今回の調査によって、世界的な先進企業は境界線がなく、適応力を持ち、人間との調和が可能なシステムの構築に積極的な投資を行い、イノベーション創出や業績、顧客への提供価値を高めていることが明らかになりました」

先行企業は人間とマシンの協働で新たな価値を生み出すべく、次世代のシステム構築

先行企業は、パートナー企業とのエコシステムを通じて相互連携を図りつつ、人間とマシンの協働によって新たな価値を生み出すべく、次世代のシステム構築に取り組んでいます。

今回の調査では、こうしたシステムの特長を以下の通り定義しています。

  • 境界線がないシステム:先行企業は、ITシステム間、企業間、人間とマシンの間にある境界線を取り払うことで、アイデアやパートナーシップの活性化を図っています。
  • 適応力に長けたシステム:先行企業では、自律的な学習と改善、ならびに環境変化への順応が可能なシステムを構築することで、ビジネス成長を妨げる摩擦を取り除き、従業員の迅速かつ的確な意思決定に貢献しています。
  • 人間と調和するシステム:先行企業は、人間との自然な対話や、見聞きしたことの理解が可能なシステムを構築することで、人間とマシンとの違和感のないやり取りを可能にし、自社の優位性を高めています。

同調査によって、先行企業は全社規模でのテクノロジー導入と組織変革に関して、以下の特徴的な考え方を持っていることが明らかになりました。多くの場合、これらは出遅れ企業とは全く対照的なものです。

  • 俊敏性と柔軟性をもたらすテクノロジーの導入:98%の先行企業ではAIを導入しているのに対し、出遅れ企業での導入率は42%に留まっています。また先行企業では、データ、インフラストラクチャ、アプリケーションなどを機能ごとに切り分けるソリューションを採用している割合も高く、97%がDevSecOps(セキュリティを考慮したDevOps)、マイクロサービス、コンテナのいずれかを導入しており、出遅れ企業の30%を大きく上回っています。
  • クラウドの活用:先行企業は、AIやアナリティクスなどのテクノロジーを効果的に利用するために、他社よりもはるかに積極的にクラウド活用を進めています。先行企業の95%が「イノベーションの源泉としてクラウドを捉えている」のに対し、同じ考え方を持つ出遅れ企業は30%に留まっています。
  • 資産としてのデータ管理:先行企業の90%が、信ぴょう性や公平性に欠ける可能性のあるデータに依存しないよう、データ品質を確保するための対策を講じています。先行企業の94%は「ビジネスを推進する上で、自社のデータが十分な信頼性を担保している」と考えており、出遅れ企業の64%を大きく上回っています。
  • 組織全体でのテクノロジー投資の管理:先行企業は、IT部門と他部門との垣根を取り払うことで、組織全体の連携体制を強化しています。
  • 人材スキルの向上:先行企業の73%が従業員に対して体験型学習プログラムを提供しており、この割合は出遅れ企業(24%)の3倍近くに及びます。個々のスキルにあわせた学習プログラムの提供、従業員のスキル向上に対するニーズ予測、従業員のスキル要件とトレーニング内容とのマッチングといった分野において、AIや高度なアナリティクスを利用している割合は、先行企業が87%であるのに対し、出遅れ企業はわずか35%でした。

バスカー・ゴーシュ氏は次のように述べています。

「企業は、単に個々のソリューションとしてテクノロジーを導入するのではなく、自社が構築すべきシステムの全体像を描くことで、収益と利益それぞれにおいて他社をしのぐ成長を遂げることが可能になります。そのためには、境界線がなく、適応力を持ち、人間と調和が可能なシステムの全体像を描くことから始める必要があります。

さらに、従業員がためらうことなく新しいことに挑戦し、型破りなアイデアを躊躇なく発言できる環境を整えることで、学習および成長を促すことも肝要です。成功に終わりはない中で、企業はイノベーションの創出に向け、こうした取り組みを通じて競争優位性を高め、テクノロジーの潜在的価値を引き出すことが求められています」

【出典】アクセンチュア最新調査――テクノロジー活用で先行する企業の収益成長率は、出遅れた企業の2倍に上ることが判明