ビジネスシーンでの手土産選びには、さまざまなセンスが求められます。そのときにピタっとはまるものをセレクトし、相手の心を動かすことができるか否か。
それは、ビジネスセンスを磨く上でも、とても重要な要素です。

この連載では、わたしが実際に普段から手土産にしている品、また、脳内手土産リストに書き留めている逸品を、贈るシーンも想定しながらご紹介しています。

小さいからこそセンスが問われる「ちょっとした」手土産

手土産を贈るシーンはじつにさまざまです。なかでもとくにセレクトの難易度が高いのは、少人数相手に手土産が殺到しそうな場合や、大荷物であろう相手に印象的なものを渡したい場合など、コンパクトさが求められるシーン。
伝わるものまで小さく軽くならないように、より意思のあるセレクトが必要となってきます。

そんなシーンでわたしがよくチョイスしていたのは、上質なショコラの小箱。

ただ、どうしても「今回はショコラじゃない」というときもあり、脳内を必死で捜索し、ぐるぐるとデパ地下を歩き回ったことも。「もっと透明感があって、色もあって、ときめくような......」

ところが、その漠然としたイメージでしかなかったお菓子が、存在していたのです。それは、「水の都」で260年の歴史を持つ老舗和菓子屋の新商品でした。

水の都から生まれた、唯一無二のお菓子「みずのいろ」

銀色の細字で「みずのいろ」とだけ書かれた白い箱。

深くかぶった蓋を開けると、1枚ずつ大切に大切にクッション台に立てられて、その姿を現します。光がやわらかく透けて、まるで磨りガラスのオブジェのよう。

「みずのいろ」1,080円(税込)。5色それぞれ2枚ずつで10枚入り。日持ちがするので、先に手土産の予定があるなら、チャンスを逃さず購入しておくのが吉。

本来、水は無色透明ですが、空の青色、山を装う木々の色...さまざまな景色や季節を映し、その色を変えていく水の色を、鮮やかな5色で表現しているのだそうです。

お菓子の種類としては、寒天に砂糖や水飴などを加えて固めた伝統的な和菓子、干錦玉(ほしきんぎょく)。呼び名はいくつかあり、琥珀羹と言う名でピンとくる人もいるでしょうか。


通常は型に流し込んで固めてからカットしたり、花形などに型抜きされたりする干錦玉を、手作業で極力薄く伸ばし、水滴のような形に仕上げています。

わたし、京都に行くと必ず買って帰るほど干錦玉が好きなのですが、これほど薄く、角のないものに出合ったのは初めてでした。

自然の色合いを表現した5色それぞれの風味付けには、なんとハーブが使用されているのだとか。そっと1枚つまんで小さくかじれば、シャリっと軽やかな食感の後に、ほのかなフレーバーが広がります。スペアミントを使用しているグリーンは本当にスーッとするんですよ。

色によって味が変わるということの少ない和菓子の世界において、色ごとに自然素材の風味を感じられるという部分も、とても革新的ですよね。

美しさと新しさの背景には、老舗和菓子屋の職人ありフレーバーに使用されているハーブは、ピンクがハイビスカス&ローズヒップ、オレンジがオレンジピール、イエローがカモミール、グリーンがスペアミント、ブルーがバタフライ・ピー。

「みずのいろ」を作るのは、宝暦5年(1755年)に美濃国、大垣城下町にて創業した『御菓子つちや』。
代表銘菓の「柿羊羹」は、岐阜県特産の「堂上蜂屋柿」の濃密な甘みに注目した四代目により創製。この「柿羊羹」に代表される"自然がはぐくむ上品で極上の甘み"、それらを活かした本物の味を届けたいという思いでお菓子をつくり続けてきたそうです。

そうして「水の都」と呼ばれるほどに豊富な地下水を有する町で自然味に思いを託し、長い歴史を歩んできた『御菓子つちや』が、自信を持って世に送り出した新しいお菓子が、この「みずのいろ」なのです。

その希少性も手土産の付加価値に

「みずのいろ」は、職人が丹精こめて一枚ずつ手作りしています。

そのため、まさに自在に姿を変える水のごとく2つとして同じ形のものがなく、非常に手間と技術を要するため、予約のみでの販売となっています。
さらに繊細なお菓子のため基本的に発送はしておらず、受け取りは店頭のみ。予約をしてから約10日待って店頭まで迎えにいき、やっと手にすることができるのです。

ところが、じつは東京で、しかも予約もせずに購入できるパターンが存在します。それは、百貨店などの催事に「御菓子つちや」が出店するタイミング。
わたしも出合いは東京でした。

偶然に催事で見つけ、真っ白な長方形の箱を初めて手にしたと思ったら、気づいたときにはドキドキしながらレジに並んでいました。
とくに「柿羊羹」が主役として上京してくる秋は、東京で「みずのいろ」に出合える可能性が高まる季節でもあります。

わたしも、デザイン関連や飲食関連の仕事など、五感に訴えかけるような仕事をしている人、モノの背景にあるストーリーを大事にする人に贈りたいと思いを馳せながら、次に東京で出合えるそのときを楽しみにしている1人。

品物に出合ってから、近々贈りものをしたい相手がいないか考える。なんだか順番が逆なようですが、「みずのいろ」の場合は特別。それもありだと思っています。

御菓子つちや(俵町本店)

住所:岐阜県大垣市俵町39番地
電話:0584-78-2111(代)
営業:8:30~19:30
※取り扱い店舗:岐阜県内に、工場直売店も含めて7店舗。都内では催事などで販売。オンラインショップあり(「みずのいろ」は発送不可)

撮影/さくらい しょうこ

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