a round bottle of woman's fragrance via Shutterstock

嗅覚は、人の記憶と密接に結びついています。

誰でも、思いがけない瞬間に、ふとした匂いで、覚えていたことすら忘れていたようなこと、人、場面が鮮やかに心に蘇った経験があるのではないでしょうか。

別れた恋人、亡くなった人、今はもう会えない人の匂いを、懐かしく思い返したことがある人も多いはず。

人の匂いを再現する技術

そういう「その人自身の匂い」を再現して香水にしてくれる会社が、もうすぐフランスに誕生します。

この事業を思いついたのは、カティア・アパラトゥギさん。7年前、父親を亡くし、その匂いを懐かしく思い返すことの多かったある日、同じ理由で、亡くなった父親の枕カバーを洗う気がしないという母親の言葉を聞いたのが、アイディアの生まれるきっかけだったそうです。

すでに保険会社でビジネスウーマンとして活躍していたカティアさんは、この思いつきを形にすべく、孤軍奮闘。7年の月日を費やし、ようやく得られたのが、ル・アーヴル大学の専門部門の協力でした。

そうして、研究の結果、その人が身につけた布1枚があれば、そこからその人の匂いを再現できる技術が開発されました。詳しくは"企業秘密"ということだそうですが、もう少し具体的に説明すると、布から約50以上の分子からなる「匂い」を分離させ、それをアルコールに溶かして香水として再現するものだそうで、全工程に約4日かかるそうです。

この技術を駆使する会社「Kalain(キャラン)」は、今年9月半ばに立ち上がります。

そばにいてほしい人の香りの効果

亡くなった人を思い出すよすがに、というのはもちろんのことですが、それ以外にも、両親と離れた乳幼児のタオルに、お母さんの匂いをつければ、安心させることができるでしょう。

大人だって、遠距離恋愛の彼の香りを枕につけておけば、熟睡できるかもしれません。

まだ詳細は決まっていませんが、ひとり分の匂いの再現にかかる費用は、約560ユーロと見積もられています。

これを高いと見るか、安いと見るかは、どのくらいその匂いに愛着があるかで変わってきそうです。

もしかしたら、近い将来、バレンタイン・デーには、恋人同士が自分の匂いをプレゼントし合うのが、スタンダードになるかもしれません。いずれにせよ、今後の展開が楽しみな分野です。

KalainLe Parisien ]

(冠ゆき)

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