途上国の「経済発展を担う『人づくり』」に協力することを目的に1993年に始まった「外国人技能実習生制度」。2015年末で約19万2000人の外国人が技能実習生として日本で働いている。


だが、彼らの労働環境が整っていないことは良く知られており、また、改善される見込みも薄い。厚生労働省が8月16日に発表した内容によると、2015年に技能実習生の実習実施機関5173事業場で監督指導を実施したところ、71.4%にあたる3695事業場で労働基準関係法令違反が認められたという。


■無資格でフォークリフトを運転させ、死亡にいたった事業場も



違反事業場数は2014年に2977事業場だったため、718事業場増加した。主な違反内容は、違法な時間外労働など労働時間関係(22.6%)、安全措置が講じられていない機械を使用させていたなど安全基準関係(20.8%)、賃金不払残業など割増賃金の支払関係(15.0%)だった。


また、技能実習生に関する労働基準関係法令違反で労働基準監督機関が送検した件数は46件にのぼり、2014年より20件増加。賃金が最低賃金未満だった事業場や、時間外や休日の労働に対する割増賃金が支払われていなかった事業場が例にあげられている。

また、悪質なものとしては、無資格であるのにフォークリフトの運転業務に従事させ、フォークリフトの転倒ことで実習生が死亡した事業場もあった。


この報道を見た人たちからは、「いい加減この奴隷制度何とかしろよ」「この制度は日本の恥。絶対に廃止すべき」という声が殺到している。



「調査した事業所の7割で違反があるような制度をそのまま続けるべきじゃなかろ」
「外国人技能実習生と言う、安価な労働力としての人材確保は即刻中止したほうがいいよ。へたすりゃ奴隷扱いだもの…」


■国連も実習制度を「人身取引の一形態」と指摘


日本弁護士連合会の資料(pdf)によると、2014年7月に国連の自由権規約委員会が行った第6回日本政府報告書審査で、実習制度が「人身取引の一形態」として取り上げられた。


委員会は、日本政府に対し、事業場えの立入検査の回数を増やしたり、独立した苦情申し立て制度を設置することのほか、



「労働搾取の人身売買事案やその他の労働法違反事案に適切な制裁を課し、処罰することを勧告するとともに、技能実習制度を、能力向上に焦点をあてた新しい制度へ改めること」


を検討すべきとしているという。


しかし、対応は遅れている。法務省と厚労省は2015年3月に「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律案」を共同提出。人権侵害についての罰則規定や、実習生を受け入れる企業の抜き打ち検査をする権限を持つ「外国人技能実習機構」の新設を提言しているが、未だ成立せず継続審議の状態だ。


■労働相談窓口で英語に対応していない都道府県が20県


そもそも、法律を制定する以前に、公的機関があまりにも技能実習生に対応していないという点もある。今回の厚労省の発表によれば、実習生から労働基準監督機関に対して労働基準関係法令違反の是正を求めてなされた申告は89件だ。労基法に違反していた事業場が3000以上あった割には少ない。


背景には、労働相談窓口が外国人対応していない点があげられそうだ。6月20日の共同通信の報道によれば、厚労省が全国に設置している労働局や労働基準監督署の相談コーナーで、英語も整備されていない都道府県が20県にのぼるという。


技能実習生は日本語の教育や講習を受けることになっているものの、それで労働相談まで日本語で出来るかといえば厳しい人が多いだろう。制度の見直しを図るとともに、今できることから一刻も早く対応していく必要がある。


あわせてよみたい:ブラック企業自慢がやばい!