かつて私もそのザ・中間管理職でしたので、その空気感はいまだにリアルな実感として理解できるところです。働き方改革イコール残業削減、長時間労働撲滅、無駄な仕事を減らそう、という考え方は少し安直なのかもしれません。
沢渡あまね著『働く人改革』 より、働き「方」ではなく、働く「人」に視点を置いた生産性アップのポイントをご紹介します。
働く人改革の大事な要素は主体性主体性。働く人改革に取り組む上で、はずせない大事な要素です。働く人の主体性が高い職場は、みんなイキイキしていますし、誇りを持って仕事に取り組んでいます。
逆を言えば、主体性のない職場はみんなモチベーションも低く、仕事へのやりがいも誇りも生まれません。働き方改革=残業を減らせば解決......とならないのはそこにあります。中略
1. 目標・ゴールに対する意識付けがなされているか?
2. 権限委譲ができているか?
3. 三つの承認欲求が満たされているか?
4. 無理に「ワクワク」させようとしていないか?24~25ページより引用
チャレンジ精神が旺盛であったり、意欲がある人材ほど、主体性が与えられない状況にフラストレーションを感じ、モチベーションを下げ、そしてある日突然会社を辞めてしまうと著者はいいます。淡々と決められた仕事だけをしていて満足できるタイプであれば、それでよいのかもしれませんが、多くの優秀な人材にとっては、その仕事に主体性があるかないかは重要なポイントといえるでしょう。
メンバーの主体性を認め、力を発揮できる職場環境を整えるためには、4つの考え方が大切であると著者はいいます。特に、承認欲求にはいろいろな種類がありますが、主体性を生むには「結果」「行動」「存在」といった三種類の承認欲求が大切であるようです。
やったことを認めてほしい、振る舞いやプロセスを認めてほしい、自分の存在を認めてほしい。それは誰もが願う、基本的な欲求なのかもしれません。このようなポイントを少し意識するだけでも、チームの主体性を育むことができそうです。
働く人改革に必要なのはネガティブを「減らす」こと人はポジティブな仕事ならいくらやっても苦に感じません。ところが、ネガティブな仕事は苦痛以外の何ものでもない。きわめて単純な人間の心理。
実は、ここに働く人改革の本質があります。真の働き方改革とは、いかにネガティブな仕事を減らして、ポジティブな仕事を増やすかです。働く人のモチベーションと主体性を高めつつ、生産性を上げる基本原則。しつこいですが、単に労働時間を減らせばいいというものではありません。
42~43ページより引用
初めての大きな仕事、ずっとやりたかった仕事を任されたとき、夢中になって作業をしていて夜、フロアに一人だけになっていたという経験が昔ありました。おもしろい映画や本に夢中になっていたら、いつのまにか夜が明けていたという感覚に近いのかもしれません。
一方で、意味が見いだせない資料作成やただただ長い会議などは、いつまでたっても時間がたたない気さえします。
人はポジティブな仕事ならいくらやっても苦にならないし、ネガティブな仕事には苦痛を感じる。きわめて単純な人間の心理の中に、働く人改革の本質があると著者はいいます。
真の働き方改革とは、いかにネガティブな仕事を減らし、ポジティブな仕事を増やすかにかかっているといえるでしょう。
今いる職場において、ネガティブな仕事とポジティブな仕事を書き出し、チームで共有。
すなわち働く人改革とは、ネガティブな仕事を減らして、ポジティブな仕事を増やすことです。では、そのために何をすればいいのでしょうか?
「ネガティブな仕事を減らして、ポジティブな仕事を増やす」がうまくいっている職場は、次の四つに積極的に取り組んでいます。
1. 知る
2. つながる
3. やってみる
4. やめてみる52ページより引用
ネガティブな仕事を減らすことは大切なことですが、それだけでは働き方改革はうまくいかないと著者はいいます。
減らすことにより、本来必要なコミュニケーションの時間を削減してしまったり、新しいチャレンジの方向性を削いでしまったり。経費削減などにも共通する考え方ですが、減らすだけの手法では、行き詰まりを生むようです。
さらに、社員同士が「つながる」コミュニティをつくり、それらをおもいきって「やってみる」、時には思い切ってとりあえず「やめてみる」。すべて簡単なことのようですが、膠着した状態だとどれもが滞りがちになります。「減らす」ことも勇気、「増やす」ことも勇気。働き方を変えるということは、働く人である自分自身を変化させる、少しの勇気が必要なのかもしれません。
働く人改革 イヤイヤが減って、職場が輝く! ほんとうの「働き方改革」 (できるビジネス)著者:沢渡あまね
発行:株式会社インプレス
定価:1,500円(税別)