個別指導塾を経営・運営し、1500人の生徒をサポートした、プロ家庭教師の妻鹿潤です。


校長先生というと「全体集会で長い話をするだけの人」というイメージもありますが、実際には学校の良し悪しに大きな影響を与える、重要な役割を担っている存在です。


公務員である公立校の校長先生は、文科省や教育委員会の意向、ルールに従いながら、学校では最高責任者として大きな力を持っています。民間で例えるなら「子会社の社長」に近いイメージかもしれません。


民間の方であれば、「社長や上司でどこまで会社や職場が変わるのか」を想像してもらえれば、校長の影響力は分かりやすいでしょう。


校長先生の交代で……。


実際にどこまで変わるのか、教育関係者の間で有名な実話があります。


ある学校では、職員室の中央にだんらんスペースがあり、お菓子や飲み物が置かれてました。


先生たちは仕事の合間にお茶を飲みお菓子を食べながら、日々の業務で困っていることやちょっと気になる子どものことについて、何気なく話し合っていました。


ところが、校長先生が代替わりすると、効率重視の新校長はこのだんらんスペースを「無駄なもの」として排除してしまいました。すると、先生同士のコミュニケーションが少なくなり、これまでできていた「ちょっとしたこと」の相談や何気ない雑談ができなくなってしまいました。


いわゆる風通しの悪い状態になってしまったのです。特に若い新任の先生にとって、気軽に相談できる相手がいないのは致命的です。ベースの信頼関係がないので、気になることはあるけれど相談できず、これまでは初期に対応できていたいじめや不登校について、大ごとになってからしか対応できない……といった事例が急増しました。


先生同士の綿密で気軽なコミュニケーションは教育の肝といっても過言ではありません。前任の校長先生の思いがこもった「職員室の白いテーブル」を撤去することが、教育の質の低下につながりました。管理職の優劣で職場環境がここまで変わるという好例でしょう。


優秀な校長は、校内を散歩するときも「先生や子供の様子」や「学校内の設備や備品の状態」などをさりげなくチェックしています。散歩しても何も気づかない校長先生、部屋にこもってしまう校長先生と比べると、改善の質が大きく変わることは、想像に難くないでしょう。


人柄も大事です。

校長先生の人格が良ければ、それだけで先生のモチベーションも上がります。それは、引いては子供や保護者に返ってくるのです。


さらに積極的な校長先生は、教育委員会や地域・他校に掛け合い、学校自体の環境を高め、その好例を他校に広めるケースもあります。


競争倍率ガクンと低下?


ところで、私は職業柄、教育委員会や学校の先生と意見を交わす機会が多いですが、「公立学校の校長先生の質が低下している」という心配な話を耳にします。


学校現場では、管理職のなり手不足が問題化しています。国立女性教育会館の調べでは、副校長や校長などの管理職になりたいという先生は、男性で29%だけ。

女性ではたった7%しかいないそうです。


この調査によると、先生が管理職になりたくない理由は、「担任を持って子どもと接していたい」が63.5%でトップ。続いて「自分にはその力量がない」が61.2%、「現在の仕事に満足している」が55.7%、「管理職の仕事に関心がない」が50.6%となっていました。


2020年、神戸市が校長・教頭の昇任試験を廃止して、昇任への意向や面談を中心とした選考に切り替えたというショッキングなニュースがありました。神戸新聞NEXTでは、その背景を次のように報じています。


《昇任試験の競争倍率は年々低下。

教頭では、2008年度に小学校で5.12倍、中学校は8.78倍だったが、2019年度には小学校で1.5倍、中学校は2.04倍まで落ち込んだ。背景には、管理職の多忙化や重責があるとみられ、「手を挙げる人がいない」と市教委。中堅層が少ないことと合わせ「管理職の育成が危機的な状況」という》(2020年9月10日付)


公立学校の教育の質の低下は、そのまま、日本全体の産業の質の低下・幸福度の低下にまで及びます。1日も早く、質の高い公教育が安定して受けられる社会になって欲しいと願います。


長話をするだけの人じゃない? 校長のすごさを思い知らされる「白いテーブル」のエピソード


【筆者プロフィール】】株式会社STORY CAREER取締役 妻鹿潤(めがじゅん)
関西学院大学法学部卒。塾コンサルタント・キャリアコンサルタント・プロ家庭教師などを通してのべ1500人以上の小中高生、保護者へ指導・学習アドバイスを行う。


大手教育会社時代は携わった教室が10か月で100人以上の生徒が入会する塾に。しかし志望校合格がゴールの既存教育に限界を感じ、「社会で生き抜く力」を身につける学習塾を起業。40~50点の大幅な点数アップを実現し、生徒のやる気を引き出すメソッドを確立。入塾待ちの塾となる。
現在はキャリアコンサルタントとして企業の採用支援、大学生・社会人のキャリア支援を行う。ほかにも塾コンサルティング、プロ家庭教師、不登校・発達障害の生徒の個別指導なども行っている。